小説『魔法科高校のイレギュラー』
作者:rassan()

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 会長との遭遇



「錬ちゃん、まだ早いけどもう行くの?」

「あぁ母さん。先に学校の施設を見ておこうと思ってね。」

「そう・・じゃあ、いってらっしゃい。」

「うん、いってきます。」

 やぁ、三島錬だ。今は朝食を食べて、着替えをし、家から出て行くところだ。深雪が主席だろうから、あの兄妹を見つけるために早めに出ることにした。

 あまり急いでいないため、普通に徒歩で向かうことにする。この世界に来たことで感動したことのひとつである、キャビネット型の電車に乗り込み、第一魔法科高校の近くの駅まで行き、学校に到着する。

「ふう〜・・・・とりあえずは母さんに言っていたようにひとまずまわるか。」

 地図を頭に思い浮かべるだけで地形の把握はできるが、実際に見てまわったほうがいいので一通り学校の施設の位置を確認する。

 そしてある程度見た後に、あらかじめ学校に入るときに視ていた場所にいる人物のところへ向かう。

 向こうもある程度近づいてきたら気づいたらしく、

「ずいぶん早いな、錬。」

「ああ、学校の地形の把握は早いほうがいいからな。受験のときには余り時間がなかったし。」

 とあまり驚きもせずに、携帯端末に向いていた視線をこちらに向ける達也。

「そうか。まあ、お前の魔法なら・・・・っ!?」

 おや、珍しい。達也がいつになく驚いている顔をしている。いつもなら仏頂面を崩さないポーカーフェイスなのにwww

「錬っ! お前、胸の!」

「あ〜いいたい事はわかる。が・・」

「が?」

 あぁ〜もう落ち着いたか・・・・残念・・・まぁいい。まだ深雪がいる・・・フッフッフッ

「両親の意向と俺の意思で『二科生』になった。俺の場合は担当がいようがいまいが関係ないからな。たぶんここに入った理由はお前と同じだよ。」

「何?・・・・まぁいい。それで、深雪にも言ってないんだろう?」

「ああ、まぁな。」

「はぁ〜〜・・・・」

 何だ? ため息なんてついて・・・

「それより、ここに入った理由が俺と同じって言うのは?」

 まぁ気になるだろうな。

「まぁ単純に魔法大学に貯蔵されている研究資料の閲覧だよ。それも興味本位の。」

「・・・・・そうか。」

「まぁ気にするな。」

 と言われても気にするだろうがな・・・・なんで知っているのかとか・・・・原作知識ですが何か?

 それよりも、さっきから気づいていたがひどいな、視線が。時々「ウィードがなんで・・・・」と言ったことも聞こえてくる。当然無視しているが。

「それよりもさっきから何を見てるんだ?」

「ただの本だよ・・・それより気にならないのか?」

 別に何をとは聞かない。

「ああ、気にならん。そんなことをするやつに限って能力がないからな。他人を穢すやつに自分を律することはできん。」

「それもそうだな。」

 それから達也は読書に勤しみ、俺は何をするでもなく、ベンチの隣に座りながら、学校の地形を思い浮かべ頭の中の地図の修正をしていく。

 しばらくすると、俺の知覚にこちらに向かってくる人物がいる。ていうか、このタイミングでくるってことは・・・

「達也、後どれくらいで時間だ?」

「うん?・・・ああ、30分前だな。そろそろ行かないと。」

「そうか、じゃあ「そこの二人、新入生ですね? 開場の時間ですよ。」」

 はい来ました。原作どおりかわいらしいが少し子悪魔チックにも見える、第一高校の生徒会長こと『七草真由美』さんのご登場である。しかし、達也は彼女を少し見た後、めんどくさそうな雰囲気を出しながら、

「ありがとうございます。すぐに行きます。」

「じゃあ、俺も。それでは。」

 と言って、その場を去り、俺もそれに便乗した。しかし、

「スクリーン型ですか。感心ですね。」

 と返してきたので、俺たちは仕方なくその場にとどまった。まぁ、このやりとりは予想できたので、早々と巻き込まれないように逃げたかったのだが。

「まぁ読書には仮想型には不向きなので。」

「しかも読書ですか。いいですね。私も映像資料よりも書籍資料のほうが好きだから、気が合うわね♪」

 あ〜なんだろう・・・原作での性格を知っているので、狙ったようにかわいくしているのがわかるから、げんなりしてくる・・・・

 達也のほうは少しだけ警戒が緩んでいるようだ・・・ほんの少しだけだが。

「あっ、そういえば、自己紹介がまだでしたね。私は第一高校の生徒会長を勤めています、七草真由美です。ななくさ、と書いて、さえぐさ、と読みます。よろしくね♪」

 また狙ったようにこんなしぐさができるのは育ちのせいなのか、それとももともとの性格なのだろうか・・・考えても仕方ないことだが・・・・・

 そして、『七草』と言う言葉を聞いた達也は、俺にとってははっきりと、周りには気づかれない程度に嫌そうな顔を一瞬した。本人はうまく取り付くっていると思っているだろうが。

 まぁここで『数字付き(ナンバーズ)』、つまり十師族の者と会うとは思っていなかったのだろう・・・・俺は知っていたが。

「俺・・・いえ、自分は司波達也と言います。」

「司波達也君・・・そう、あなたがあの・・・」

「?」

 達也が七草会長のつぶやきに疑問を持っているようだが、なぜ疑問を持つのかが俺には信じられない。なぜなら、

「先生方の間であなたの噂が持ちきりよ。」

「そうですか・・・」

「ええ、入学試験、七教科平均が百点満点中九十六点。特に圧巻だったのが魔法理論と魔法工学。合格者の平均点が七十点に満たないのに、両教科とも小論文を含めて文句なしの満点。前代未聞だったって。」

 ということだ。しかし、達也は苦笑いを浮かべながら、

「しょせんはペーパーテストの結果です。情報システムの中の話ですよ。」

 と皮肉をこめながら、自分の左胸をさした。何も描かれていない空白の円があるだけの『二科生』を証明する部分に。

「それでもそんな高得点、私でも無理よ? これでも理論系でも上位なんだけどね・・・それよりもあなたは?」

 ついに見つかったか・・・逃げ出す機会をうかがっていたが、達也に邪魔され結局質問されてしまった・・・・まぁしょうがない、あきらめるか・・・

「ああ、俺は深島錬です。よろしくお願いします、七草会長。」

 できるだけ人当たりがいいような笑顔にしておく。ちなみに期待していた通り、今世の顔はさわやか系のイケメンなので、これで結構得をしている。例えば、買い物での値引きとか。

「っ///・・・オホン・・・失礼・・・素敵な笑顔ですね。」

 そう例えば、女性に好意的に対応されたりなどである。ちなみにこの笑顔のとき、達也はじと目でこちらを見ている。どうやらからかっているのがわかっているようだ。

「うん? う〜ん?・・・もしかして、『三島』錬と言うのですか?」

「っ!?」

 これには素直に驚いた。普通の人ならば漢数字を用いる名前は思い浮かばない。十師族で有名だからだ。しかし、この人は一発で気づいたようだ。

 そして、達也にも違いがわかったのか、少しだけこちらに警戒心が出ている。司波兄妹にはこのことも話してはいない。まぁ、ただ単に忘れていただけだが。

「ええ、その三島ですよ。」

「ということは、『地神神社(ちしんじんじゃ)』の息子さん?」

「ええ。というか父をご存知で?」

「ええ。あの方は私の父と連絡を取り合う仲なので。」

 あぁ〜そうか、親父に連絡が来る一人に七草家当主がいるのね・・・・そして、神社と聞いて達也の警戒心も消えていた。まぁ、四葉の関係者とか思ってしまったのだろう・・・いや、実際は親父経由で四葉家当主の真夜さんとも会ったことがあるのだが・・・・まぁ知らないほうがいいだろう。

「それより・・・深島錬と言う名前も先生方の間で噂がされていましたよ?」

「はい?」

 俺、何かした? いたって普通だと思うが・・・・ええい、そんな今度は何をしでかしたとかいいたげな顔をするな、達也。俺は本当に知らん。

「あなたのほうは全教科の平均点が七十五点。これだけならば気にすることではないでしょうが・・・・全教科の点数が『すべて七十五点』のため、狙ってやったのではないかと言われています。ちなみに、実技試験のほうはまるで図ったかのように一科生にギリギリ達しないものと判断される結果だったため、そのことが拍車をかけています。」

 そういうことね・・・・まぁ筆記のほうは狙ったが、実技のほうは適当にやった結果でただの偶然である。

「ハハハ、偶然って怖いですね。」

「ええ、本当に。」

 うふふ、あはは、と腹の探りあいになったが、こちとら話にならないくらいの精神鍛錬を積んでいるので、こちらが折れることは絶対にありえない。

 それに、

「そろそろ時間が危なくなると思いますので、失礼します。」

「自分も失礼します。」

 と言って煙に巻く。返事も聞かずに歩き出し、後からついてきた達也の視線も気にしない。気にしないったら気にしない。

 とりあえず、試験ではっちゃけたのはまずかったなと、あまり反省もせずに入学式が行われる講堂に向かった。

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