小説『寝坊しただけでからまないでください。迷惑なんで。』
作者:てた・りる。()

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「…れーいとー…今日は兄ちゃんの作った服着てくれるって約束した日だぞー。起きてくれー!」

「……んー…兄ちゃんおはよう…」

そういって起き上がり、ふと窓をみると…
牛が飛んでった。
いや違う。牛柄の小僧が飛んでっただけだ。
紛らわしいな。まあおかげで完全に目が覚めたわけだけど。

「兄ちゃん、今日はどんな服を着ようか?」

「もう着てほしいのは持ってきてるんだ。
じゃじゃーん!」

「そっそれは…!」

兄ちゃんが背後から取り出したのは、真っ白のワンピースだった。

「今日のイメージは清楚系!夏といえばこれだろって随分前につくってやつなんだ。
結構な古株だぞー。」

意気揚々としゃべる兄ちゃんはとても輝いてました。
てか、いったいどんだけ前から作り続けてるんだろう…

「それと、母さんに買い出し頼まれたから一緒に行こうな。
今日の夕飯は野菜たっぷりラタトゥユだってよ。」

「そっか、それなら大丈夫だね。」

「さっ!早く買い出しいこう!」

「うんそうだね。着替えるからその脱がそうとする手を止めてくれるかな?!」

「えー。」

「ほんと自分で着替えられるから。先一階行ってて!」

「ぶー…わかった。」

そういって兄ちゃんは部屋から出ていった。

あああぶなかった…あれは本気で脱がして写真撮ろうとしてたって!
目がガチだったもん…!
いくら兄ちゃんだからってやっていいことと悪いことがあるっつーのに…

…さすが兄ちゃん。着心地抜群、サイズもぴったりだ…



「兄ちゃんお待たせー…って何してるの?」

「ああ、コサージュを麦わら帽子に付けてるんだ。」

「へえー。その麦わら帽子は…」

「もちろん玲人が被るやつだぞ?今日は暑いからな!」

ですよねー。まあいっか。

「よしできた。玲人ー。こっちおいで、髪の毛セットするから。」

「はーい。」

あれ?兄ちゃんそのかつらも被んの?


「…うん、完璧!
”深窓の令嬢”風、完成!!」

「…そうだね。パッと見女性にしか見えないね。
でもね?兄ちゃん。俺、化粧までするとは思ってなかったよ?」

たったの15分程度でかつらを被り、ナチュラルメイクをし、ツナでも一瞬見間違えるんじゃないかっていうほどの変身を遂げてしまった。

「さ、買い物行こうか玲人!」

「そうだね…」

知り合いに会わないことを祈るしかない…
特にツナには!






なんでこーなった。

兄ちゃんと一緒に買い物をして、ゲーセンに来て、エアホッケーとかで勝負して帰るつもりだったのに…
なんで獄寺と兄ちゃんが勝負してるんだ…


時は少し前にさかのぼる。


「やっ!」

「せいっ!」

「させるか!」

「だが断る!」

ガコンッ!

「あー負けたー…」

「ふー…なんとか兄としての尊厳は守れた…」

「ほんと兄ちゃん強すぎでしょ…」

なんで俺が本気だして勝てねぇんだよ…
おかしいだろ…リボーンにもエアホッケーなら勝てるってことだぞ…

「久々に本気で戦った…玲人、のど乾いてないか?そこの自販機でなんか買ってこようと思うんだが。」

「んー、じゃあミ○ヤサイダーで。」

「OK、そこのベンチ座っててくれ。」

「うんわかった。」

あー…ほんと疲れたー…っとと、今は足開いて座ったら中身が見えるんだった!
あぶねーあぶねー。

「お姉さん綺麗だね。」

「隣いいっすかぁ?」

「あ、はいどうぞ…」

ってこれあれか、ナンパっていうやつか。
俺男なのに女装してるだけでナンパされんのか。
…シャマルもだませるかな。

「ねえねえお姉さん。お名前はー?」

「折川です。」

っがぁー!虫唾が走る!お姉さんだと?こんなぺったんなお姉さんがいてたまるか!
別に巨乳派ではないが、声もこんな低くて、ぺったんな人がいるわけねぇだろ!!

「折川さんかー。今一人?」

「一緒に遊ばない?」

…兄ちゃん。早く帰ってきてくれ。

「いえ良いです。連れがいるので。」

「えー?いいじゃん、俺らと遊ぼうよー。」

駄々っ子か!

「おい、何してんだ?一人の女に寄ってたかって。」

「ああ?誰だお前。」

たすかっ…てない!なんで獄寺がここに…!

「オレがこいつの連れだ。行くぞ。」

「ふえ?!」

ちょっとまてまさか俺だって気が付いてないのか?

「ちょ、獄寺!」

「っち。連れとお熱いですねー。」

「いこーぜ。」

ちょろっ!あいつらちょろい!

「…手荒な真似してすいません。
あんまりボーっとしない方がいいと思いますよ。あなたは綺麗ですから。」

「いや、助けてくれてありがとう…
えっと、ご」

「俺の妹に何の用かな?坊主。」

「ちょ、兄ちゃん!そいつは…」

「ナンパされてたのを助けただけっすけど?」

なんで二人ともそんなケンカ腰なんだー!!
つか兄ちゃん、妹って!完全に誤解してまうやろーー!!!

「ほーう?俺には、お前が妹ナンパしようとしてた風に見えたけどなー。」

「オレはただ助けただけだ。お兄さんの目は節穴っすか?」

「ふーん。いい度胸してるね。じゃあ、実力勝負といこうか。
ちょうどここはゲーセン。勝負にはうってつけだ。」

「…いいでしょう。絶対負けませんから。」



「勝負は三回。勝ちが多い方の勝ちだ。
ゲームは全部妹に決めてもらう。頼んだぞ?」

良いけどと言っておれは兄ちゃんに小声で聞いた。

「兄ちゃん…ただ遊び足りないだけでしょ…」

「それもある。けど、一番大きな理由は…玲人の知り合いがどれくらいの奴なのか知りたくてな。」

俺一言も言ってないよ、兄ちゃん。

「それに、あの小僧完全に誤解してるからさ、ちょっと悪戯したくなった。
反省はしてる。後悔はしてない!
あ、小僧との勝負終わるまでは玲香って呼ぶから。」

「はあ…わかった。
一回目の勝負は、○ップンで。」

「リズムゲームだな。
曲はお前が決めていいぞ。」

「じゃあ、『凛と咲く○の如く』で。」

兄ちゃんにここのゲームで勝とうと思ったら最低でも全部ツナに勝てるようになってなきゃ無理だと思うが、言っても無駄だよなー。

あ、始まった。ちなみに兄ちゃんはハイレベル、獄寺はノーマルだ。
獄寺も経験があるようだけど、兄ちゃんには到底かなわない。

わー、サビに入った。
もはや兄ちゃんのはポップンの嵐といっても過言ではない状態に…
しかもノーミス。獄寺はちょくちょくミスってる上に兄ちゃんにお邪魔だされたりしててんやわんやだ。


――○ップン終了――

「小僧結構弱いな。」

「兄ちゃんちょっとはオブラートに包もうよ…」

てゆうか兄ちゃんのは超人級だと思うよ。

「くっそ…手も足もでねぇ…」

「次は…じゃあ、あれで。」

「格ゲーな。おい小僧、どれならできる?」

「小僧じゃねぇ!…オレは獄寺です。」

「俺に勝てないようじゃ小僧のまんまだな。
まあ引き分けになれたら名前で呼んでやるよ。」

「っち…」

獄寺はきっと格ゲー自体初めてなんじゃないか?
と思ってたら迷いなくフェ○ト系の格ゲーの前に座った。

顔から察するにこれだけはやったことがあるみたいだな。
まあ、兄ちゃんの敵ではないだろうけど。


――数分後――

「ほんと弱いな小僧!はっはっは!」

「悪役クサいし、オブラートに包もうってさっき言ったじゃん兄ちゃん。」

「……」

返事がない。ただの屍のようだ。

いやー、これ以上ないくらいコテンパンにされてたな。
兄ちゃんに一回も攻撃当てられなかったし。

さて、最後は…エアホッケーにすっか。


「兄ちゃん、最後はエアホッケーで。」

「おう!」

「エアホッケーってなんですか?」

「お!?やったことないのか小僧。
エアホッケーってのはそこの台座でプレートを弾きあうゲームだ。
薄い穴があるだろ?そこにプレートがはいったら一点だ。」

「…わかりました。自分の穴は防ぎつつ相手の穴に入れればいいんですね?」

「そういう事だ。理解は早いな。」

「やりましょう。
絶対に負けない…!」

「ふっ…受けてたとう!」

何の茶番だ。
……始まった。さすがに兄ちゃんも少しは手加減してるな。
さっきから「ふははは、まだまだぁ!」とか「負けてたまっか!」とか「甘いあまぁい!」とか…
なんか、こう見てると二人とも小学生っつうか、ガキっつうか…

微笑ましいな。

「!玲香の笑顔ゲットォ!」カシャッ

「もらったぁ!!」

ガコンッ

「「「あ。」」」

「…入った…」

「あちゃー、油断しちまったなー。」

「兄ちゃん、ゲーム中は集中しなよ。」

「ぃよっしゃあ!勝っ」

「ってないから。今5−1で俺の方が明らか優勢だから。
たった一点ではしゃぎすぎだぜ?」

ガコンッ

「六点目ー。」

「油断大敵だぜー?」

「ちっくしょー…!」

そのあとも兄ちゃんが点を入れ、勝負は終わった。
獄寺は「ありがとうございました」といって去って行った。
何がありがとうか分らんが。

「兄ちゃん、楽しかった?」

「ああそうだな。正直一点入れられると思わなかった。
あいつはこれから伸びると思うぞ。」

「兄ちゃんが言うなんて、珍しいね。」

「ははっ。そういえば初めてかもしれないな。
次に戦う時が楽しみだ。」

…『次』があるのか。

「玲人は面白い友達をもったな。」

「…そうかな?」

「そうだよ。」

んー…いつも喧嘩ばっかしてるんだが…
ま、いっか。

「今日のラタトゥユ、楽しみだね。」

「そうだな。洋食だからな!」

「久々に兄ちゃんと遊べて楽しかったよ。
また遊ぼうね、兄ちゃん!」

「くっ…ああ!いつでも遊んでやるとも!!」

「…兄ちゃん?鼻押さえてるけど大丈夫?」

「大丈夫だ問題ない!
早く帰ろう!!」

「?うん。」

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