小説『呪い使いの転生者』
作者:unworld()

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呪い使いは取り戻す

俺が目を開けるとそこには灰色の空間が広がっていた。
無限に灰色が続き、横にも縦にもそれこそ、下にも灰色が広がっている。
そこは見覚えがあり、そこは

俺に殺された場所だ。

記憶ははっきりしている。
そうだ…俺は神羅に殺されたはずだ。
だったら、なんで…
俺はここにいるんだ?
そう思うと目の前に見覚えがある奴が出現する。

その姿は俺だ…

(やぁ、またあったね)
「なんだよ…てか、なんで俺はここにいるんだ?」

軽い調子で俺が俺にあいさつする。
俺は俺に向かって不思議に思っていた事を質問する。
そうだよ。なんで、俺はここにいるんだろう…その答えは俺が教えてくれた。

(なんで?そうだな…それはね…

君がここにくることを望んだからなんだよね

わかる?)
「…俺が望んだ?
馬鹿な事をほざくじゃねぇよ。
なんで、俺がお前に合わなきゃ行けないんだ」
(いやーそんなこと言われてもね…ここにくるには君が望まないと来れない訳だし…)

俺は相変わらず軽い調子でいってくる。まぁ、さっきの質問には答えてくれた。
だが、そのせいで新たな疑問が浮かんだ。

なんで、俺がここにくることを望んだことになっているか…だ。
俺はつい、気になっていたことを聞いた。

「なぁ、お前さ」
(なに?僕?)
「お前何者だよ?」
(えっ?それは君に言ったじゃないか…僕は君だ)
「そんなことは知ってるよ。
俺が聞いているのは…

お前は俺の何なんだって話だ。」
(鋭いねぇ…さあ?なんなんだろうね?)
「とぼけるんじゃねぇよ。
手足か?
頭脳か?
目か?
意識か?
感情か?
何なんだ、答えろ。」
(んーつまんないなぁ…
まぁ、答えてあげるけど…
まぁ、一番近いのは記憶かな?)
「記憶?」
(うん、記憶。だけど普通の記憶じゃないんだな。これが…)
「なんだよ。」

なんで、こいつはこんなにふざけているんだ。
これが昔の俺なのかよ。
そんなはずはないと思いたいな…そんな事を思っていると俺が口を開いた。

(僕は記憶…だけど、ただの記憶じゃない…

僕は君の力の記憶だよ?)
「っ!?」
(力の記憶…知ってるよね)
「俺の過去の力のことか…」
(そう、君が人を殺戮した時のだよ。)
「…」

これは俺の前世での話だ。
そう、それはちょうど17くらいだっただろうか…その時、もちろん俺は学校には行っておらず、独り身体を無心に鍛えていた。
そんな時だ。彼女に出会い力に目覚めたのは…

初めは些細なことだった。
俺が修行をしていた中で初めて人を助けた。その人がたまたま彼女だっただけの話だ。
彼女の名前は矢月…そう、矢月響だ。
彼女曰く俺と彼女の名前は似ていた。最初はそれだけだった。

俺は蓮月
彼女は矢月
俺は薫で
彼女は響だった。
苗字に月が入るのと名前が一文字で表せる。それが似ているのかと今だと思うが…
俺たちが最初にあったのは神社だ。
俺はその時必死に身体を鍛えていたため、ろくにご飯も食べ無かった。その結果山中で倒れ神社に拾われた。
彼女はその神社に務める巫女だった。部外者である俺に話しかけてくる姿はとても新鮮だった。
綺麗な黒髪をなびかせ巫女装束をまとう姿はとても綺麗だった事を覚えている。
俺は当初こんな質問をしたことがあった。

「なあ、あんた」
「私?」
「そうだよ。なんで、俺なんかに話しかけてくるんだよ。」
「なんで?」
「なんで、俺が質問しているのにお前が俺に質問してるんだよ」
「ねぇーお前っていうのやめてよ。
私には矢月響っていう名前があるのよ。」
「んなこと誰も聞いてねぇよ…
んで、なんで話しかけてくるんだよ。俺は部外者だぞ?」
「別に理由なんてないよ。
ただ、私はあなたみたいな人を救いたいだけ…」
「…なにほざいてやがる。この世のすべての俺みたいな人間を救えるわけがねぇ。同情ならしなくていいんだよ」

俺はこの時こいつの考えを否定した。
今となっては何でかはわからない。
ただ…

この時の俺にはこいつが…響がとっても輝いてみえたから…

響は悲しそうな顔をして話始める。

「そう…だね。でも、それでも私は救いたい…救えないものがあるなら近いものから救ってあげたいんだ。」
「だから言ってんだろうが…同情なんて必要ねぇよ。
別に偽善も同情も軽蔑も聞き飽きた」
「それでもっ!」

響はおおきな声を上げて言う。まるで、自分に言い聞かせるように…
それでいて、必死に問いかけるように俺にいった。

「それでも…それでも!私はあなたを救いたい!
どんなに辛くても!どんなに苦しくても…私はあなたみたいな人を見てきたから何人も…何人も!自己満足でもいい!偽善者になっても構わない!
だから、私はあなたを救ってあげたい!私が全部背負ってあげる!」

そういって彼女は手を差し出す。
俺は座っていて手を差し出したのは立ち上がろうという意味なのだろう。

「……そーかよ。勝手にしやがれ…救えるものなら救ってみやがれ。
救うってことは何かを犠牲にするってことだ。分かってんのか?」
「言ったでしょ?私はあなたのすべてを背負ってあげる。
体も心もそれこそ、その傷もそして、大罪も…すべてを背負ってあげる。
私は偽善者でもいいよ。犠牲は私でいいでしょ?だから立とうよ。」

彼女は手を差し出す。
俺はその手を取らずに払いのける。
その行動に彼女はしゅんとする。
だけど、その顔は意外と可愛かったりした。
俺は自分で立ち上がり言った。

「…はぁ…お前は頑固だな。
別に背負なくてもいいのに背負うだ?
ふざけるな。
だけどよ、犠牲なんていらない。
俺がすべてを殺してやる。」
「えっ…」

俺は彼女の頭に手を置いてなでる。
その行動に彼女はすこし顔を赤くするが、振り払おうとはしなかった。

「背負うのは勝手だ。好きにしろ。ただ、犠牲は自分だけでいいとかいうな。俺はそんなのは望まない。
わかったな?」
「うん…」
「あと、それとだな…」

彼女はしゅんとしてすこしうなだれる。
俺はそんな彼女を慰めようと言葉をかけた。今となってはそれが正しいのかはわからないが…

「俺の名前は蓮月薫だ。
覚えておけよ。響」
「…うん!」

彼女の顔は笑顔で晴れ渡りきらきら
と輝いている。
俺はそれをみて苦笑を浮かべるあまりにも美しいから…俺にはさわれないから…

あと、ちなみに

「あーそういやぁ響?
お前何歳だ?」
「16…」
「年下かよ。…ガキンチョめ」
「なんで!?」

これが俺と響の初めて会った時だった。




どうもunworldです!
ついに、この『呪い使いの転生者』が10万アクセスを記録することが出来ました。
これも、読者の皆様のおかげでございます。
誠にありがとうございます。
これからも応援等よろしくお願いいたします。
では〜


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