小説『殺人鬼の兄弟は世界を旅する』
作者:クライシス()

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「これはまた……予想外だ」

「俺も流石にこれは予想できなかったよ、兄さん」

 俺達は驚いた表情で互いに呟いた。

 それは目の前に白い服を着た女の子と黒い服を着た女の子が俺と志貴の布団で寝ていたからだ。

 もちろん俺にそんな趣味は無いし、ヤってもいない。身に覚えも無い。

 ふむ、昨夜の出来事を思い出してみよう。

 俺達は昨日の顔合わせから部屋に戻ると猫達が目を覚ました。白は俺と、黒は志貴と目が合った。そして黒と白の猫が互いを見つめると驚いた雰囲気をして自分の身体とお互いを見比べる。
 そして確か……俺がこう言ったんだっけか?

「今朝、お前達が怪我しているを見つけたから治療した。俺が白と志貴が黒を、な」

 そう言うと猫が首を傾げた。そして俺達は風呂に入り、序でに猫も洗う為に風呂へ入れた。なんだか激しく白猫が抵抗していたが、身体にいくつか犠牲(ひっかき傷)を払って何とか
 洗うことができたが、白猫はなんだか意気消沈していた気がする。湯あたりしてしまったのだろうか? 因みに、志貴も被害にあったらしい。

 そして餌を与え、幾ばくか戯れた後に床に就いた。その時に白猫が俺の布団に潜り込んで来たので一緒に寝たのだ。

 回想終了。

「もしかして、あの黒猫と白猫じゃないか?」

「ああ、すっかり忘れていたが、こいつら妖魔だったな」

「……あ。……俺も忘れてたよ兄さん。つい普通の猫として接してしまっていたよ、ははっ」

 ははっ、じゃないだろうに……。まあ、悪意や害があるわけじゃ無かったのも確かだが。

 そして最初に目覚めたのは黒い服を着た女の子……恐らく黒猫だろう、だった。

「…………」

 黒い服を着た女の子……もうクロでいいや。クロが志貴をジッと見つめている。まるで卵から孵った雛のように。

「おはよう、眠り姫様。ご機嫌は如何かな?」

「…………(コクッ)」

 クロは志貴の言葉に頷いた。多分、大丈夫だと言っているのだろう。っていうか、クロは無口なんだな。

「ふむ、どうやら寡黙なお姫様らしい。君の名前を教えてくれるかい?」

「…………」

 クロは辺りを見回して何かを探していた。そして白い服の女の子、シロを見て指を指した。

 ……こいつに聞けと言う事か?

「ん……んみゅぅ……」

 ところが俺が起こそうとするとシロが目を覚ました。

 そして俺と目が合う。

「…………」

「…………」

 どうやらシロは思考がフリーズしているようだ。俺を見て固まったまま動かない。

 うむ、とりあえず。

「……おはよう?」

 と言っておく。

「え? あ、おは……よう?」

 と答えた。

 ふむ、こちらはどうやら寡黙では無いらしい。意思疎通がやりやすくて安心した。

「で、お前は昨日拾った猫で間違いないか?」

「そ、そうよ」

 ふむ、これでやっと確証が得られた訳だ。本当にシロとクロは昨日の猫だったんだな。

「ではシロ―――「誰がシロよ!?」ふむ、じゃあ名前は?」

「……名前ぐらい覚えときなさいよ。……レンよ」

「ではこちらの黒い服を着たお姫様の名前を教えてくれるかな、レンちゃん?」

 志貴がクロの名前を聞いた。

「……レンよ。私と彼女は同じ存在。あの子の使われない部分が具現化したのが私。私とあの子は二人で一人。だから私もレンであの子もレンよ」

 使われない部分が何かは判らないが……所謂二重人格のようなものだろうか? もしくは善と悪といったものか?

「まさか殺された相手に助けられるとはね……」

 ん? 俺が殺した……? どういうことだ?
 
「俺はお前を殺した覚えはないのだが?」

「ちょ!? 自分が殺した相手ぐらい覚えておきなさいよ! っていうか、私は貴方に殺されたのよ! 忘れたとは言わせないわ!」

 えぇ〜……? 本当に殺した覚えは無いし、面識すら無いのだけど?

「……本当に覚えてないの、志貴(・・)?」

「……ん?」

 こいつ、今俺の事を志貴と呼んだか?

「いや、俺は志貴じゃないぞ?」

「え?」

「志貴はあっち。そして俺は志貴の兄、七夜桜鬼だ」

 俺は黒レンを猫じゃらしで遊んでいる志貴を指さして言った。……って、おい志貴。お前、どこから猫じゃらしを持ってきた?

「え……えぇええーーー!?」

 うるさい叫ぶな。一体何を驚いているんだ?

「ちょ、ちょっとどういうことなの!? ってか、志貴に兄弟なんていたの!?」

 ふむ、どうも話がかみ合っていないというか何というか……。

 もしかして俺達の居た世界の並行世界から来たとか?

「レン、多分お前の知っている志貴は違う世界の志貴だ」

 そして俺はレンに今までの事を説明した。


 た だ い ま 説 明 中 


「まさか本当に神がいるなんて……」

「信じるも信じないのもお前の勝手だが、現実を受け止めた方が良い」

 転生や神のことを説明するとレンは驚愕していた。だが、現に自分が体験しているので信じざるを得ない。っていうか、信じて貰わないと話が進まない。

「……そうね、信じるわ。なら……桜鬼! 契約して私を使い魔にしなさい!」

 ふむ、また話がぶっ飛んでいるな。だがまあ、俺にとっても好都合だ。元々そのために助けたのだからな。

「いいぞ。だが、契約の仕方は知らないのだが?」

「契約と言っても簡単な事だから桜鬼はそのままにしてて」

 そしてレンが座っている俺と向き合う。そして顔がどんどん近づいて…………え?

「んっ」

「んんっ!?」

 俺は唇を奪われた。

 な!? キス……だと!?

「ん……これで契約は完了よ」

 俺の……ファーストキスが…………こんな見た目幼女なレンに奪われるなんて……。

 だ、だが確かに契約は完了したみたいだ。俺とレンが繋がったように感じるのはそのせいだろう。

「ん〜……えいっ!」

 俺がテンパっているとレンが俺に飛びついて来た。

「うおっ!?」

「うふふ……これで貴方は私のご主人様よ、桜鬼。これからよろしくね?」

 そう言ってレンは嬉しそうに頬ずりをしてきた。

 ……倫理的に大丈夫なのだろうか? 今更だけど……。

 志貴を見ると、志貴も黒レンと契約したみたいだ。そしてかなり驚いている。

 ま、そんなこんなでレンを使い魔にしたのだった。




「そう言えばレンって女の子だったんだよな」

「え? そうだけど、どうしたの?」

「いや、初めて会ったときは猫だったからかなり驚いた」

「あー……そうね。確かに猫の姿だったわね」

「だから風呂に入る時、激しく抵抗をしたのか?」

「なっ!?」

「そういえば、レンは今服を着ているが……猫の時ってもしかしてはだk―――「忘れなさい!」うお!?」

「忘れなさい! 今すぐに!」

「ま、待てレン! その氷柱はシャレにならんぞ!? っていうか何処から取り出した!? あ……そんなに言うってことはもしかして?」 

「う、うるさーーい!!」

「うおおおお!?」


「兄さん達は随分賑やかだな」

「…………。(コクリ)」




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