小説『自問自答』
作者:杉浦 真()

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エピソード6




人は必ず死ぬ
それは誰でもわかっていることだが、
死んだ後は誰にもわからない
わかるとすれば、死んだ人だけ
だけど、死んだ人に聞けるはずもないからやはり誰も知らないことになる




小さい頃に私は死んだ後は天国か地獄に行くものだと思っていた
天国に行きたいと想い結構いい子を演じてきたのを今でも覚えているわけだが、
大きくなった今は、結構悪さばかりしている
煙草とか酒とかは飲んでいないし、万引きや殺人だってしていない
だけどいろいろ悪さをしてきた
だから、死んだ後は地獄に行くだろうなと思ったときもあった
でも、実際あるのかといったらわからない




本当はないのかもしれない
死んだら生まれ変われる
そういう話も聞いた
でも、生まれ変われないかもしれない
もしかしたら、「無」の世界に行くのかもしれない
でもそこには自分の意思はなくて、だけど、そこに存在しているかもしれないわけで・・・
考えはどこまでも続いていく




もし、「杉浦真」が死んだら、「杉浦真」を知っている人は悲しむ
でも、知らない人は「杉浦真」死んだことすら気が付かない
そして世界は周り、何事もなかったように日々は過ぎる
そのうちに「杉浦真」の存在を忘れ、次の世代には「杉浦真」の存在は何かの事典や歴史に残らない限り「いない」存在になる




「夏目漱石」や「芥川龍之介」はどんな世代の人でも知っている
理由は有名な著書を残しているから
「注文の多いレストラン」「我輩は猫である」「羅生門」「蜘蛛の糸」
誰でも知っている
誰でも聞いたことがある
誰でも読んだことがある




私は有名になりたいとは思っていない
しかし、「私」という存在が生きていたという証明がほしい
それができなくても、誰かの心に残るような人生を歩みたい
生意気かもしれないが、そう思う











私のこの思いも知らず、世界は今日も回るのだなと、意味不明なことを考えた夜のお話






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