【−1】
ふと、爆発のような音が耳に届いた。
俺は音の正体を探るべく、遠くに焦点を合わせた。
しかし、目に入ってくるのは無限に広がる地平線と、瓦礫の海。最初から分かっていた。ここに爆発する要素なんてないことは。今しがた聞こえた音は幻聴だったのだろうか。いや、確かに聞こえた。狂いはないはずだ。
まあ、そんなことをまじめに考えたところで無駄だ。どうでもいいこと、意味は無い。
俺は傍にあった座れそうな形のコンクリート片に腰掛けた。すわり心地は悪いが、贅沢を言ってもしょうがない。
初夏の香りを含んだ風が頬を撫でる。それはいつかと違う風かもしれない。
それでも俺には心地よく感じられる。つい、うとうととなってしまった。
虚ろな瞳で空を見上げる。
紅い空。
千切れた厚い雲。
太陽は、どこへ行ったしまったのだろう。
二二〇〇年初夏。俺はここに独りだ。
Chapter1「Wake Up」 END