ボディビルジムに着くとさっそく頭の中の声が僕の意識を追いやって体を占拠してくる。
ジムに入っていくと、さまざまなトレーニング器具で肉体を鍛え上げるマッチョマンたちがいる。
そんなマッチョマンの中に、一際筋骨隆々とするゴツイ男に視点が留まる。
あ、いたいた!
頭の中の声はルンルン気分になると、僕の体を操りゴツいマッチョマンに近づいていく。
あのぉ〜、すいません・・・。
頭の中の声がマッチョマンに話しかける。
するとマッチョマンは怪訝な顔で、
はぁ、なにか?
頭の中の声ははにかむように、
あのぅ、実はわたしぃ・・・、あなたのファンなんです。
マッチョマンは驚いた顔で、
え! 僕のファン? キミが?
はい、ずっと前からファンでした、それで、あの、これを・・・
何時の間に出てきたのか手にした手作りチョコをマッチョマンに差し出す。
これ、わたしが作ったチョコです、どうぞ!
え、ぼ、僕に?
はい、どうぞ、食べてください!
頭の中の声はニコリと笑みを浮かべる。
するとマッチョマンは、
そ、そう、あ、ありがとう・・・。
マッチョマンはキョロキョロと四週を見回すと、
こ、ここじゃなんだから、僕の専用控室に行こう・・・。
僕は内心不安になってくる。
マッチョマンには僕が男であることが解るはずだ、にも関わらす僕を控室へ連れて行こうとする、まさか・・・。
僕は思わず頭の中の声に言う。
おい、お前の好きな筋肉野郎って、もしかしたら・・・。
すると頭の中の声が笑いだす。
そうよ、彼、ホモセクシャルよ。
驚いた僕は、
な、なんだって! ちょっと待てよ、俺はホモじゃないぞ!
抗議する僕に頭の中の声がね
なによ、いいじゃないよ、好きなのはわたしなんだから。
それに彼は女のコを受け付けない、だったら男の体に憑依して近づくしかないじゃない。
じょ、冗談じゃない、何言ってんだお前!、人の体を使って勝手なこと抜かすな!
うるさいわね!
頭の中の声は、僕の意識を隅へ追いやっていくとルンルン気分でマッチョマンについてく。