小説『猟奇日記』
作者:ウィンダム()

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僕は仰向けになって倒れていることに気が付く。
なぜ仰向けになっているのか僕には解らない。
空を見れば真っ暗、どうやら真夜中らしい。

ふと、僕は手にした黒い本に気が付く。
するとさっきまでの記憶が蘇ってくる。
僕は思わず半身を起して周囲を見回すが誰もいない。
勿論若い女も・・・。

どうやら夢を見ていたらしい。
さっきの出来事が夢だったことに気が付いた僕は安堵の溜息を吐く。
そして思わず笑いが込み上げる。
 
  フフ、フハハハハ、バカバカしい、ただの夢じゃないか。

僕は手にした黒い本を眺める。
すると突然遠くから誰かが声を上げながら駆けつけてくる。
真夜中のため俄かには解らない僕は、目を凝らして駆けつけてくる者の姿を見ると、
どうやら若い女に先導されるように警察官が駆けつけてくる。

  あそこです、お巡りさん、私に襲い掛かりイタズラした男はあそこです。

僕の方に指さし大声で喚く若い女。
僕は絶句する!

  な、なんだ! さっきのことは夢じゃなかったのか!

驚愕する僕は急いで起き上がると、脱兎のごとくその場から走りだ。

  あ、あの男です!

僕に指さす若い女。

  うむ、待てぇ、待たんかコラァ!

警棒を振れかざして追いかけてくる警官。

  じょ、冗談じゃない! どうなってんだこれは!

必死で逃げる僕に再びあの声が頭の中に響き渡る。

  さっきはどうも、たっぷりと若い女の聖水を味あわせてもらったよ。
 
  な、なんだ、誰だキサマ!

頭の中の声に僕は問い返する

  私か? 先ほどの医学博士Aだ。
  そんなことより、キミはこのまま逃げ延びたいだろう? それとも警察に捕まりたいか?
 
  い、いやだ、そんなの!

  ふむ、そうだろう、逃げ切りたいなら私の言うことに従え、そうしたらキミを無事に逃がしてやろう、どうだ?

走りながら僕は頭の中の声に問う。

  な、なんだそれは? 早く言え!
 
  フフフフ、キミはその黒い本に書かれている記録の全てを読むんだ。

  な、なにを! 嫌だと言ったら!

  クククク、キミは警察に逮捕され性的変質者として社会から断罪される・・・。

  じょ、冗談じゃない!

  そう、これは冗談なんかじゃない、列記とした現実の話だよ、さぁ、どうする?
  私の言うことに従うか、それとも・・・。

頭の中の声に僕は苦渋の選択をする。

  フフフフ、よし、キミを安全確実に逃がしてやろう。

すると周囲の景色が完全に消滅すると、次の瞬間、まったく違う景色が目に入る。
それも昼間の景色だ。

思わず僕は走るのを止めると周囲の景色に見覚えがある。
どうやら昼間の公園らしい。
なにがどうなっているのかまったく理解できない僕は、とりあえずベンチを見つけるとそこで一休みすることにした。

ベンチに座りながら僕は考える。
さっきまでの出来事は現実なのか、それとも夢なのか?
そんなことを考えていると、またしても例の声が頭の中に響く。

  立派な現実だよ、夢なんかじゃない。

  な、なんだ、またお前か! なぜ僕に憑りつくんだ!

  憑りつく、おいおい、何言ってるんだ、私はキミに話しかけているだけだ。
  それよりも約束どおり、その黒い本に書かれている記録を全て読んでもらう。
  いいな?

  うう!

声との約束を思いだした僕は思わず手にした黒い本に目を留める。
すると声が、

  さぁ、次の記録を読みたまえ。

僕は声の言うままにハードカバーを開き、そして目次を開く。
そして、

『第二章:B氏の日記』に目が留まると、僕は恐る恐るページを捲っていく・・・。

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