■『第二章:B氏の日記』
私の名はB、某私大のプロフェッサー。
私の記録を閲覧する貴殿よ、その勇気を褒め称えよう。
それはいつからだろうか・・・。
私は或るモノが大好物だ、私にとってはかけがいのない趣味嗜好品と言える。
それなしでは私は存在しえない。
趣味嗜好品とは言ってもそれは健常者が好む食品や飲料ではない、そして美食とも異なる。
かけがいのない趣味嗜好品、それは・・・。
知りたければこのまま読み進めるがいい。
さて、私はその趣味嗜好品のために専ら鉄道を利用する。
特に終電近くの鉄道、それは私のために最高の環境を提供してくれている。
人の少なくなった終電近くの駅のホームに降り立つ。
そして私は四週を見回し目当ての趣味嗜好品を見つける。
人に気付かれないようゆっくりと歩き、ホームの鉄柱に隠れるようにその場にしゃがみ込む。
私の目に白い陶器製の置物が置いてある。
痰壺だ。
私は素早く周囲を見回し誰も見ていないことを確認すると、スーツのポケットからストローを取り出す。
そして痰壺の中に静かに差し込む。
私はストローを口にくわえて静かに吸い上げる。
チュルチュル、ジュルジュルジュルリ・・・。
私の口中に痰の臭いが広がり鼻に抜けていく、そのなんとも言いようのない臭い。
堪らなくなった私は一騎に吸い上げる。
ズズズズ、ズゾゾゾゾ、ズルンズルンズルリ、ゴクリ・・・。
喉を鳴らして一騎に飲みこんでいく。
食道に流れ込んでいく痰の流動感、口中に残る痰の粘液・・・。
おお、素晴らしい!
この世のあるゆる美食も敵わぬ痰の味わい!
そう・・・、何を隠そう都市伝説『たん壺オジサン』とは私のことだ。
さぁ、私の正体を知ったからには貴殿も痰壺の目くるめく世界へと誘われるのだ・・・。