僕は思わず本を閉じた。
そして嫌な予感がする。
僕は頭の中の声に問いかけてみたが、なぜかその声は消えていた。
まさか・・・。
次第に高まる不安は、やがてこれからやってくる恐怖へと変わっていく。
すると突然体が動かなくなってくる。
ウゥ、またか!
今度は別な男の声が頭の中に響く。
勇気ある貴殿よ、よく私の記録を読んでくれた。
その褒美に貴殿にも痰壺の素晴らしさを堪能させてあげよう。
驚愕する僕は思わず声を荒げる。
じょ、冗談じゃない! そんなこと真っ平御免だ!
頭の中の声は笑いながら僕に告げる。
クククク、そうはいかない、キミは読まなかったのか?
本の最初に書いてあることを。
ようこそ、猟奇の世界へ
その愛と狂気を我らは分かち合う。
そう書かれていたはずだ。
僕は絶句する。
ウゥ!
そして頭の中の声が僕に告げる。
さぁ、駅のホームへ行こう!
そして体が勝手に動き出すと駅に向かって歩いていく。
流石に昼間の駅は人が多い。
すると頭の中の声が、
ううむ・・・、人が多いな、が、たまには衆目の中で味わうのもスリルがあっていい。
それに妙に興奮する、ようし!
僕は頭の中の声に抗議する。
じょ、冗談じゃない! 誰が痰壺の中身なんか啜るものか!
しかもこの昼日中から、死んだってやらないぞ!
すると頭中の声が僕に言う。
なにを、キサマァ! 私に逆らうのか? ようし、それならお前を警察に突き出してやる!
若い女に襲い掛かり尿管で強制排尿させた性犯罪者としてな、ウハハハハ!
ウゥ、な、なんだと! なぜそれを?
クククク、お前のことは前任者から申し送られておるのだ。
ぜ、前任者? Aとかいう変態医者のことか!
然様、だからお前は大人しく痰壺の中身を啜るのだ、解ったか?
解ったら行け! 痰壺を目指のだ!