六
生まれたばかりの羽根つき猫は、よく見ると真っ白ではなく、足の先としっぽの先が黒かった。
母親は真っ白なので、この黒は父親譲りなのだろう。
その子猫(羽根つき)は今、母親にベロンベロン舐められて毛づくろいさせられている。
……が、正直いって、大きさが桁違いすぎるので、舌の上で転がされているような状態だ。
下手したらそのままゴックンされそう……。
そのことは子猫も何となく察しているのか、舌の上で転がされながら恐怖で泣き叫んでいる。そこまでの様子を訳すと、
【ままーっ!】 ← 子猫が母親に近寄り
【くすぐったいよー】 ← ペロリと舐められ、
【くすぐった……ちょっ】 ← 口の中へ
【いやーっ!】 ← 転がされ
【ひゃああああっ!】 ← 空中に飛ばされながら舐められ
【ひいいいいいいっ!】 ← 一瞬口を閉じられ
【ぎゃあああああああっ!】 ← 以降くりかえし
私はその様子に、心を痛めながら見ていることしかできなかった。(ごめん、子猫!私には君を救えない!)
結果
【なんだよ、ねぇちゃん。やんのかこら!】
ぐれました。
ケッ、と小さな身体で私を睨みつけ、しっぽをイライラと地面にぶつけていました。
それを見た私は、
「かわいいーーーーっ!」
【うおっ!】
思わず抱きしめました。
だってよ、小さな身体で精一杯の虚勢を張って睨んでくるんだよ?しかも舌足らずな言葉で!
ちょっとどころじゃなくキュンとしちゃいましたよ!
なんか、一昔前にあった、猫が特攻服を着てる写真があったけど、そんな感じで滅茶苦茶可愛い!!
子猫は私の腕からもがいて逃れようとするが、そう簡単には逃がさない!
【はなせーっ!くそあま!!】
あ、流石にちょっとイラッとした。
だけど、言われた私より、もっと反応した人――いや、母親がいて……。
【そんな言葉づかいをするものじゃありません!】
といって、まだ飛べない子猫をポーンと空中に放り投げ、口の中でキャッチし、また空中に吐き出すという、かなり恐ろしい教育的指導を受けていました。
いや、初期教育は大事だけど、これはむしろ、トラウマを生むんじゃ……。
案の定、地上に下ろされた後の子猫は、可哀想に、ブルブル震えていました。
しかも小声で【ごめんなさいごめんなさいごめんなさい】と繰り返していました。
「こ、これはやりすぎなんじゃ……ん?」
身に覚えのある浮遊感が突然私を襲いました。
気づけば雲がとても近いです。
嫌な予感がして振り返ると、
【喧嘩両成敗】
とても大きなお口をお開けになって待っていました。
鋭い牙が太陽の光を受けてきらめいています。
そして、私の身体は下降を始める。
あぁ、私死ぬのかな……。
本日二度目の悟りです。
〜あとがき〜
きりがいいのでここで切りました。そしたら猫可愛いしか言ってない……。
ちょっと短かったでしょうか。