小説『IS 幻想の王』
作者:沙希()

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第9話 動き出す者達『審判者(オ・クリティス)』




アレから数分が立ち、刹那は元に戻った教室でにとりの腕から
離れ、泣きやんでいる
なんとか箒や簪の件については受け入れたが、一応保留の形で済ませた
本人の同意もなしに、いきなり鍛えるなんて言われたら誰だって困惑するであろう



「ま、保留と思って言ったつもりだったんだけどね。とにかく、一応本人達には同意を聞かないといけない」



「あの・・・もし同意を受け入れなかったらどうするんですか?」



「その時は記憶を消すよ。幻想郷に関連する記憶を消せば、後は普通の女の子として暮らせるだろうし」



「そうだね。あ、刹那、一つだけいいかい?」



「どうした?」



「藍の魔道書についてだけど、調べた結果骸殻能力よりは低いけど、それなりに有効だよ。だから骸殻だけじゃなく、魔道書でも戦闘が可能だ。もちろん、ノエルの魔道書も、だけどね」



「そうか。これで無駄に体力を減らさずに済むよ」



「骸殻能力の対価は、自分の体力と精神汚染だからね。ユエル以外に使える君にとってはきつい筈だ。でも、もうその心配はない。君の魔道書でも倒せるようになったから、頻繁に使わずに済む」



その言葉に、肩の荷が下りたかのような顔をする刹那
刹那がこれまで骸殻能力を使ってきた回数は、数百は超えるだろう
その回数分、どれ程の精神に負担をかけたのか想像もつかない
完全に近い骸殻能力でも、あくまで近いだけであって完全ではないので欠点はある
完全に使いこなしているユエルとは違い、刹那の能力には、まだ不備があるのである



「とりあえず話はこれで終わりだ。で、そろそろ寮に向かおうか」



「はい。あ、にとり。刹那さんの部屋はどこか聞いてませんか?紫さんが成るべく私達の近くに置くなんて言ってましたけど」



「あぁ、それなら問題ない。部屋はこれだ」



そう言ってにとりはポケットから札付きの鍵を取り出し、刹那に渡す
札には『0001』という番号が書かれていた



「玲子と十蔵の部屋の近くで、私達からは数m離れた所だ。これで気兼ねなく、十蔵と玲子に会えるよ」



「サンキュ、にとり。あ、それと相部屋子は誰だ?一応、一般人の場合は警戒しなきゃいけないし」



「紫の話からだけど、ユエルが幻想郷から連れてくる奴になるらしい。ま、誰なのか、私は知らないけどね」



「そっか。そんじゃあ、寮にでも行きますか。まだ飯を食ってねぇし」



「あまり期待したくないですね。幻想郷よりも新鮮な物が置いてあれば良いんですけど」



「そん時は、太陽神様の浄化の力でも使って貰うさ」



「私の力は、そんな事に使う為にありませんよ、にとり!!」



「はいはい。じゃあ、そろそろ行くとしよう」



ノエルはにとりを怒鳴るが、にとりは気にしなさそうに刹那の腕にしがみ付いて、歩きだす
さっきまでの、くらい感じの雰囲気は、どこかに消えて行ったのだった


















ユエルside



ここは幻想郷にある巨大な館、紅魔館の外にである
私は、レミリア、フラン、咲夜、美麗と共に要る筈の無い負の塊を相手にしている



「禁忌『レ―ヴァテイン』!!」



「消えなさい!!神槍『スピア・ザ・グングニル』!!」



「幻符『殺人ドール』!!」



「彩華『虹色太極拳』!!」



「消え去るがいい!!元符『放浪する幻想の次元神』!!」



各自最強の一撃を放つ
しかし、負の塊は健在しており、”たかが1人相手“に手こずっているのである
自画自賛ではないが、私は幻想郷では紫と争い、刹那の元師匠で最強の部類だと自負している
その私を加え、5人で負の塊を相手にしているのだが、まったく歯が立たない
くっ、何なんだコイツは!!



「ちっ!!まったく攻撃が効いてない!!」



「そのようね。私の能力ですら、あの化け物の運命が見えない」



「お譲様。あれは危険です。妹様をお連れして逃げてください」



「咲夜!!私はまだやれるよ!!」



「ですが、フラン様。咲夜さんの言う通り逃げた方が良いです。フラン様の能力すら効かない相手に、ほぼ勝ち目なんてありません」



「美麗、咲夜。アイツを2分足止めする。ここは私がアイツの時を止め、その間に2人を連れて行け」



「な!?ユエル!!アナタまさか、一人で闘うつもり!?」



「そのつもりだ。このままでは、いくら攻撃しようとも力の無駄だ。ここは私がアイツを引き付け、外界に叩きだす!!行け、美麗、咲夜!!」



「っ・・・・分かったわ。お譲様、妹様、失礼します」



「ちょ、離しなさい、咲夜!!主の命令よ!!離しなさい」



「美麗離して!!このままじゃ、ユエルが!!」



後ろで遠ざかる声を私は無視し、負の塊に突撃していく
アイツは4人を追い掛けようとしたが、私は一時的に時を止めて隙を作る
が、相手はものの0.02秒で時の停止から動けるようになった
馬鹿な!?時の神の力でも最低でも数時間は余裕の筈!?







ちっ。だが、それがどうした!!




「動きを止めなくとも、私はお前に勝つ!!はぁあああああああ!!」




私は自身の体を骸殻能力を発動させ、全身に鎧を纏う
黒いに藍のラインが入った鎧を纏い、手には時空剣エターナルソードに私の周りには無数の剣が浮いているのであった




「負の塊よ、貴様に我が力を使わせた事を後悔させてやる!!『デストラクト・コード』!!」




負の塊の周りに、私の剣で囲み、そこに陣を発動させる
陣の下から破滅の光が襲い掛かり負の塊を浄化する
そして私は上空に高く飛び、エターナルソードの形状を槍に変える





神殺しの槍『ロンギニス』




それが、私の最強の武器であり、技でもあり
刹那の神輝・アマノムラクモと同等の武装であるのだから





「穿て!!ロンギニス!!」




―――――ヒュンッ―――――





最大限の神気と、魔力を槍に集中させ投稿する
一直線に落ちて行く槍は、やがて巨大化し、そのまま負の塊を貫く
槍が突き刺さった場所は、周りがほぼ吹き飛んでおり、巨大な穴が開いている
私は槍を引き抜き、形状を戻して穴が開いた地面の時間を元に戻す





「ふぅ・・・・・・流石にきついな・・・・・」




ロンギニスの後遺症が体全体を襲いかかり、私は少し頭を押さえる
フラフラと私は重くなった足を動かし、進もうとする
その時だった・・・・・・




『見事だ。まさか我の同胞の中で駒としては最強の部類に入る同胞を倒すとわ。いやはや、時の神の力は末恐ろしいモノだ』




「誰だ!!」





急に声が空から響き渡り、私は空を睨みながら叫んだ
するとどうだろうか。
私の叫び声に応じたかのように空から6人の、負の塊が降りてきた
人間の形を模しており、過去に闘った負の塊とは比べ物にならないほどの力を感じた
私は直ぐに骸殻能力で変身し、剣を構える




「おやおや、物騒だ。しばしその力は封印させてもらおう」



「!?」



中央に居た、白髪の男が手を翳した途端、私の骸殻能力の鎧が消え去った
私はもう一度発動を試みるが、発動する事はなかった
くそ!封印術か!!




「御名答。今のは封印術の最上級の魔法でね。習得するのにいくらかの無限世界を壊さなければならなかったよ」




「!?・・・・そうか。度々別世界の時が消え去る感覚がするのはそれが原因か。」




「おぉ、推理力があって中々賢いお譲さん。私は好きだよ、そういうの」




「ぬかせ。貴様等に褒めてもらうなど、反吐が出る」




「「・・・・・っ!!」」




「おっと。『Diva(ディーヴァ)』、『Flos(フロース)』。落ちつきなさない。私は別に気にしない」




「「・・・・・・・・」」




白髪の男の横に居た2人の負の塊は武器を構えたが、男が静止したので武器を納め下がった
ディーヴァ・・・・フロース・・・・・なるほどラテン語で歌姫と花か
他の奴らも名前があるのだろう
しかし、負の塊の分際で感情があるなど、これは例外だな・・・・・・



「それは幾千もの魂を喰らってきたのだからな。言語や考え、それに感情が芽生えるのは当たり前の事だ」



「お前は・・・・」



「申し遅れた。俺は『Mors(モルス)』だ」



「死、か・・・・ふ、そもそも生きてすらいないお前らには御似合いだな」



「否定はしない。だが名の意味は、こうだ」



モルスと名乗った長い黒髪をした男は、手を上に翳す
すると男の手の平の上に小さな球体ができ、何かを吸い込んでいく
私は既に分かった・・・・・



「ありとあらゆる物の生命の枯渇!!」



「その通り。その吸い取った生命を糧とし、絶大な力に変えている」



「そして吸い取った一撃はありとあらゆるものを死へと導くのだ」



モルスの隣に居た小柄の女が話に割り込んできた



「私は『Regulus(レグルス)』。絶対の王にして最強の存在だ」



「何言ってんのよ、馬鹿。最強は私達の主よ。勘違いはほどほどにしなさい」



「うっさい、『Jus(ユース)』!!折角決め台詞を言おうとしたのに邪魔するな!!」



「履き違えるなと言ったのよ、ユースは。アナタは『Xeno(ゼノ)』様と比べたら、アナタなんかが勝てるわけがない」



「そうだよ。お前なんかの力じゃ、ゼノ様には及ばないよ」



「フロース!!ディーヴァ!!アンタ達ねぇ!!」




「「わぁ〜、チビ王が怒った〜、逃げろ〜」」




なんとも・・・・・・人間らしいモノだな
私はそう思いながら、白い髪の男、ゼノと呼ばれた男を見る
仮面で顔が分からないが、微笑ましそうにい追いかけっこをしている3人を見ている
まるで我が子を見る様な視線を向けながら・・・・・・・・




「で?貴様等は何の用でこの幻想郷に入った?それにここは、負の塊でさえ知りもしない場所だぞ。どこから入った」





「簡単な事だよ、ユエル。私達は外界の“博霊神社から”次元に穴をあけて入って来たんだからな」




!?
なん、だと?
馬鹿な、有り得ない
あの神社から出入り方法を知っているのは刹那と紫、私にノエル、永琳と幽々子に幽香くらいだけのはず!!
それにアイツは、なぜ私の名前を知っているのだ!?




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まさか!?



「お前は「蒼月 刹那」・・・・・やはりお前は、別次元から来た、刹那なのか」




「その通りだが、少し違うな。私はアイツであり、アイツでないモノだ。私はアイツの・・・・・・・負の塊であり、そしてアイツの心でもあるんだよ」



私はその言葉に、驚きを隠せないでいるのだった


side end




―――――――
あとがき

白い髪をした刹那の心であり負の塊のゼノの意味は『異端』

小さくて生意気な負の塊のレグルスの意味は『小さき王』

ゼノを慕っている大人の女性の負の塊のユースの意味は『法律』です



オリジナルの敵さんを書くのは、難しいですね
ユエルが幻想郷から連れてくるメンバーについては感想にお願いします

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