小説『IS 幻想の王』
作者:沙希()

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第12話 それは途轍もなく茶番だな




遂に始まったクラス代表戦の日である
俺は首の関節を鳴らし、背伸びをする
ノエルや簪はアリーナの観客席で応援するらしく、にとりの方は仕事が入ったと言って学園を離れている
つまりはこの場に居るのは俺だけ要るはずなのだが・・・・・




「なんで箒がここにいるんだ?」




「うぐっ・・・わ、私がいてはダメなのか?」




「いや、別に悪いとは言ってねぇけど、ほら、幼馴染の所にでも行った方が良いんじゃねぇか?」




「・・・・・別にあんな奴の事なんてどうでもいい。それよりも、お前は大丈夫なのか?」




「???何が?」




「何がって、それはお前、専用機があるのかと聞いてるんだ。織斑の方は用意されてると聞いたが、お前のは聞いていないし」




「あぁ、そういう事ね。大丈夫、大丈夫。なくても勝てるから」




「なっ!?相手は代表候補生だぞ!?それに専用機と訓練機では性能の差があるし、千冬さん以外勝てるかどうか分からないくらいだ!」




あ、まぁ、そう思いたくなるわな
でも俺やユエル、ノエルや幻想郷メンバーに掛かれば別にIS無くとも勝てるんだけどね
あと、なんで織斑の名前を出したら不機嫌になったのだろうか?
そんな事を思っていると、織斑先生がやって来た




「蒼月。織斑の専用機が届いたから、最初は織斑とオルコットとの試合をする。勝った者がお前と闘う事になる。異論は無いな?」




「無いですよ」「そうか。なら終わるまで待機していろ」




織斑先生はそう言い残し、去っていく
途中、悲しそうな顔をしたのは気のせいなのであろうか?
まぁ、いいか取り敢えずは
俺はそう思い、映し出されているモニターを箒と一緒に見るのであった



















冬人は白式を纏い、セシリアと対峙している
周りから送られる視線を気にする事も無く、冬とは気を落ちつかせているのであった




「あら、逃げずに来たようですわね」




「僕としては、そっちが逃げずに来たと褒めたいけどね」




「!!!…貴方が泣いて謝るようであれば許そうと思っていましたがその必要はありませんわね」




すると白式からセシリアが武装のセーフティーを解除したという情報が流れてきた。




「後悔しなさい!」




セシリアがスターライトMK?の引き金を引き青色の閃光を
一発放つが冬人はそれを早めに動き回避すると距離を取るように
フィールドを縦横無尽に動き出した。
セシリアは初撃でビビらせようと思っていたのか少し驚いていたが
すぐに照準を合わせ連続で狙い撃ち始めた。




「踊りなさい!わたくしとブルーティアーズが奏でるワルツで!」



「悪いけど踊る気はない」



冬人は撃たれてくる閃光を若干早めに回避しながら時間を稼いでいた。




(まだ白式は第一次形態移行すら終わってないから反応が鈍い。馴らしながら時間を稼いでいこうか、それよりも武装は)




冬人が収納されている武装を確認するべく、画面に出すと
とそこには名称がないひと振りの近接用ブレードが
映し出され、冬人は迷わずそれをコールした。



「遠距離タイプであるわたくしに近距離など愚の骨頂!!」



「(今だ!!!)せいや!」



「な!?」



セシリアが引き金を引こうとした瞬間に冬人はブレードを
彼女に向って投げるとセシリアは驚き体制を崩してブレードをかわした。



「なんて人…いない!」



「目の前の敵に目を奪われ過ぎ」



「な!うしっ」



「遅い!」



「きゃぁぁぁ!」


真夏はセシリアがブレードに気を取られている隙に瞬時加速を使い
ブレードが投げられた方向に先回りしキャッチするとそのままブレードで
ブルーティアーズの装甲を斬りつけた。













「ひえぇ〜確か織斑君はISを動かすのは三回目くらいでしたよね」


真耶は色々と機器を操作しながらも目の前のモニターに
映し出されている戦いの様子を見ながら少し、みっともない声を出していた。



「ああ、試験会場で動かしたのと山田君とのテストと今だな」



「それにしては代表候補生を圧倒していますよ」



目の前のモニターではセシリアは間合いに入られ冬人の得意な近距離の間合いに入っており何度抜け出そうとしてもなかなか離れられなかった。



「まあ、あいつは天才といわれている奴だ。学習能力は常人のそれとは比べ物にならんだろうな」



「やっぱり凄いんですね〜」














「あれだけ威勢がいいのも27分前の事。所詮、井の中の蛙大海、知らずだね」


「くぅ!言わせおけば!ティアーズ!」


セシリアは悔しそうに歯ぎしりをしながら
そう叫ぶと背中に配置されていたビットが稼働しはじめ
冬人をあらゆる角度から射撃し始めた。



(むむ!多角方向攻撃(オールレンジ)か。これじゃあ初見殺しもいいところだ)



しかし、冬人は掠りながらも直撃を避けながら分析を始めていた。



(このビットを使っている間は他動作は不可能、それに偏向射撃(フレキシブル)も出来ないみたいだね)



「さあ、フィナーレですわ!」



セシリアは冬人の最も隙のある個所から射撃を行い
直撃を確信していたが、冬人はブレードを使いレーザーを
反射させると別の位置にいたビットに直撃させ破壊した。



「な!?」



「ぶっつけ本番だけど計算通りだ」



「まぐれですわ!」



「もう一回してみるかい?」



「くっ!」



セシリアは先程の反射で破壊されるのを恐れているのか
ビットの動きを止めた。



(今だ!)



その瞬間、冬人はもう一度イグニッションブーストを使い
セシリアにまっすぐ近づきブレードで斬ろうとするとセシリアが微笑を浮かべた。



「ビットは四基ではありませんわ!」



「まだあったのか!」



セシリアは唯一の実弾兵器であるミサイルを搭載した残りのビットを使い
ミサイルを冬人に直撃させた。














「織斑君!!」


「馬鹿者め。機体に救われたな」

千冬の言葉に、真耶は意図が掴めず再度モニターを見る
するとそこには白い装甲を纏った冬人がいるのだった














「そうかい、ようやく終わったんだね。これで白式は僕専用だ」



爆煙が晴れるとそこにはミサイルを直撃したにも拘らず
ノーダメージの冬人がいた。



「ま、まさか貴方!初期設定で戦っていましたの!?」




「まあね、届いたのがさっきだし。でも、これでようやく力が手に入った」


冬人は白式の装甲を撫でるように触れると微笑を浮かべた。




「これで僕は最強になろう。僕の存在をこの世に刻みつけるために!」



冬人の感情の高ぶりに反応するかのように先程まで普通のブレードだった
ものがいきなりひびが入り砕けたと思うと再構成が始まり一本の白いブレードに変わった。



「雪片弐型、そして」



『単一仕様能力(ワンオフアビリティー)、零落白夜』

画面にその文字が横一列に表示された。



「この能力で!」



「これでも喰らいなさい!」


セシリアは残っているビットを使い一斉に射撃をしていくが
冬人はそれを先程と同じようにブレードで反射させて残りも
破壊すると瞬時加速を使い一気に近づいた。



「なぁ!?」



「これが僕の力だ!」



「きゃぁぁぁぁぁ!」


冬人は零落白夜をセシリアにブレードが接触した瞬間に
発動させごっそりとエネルギーを奪い去り勝負を決めた。


『試合終了。勝者織斑冬人』



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