小説『IS 幻想の王』
作者:沙希()

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第15話 常に数手先は読んでいますよ by 十蔵




戦闘が開始される前の管制塔での会話
刹那がピットからアリーナに現れた後、観客席からの刹那に対する暴言を聞いたユエルと紫が半分キレかけており、殺気がタダ漏れであった




「随分とここの学校の生徒は教育がなっていない様ですね。男が女に勝てない?はっ。笑わせてくれるわね。最近のお子様はISが乗れるから強いという低脳な思考回路をお持ちの様ね」





「だが、紫。試合の後のアイツ等の顔が見ものになるだろう。アイツ等は刹那の圧倒的な強さを見れば何も言えなくなる。それに、アイツ等所詮は口だけの連中だ」





「さっきにとりさんから連絡(念話)が来ましたけど、刹那さんの罵倒を含めてこの試合の動画を取っているそうですよ。夕食後の食堂のテレビをジャックして流すとか」





「それは良い案ね。生徒全員の顔が俯くのと、あの坊やが再度落ち込む様子が目に浮かぶわ。後でキュウリ持って行って褒めに行きたいわ」






「な、なぁ。そこまで刹那が圧倒的なのか?私は正直、あのISでは不安なのだが」






「まぁ、分かるわ。何せ刹那のISは第2世代型ですもの(これも嘘だけど)。でもね、箒。見た目で判断すると、確実に負けよ。ISの性能が勝つんじゃない。勝つのは自分自身の力と、鍛え抜かれた体、そして・・・・・長年の経験よ。だから信じなさい。アナタの想い人は、そこまで弱い男なの?」





「いや、違う!!刹那は、強い男なんだ!刹那は絶対に勝つ!!」





「なら、信じてやれ、箒。刹那は必ず勝つ。相手はタダの餓鬼で、所詮はISの力に溺れた愚か者だ」







4人は会話を盛り上がらせている中、教師陣の2人は内心こう思っていた





(入りづらい会話です・・・・・・)




(クルスニクや魂魄、そして八雲が蒼月をそこまで買っているほどの実力。この試合、どうなってしまうのだろうか・・・・・・・)





『これより、織斑 冬人対蒼月 刹那の試合を開始します』





2人がそんな事を思っていたら、試合開始の合図がなった
なった瞬間、紫は持っていたストップウォッチを起動させる




冬人が開始した瞬間に瞬時加速で刹那との距離を詰める
もう眼と鼻の先まで来ており、零落白夜を起動させ攻撃すれば確実にあたり、大ダメージを受ける
なのだが・・・・・・・・



(馬鹿が。どうして観察もせず相手に突っ込んだ。お前は計算通りなのだろうが、相手はまったく余裕な表情をしているだろうが)





(観察すらする事無く突撃とは、織斑という人は愚の骨頂ですね)




(これは流石に馬鹿な選択をしたわね、あの坊や。賭けは箒の勝ちかしら?)




(残念だ。ま、次があるだろう(多分ないと思うがな))





千冬を含め、幻想郷のメンバーは辛口、いや、流石に呆れ半分と失望半分が組み合わさった様な目で冬人の行動を評価した
自分が最強になると言った割には、所詮はタダの餓鬼であったようだと再確認する
これだったら幻想郷のメンバーの誰もが、カウンターで普通に殴り飛ばすであろうに





そして冬人は大きく零落白夜を展開させた雪片を振りかぶる
しかし当たる事も無く空振りに終わり、刹那は消えていた





「な!?消えた!?」




「そんな!?一体どうやって!?」





(今一瞬、冬人の腰下に何かが通った様な・・・・・)





(刹那、腰下に突っ込んで後ろに回ったな)





(神気や気すら使ってませんね。まさに素のままの身体能力で勝つつもりですね)




(はぁ、さて、後2秒くらいね)





冬人がどこに居るか探していると、またも最高速、言わば光の速さ同然のスピードで刹那は冬人の左脇、そして背後に攻撃する
そして怯んだ所を蹴り上げ、刹那は分裂させた大剣と、手に持っている片手剣にそのまま剣に魔力と神気を流し込む





『超究武神破斬』



『ガァアアアアアアアアアアアアアアア!?』





数十もの斬撃が冬人に襲い掛かり、そのまま地面に叩き落とされる
冬人は立ち上がろうとするが、白式のシールドエネルギーが切れて完全に沈黙し、そのまま倒れた




『勝者。蒼月 刹那』




『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』




観客席の唖然とした様な表情と、ユエルの誇らしげに当たり前の様な表情に、簪の驚きと、尊敬のまなざしが目に入る
そして数秒後、管制塔に居る千冬はハッと我に返り、マイクをセットする





『試合は終了だ。誰か織斑 冬人を保健室に運べ』




と、言い残し、マイクを切った
そして紫達の方を振り向き、紫が何を言いたいのか察したのか、扇子を開き口元を隠す





「言いたい事は分かっているわ。彼が何者なのか、でしょ?答えは教えないわ」





「だろうな。だが、それでも聞かせてくれ」





「ふふふ。それでもダメ。私はあの子と付き合いは結構長い方だと自負してますけど、流石に私の口から話すのは少々行き過ぎる所があるので。なので本人に聞いたらどうでしょう?あの子はこれでも、結構貴方に対しての警戒心は他の人よりは緩いですし」





「・・・・・・・・・・なら、そのうち聞くとしよう」




そう言って千冬は管制室を出て、ピットへと歩いて行く
紫達も刹那を迎える為に、千冬について行くのだった





(私は・・・・・・今まで見捨ててきたアイツの顔を見られるのだろうか?)





千冬は、刹那と対面する場面を想像し、不安を込み上がらせながらゆっくりと歩いて行くのだった














俺は試合が終了したのでピットに戻り、アマノムラクモを解除する
するとピットには織斑先生を含め、幻想郷メンバーと箒が待っていた。
なんか織斑先生の顔が凄く思い詰めた様な顔をしており、俺と視線が合うと直ぐに逸らしてしまった
あちゃ・・・・・流石に超究武神破斬はやりすぎたのだろうか





「お帰り、刹那。きっちりかっちり五秒ジャストだったわ」




「流石刹那さんです。あれが5割以下のスピードとは、恐れ入ります。やはり私も、精進せねば」




「刹那、良くやった。手加減したとはいえ、中々綺麗に技が決まっていた」




「せ、刹那。えっと、その、か、かか、カッコ良かったぞ」




「そりゃどうも。でも、流石にやりすぎだと俺は思ったけどな」




遂あまりに久しぶりに大剣を持ったから大技を掛けたくなってしまい、織斑を実験台にしてしまった
これは流石に反省せねば。
内心後悔していると、箒が俺の近くまで寄って来て何やらモジモジとスカートをギュッとつかみ、顔を赤くさせている




「せ、刹那」




「どうした?顔が赤いが、熱でもあんのか?」





「そ、その、な?さっき、その、紫達と賭けをしたんだ。そ、それで私が賭けに勝ったんだが・・・・・」





何やら知らん間に賭け事をしていた様だ
俺は紫をジト目で睨むと紫は優雅に口笛を吹きながらそっぽを向いた
おのれ、紫め・・・・・・・・
怒りを通り越して呆れた
取り敢えずだな・・・・・・




「箒」




「な、何だ?」




「部屋に来た時に話のついでに何かしてやるから、食後に2組のユエルと一緒に来てくれ」






「わ、わかった(こ、これで刹那からハグ・・・・いや、オデコに・・・・・あぅ・・・・)」






箒は嬉しそうな顔で頷き、なんか更に顔が赤くなる
はて、何を創造したのだろうか?
俺は箒が何を考えているのか疑問に思いながら、自分の部屋に向かうのであった。























ふぅ、あれは流石に驚きだわ
私は内心驚きと呆れの感情でいっぱいであり、1組のクラス代表候補戦のビデオを見ている
初戦のオルコットさんVS織斑先生の弟君の試合では誰もが見ても関心を持てる様な試合であった
両者それなりに全力を尽くして戦っていたし、まさか予想外だったけど代表候補生相手に僅か2回だけしか乗った事の無い織斑君が勝つのは驚きが大きかったが



だが、一番気になるのはやっぱり




「蒼月・・・刹那君」




全てを呑み込む海、大海を表す様なサファイアブルーの瞳に、のびきった黒い髪。
そして何よりも私ですら全身の本能が絶対に勝てないと知らされた男の子だ
経歴は不明。親戚類は河城重工トップ、八雲重工のトップであり、その2つの企業のテストパイロットとして表示されている




パソコンのスクロールを下に行くにつれユエル・ヴァン・クルスニク、ノエル・ヴァ―ミリオン、魂魄 妖夢と言った蒼月君以外は全員女の子のテストパイロットが書かれてある
経歴を調べたが、蒼月君と同じことしか書かれておらず、これは流石に怪しいと思った、いや、確信した




私はパソコンに表示されている画面を切り替え、さっきの試合を見る
織斑君VS蒼月君との試合だ
蒼月君の圧倒的なスピードによる斬撃による攻撃に、ISとは思えないほどの防御力の薄い服に、唯一インパクトがあるとするなら手に握られた大剣




「人間、じゃないわね」




見た目からするに、僅か2〜3メートル剣を軽々と持っている時点でおかしい
普通なら両手またわISを展開させたときくらいしか持てない筈なのに、蒼月君は簡単に持ちあげている
これは・・・・・・・・・とっても面白いはね




私は画面に映る蒼月君に興味がそそられた
今日、部屋にでも入ってゆっくりお話でもしようかしら?





――――――――お姉ちゃん、電話だよ?あんまり遅いと、私嫌いになっちゃうよ?―――――――――――



等と思っていると、携帯電話の着信メロディー(簪ちゃんボイス)が鳴り響き、私は直ぐに携帯を取る



・・・・・



・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・な、何見てるよ。べ、別に良いじゃない、着メロくらい。
人の趣味嗜好をとやかく言われたくないわ!!
な、何よその眼は?まるで呆れかえった様で死んだ魚の眼は




・・・・・まぁいいでしょう
取り敢えず私は携帯を開き、送られてきたメールを開く
そこには、珍しい人物からのメールであった





――――――――――――――――――
○月×日 17時30分
轡木 十蔵

件名・ペナルティーだからね?

本文
あまり蒼月 刹那との接触はしない様にね?
もし本人の許可なく部屋に忍び込んだりしたら、ペナルティーで生徒会権限をはく奪します


  追伸
それと、その着メロは簪君には聞かせない方が良いと思うよ?



―――――――――――――――――――――――――――――


と、書かれていた
・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?あの人エスパーですか?それとも宇宙からの電波でも受信してるんですか?


学園長の夫である十蔵さんからのメールには、私がしようとしていた事をあっさり見破っていた
防音式の壁に、発信器や盗聴器すら設置されていないこの生徒会室にいる私の行動を何故読めたのだろうか?



*十蔵の能力は『数手先の未来を見る程度の能力』なので楯無の行動はほぼ筒抜けです。(プライベート以外は)




私は、この学園で一番恐ろしいのは織斑先生だけだと思っていたが、どうやらもう一人いたらしい



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