小説『ハイスクールD×B〜サイヤと悪魔の体現者〜』
作者:生まれ変わった人()

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 ベジータ公認の旅が決定してから二日経ち、遂に旅立ちの日を迎えた。

 カプセルコーポレーションのロケット打ち上げ台に宇宙船が設置され、宇宙船の前には悟空一家、ベジータ一家がいた。

 そんな光景にもカリフはいつものように仏頂面で見送りに来た人達を指差して……

「何故こいつ等がこんなとこに来ているのだ?」

 不機嫌そうにベジータに聞くも、ベジータまでもが不機嫌そうに腕を組んで応える。

「知るか」

 となれば、こいつ等を呼んだのは母上と我が愚弟のトランクスか……余計なマネを……

 そう思いながら鋭い目で二人を睨めつけると、トランクスはブルマの足元に逃げ、ブルマは華麗に無視してほくそ笑む。……納得いかねえ……

「ねえねえ……」
「?」

 もう諦めて頭を抱えていた時、我が二人目の愚弟の悟天がオレの足を引っ張ってきた。その顔はあと一歩で泣き崩れる寸前だ。

 それと同時にトランクスも悟天と一緒にオレを見上げてきた。

 こ奴等も最後の最後まで……

「なんだ?」
「……カリフはいつ帰ってくるの?」
「なに?」

 トランクスの一言に呆気にとられる。

 帰る? オレが? なんのために?

 そう思っていると、悟天までもが聞いてきた。

「次に帰ってきてもっともっと強くなったらボクたちとまた試合しようよ……」

 やかましいガキにしては珍しく暗く塞ぎこみやがって……調子を狂わせてくれる……

「そんな約束など知らん」
「「え?」」

 期待していた言葉とは反対に、聞きたくなかった無機質な言葉だけが帰ってきた。

「このまま帰ってくることはないかもしれんからその約束はしない」
「そ、そんな……」

 地球にはなんの未練も感慨もないからもしかしたらもう二度と地球に寄ることはないだろう。

 思ったことを言ったらトランクスと悟天が涙を溜めてオレを見てきた。

 そんなオレに見かねた母親がオレに言ってきた。

「本当はアンタを旅に出すのは私は反対……けど、アンタは家で一番ベジータに似ているから引きとめはしない……だけどね……」

 ブルマはもう諦めたかのように言うが、後でベジータを横目で睨む。睨まれたベジータは知らん顔でそっぽを向く。

 ここ毎晩、ベジータとブルマの口喧嘩が激しかったことと明らかに関係あるのだが、そんなことどうでもよかった。

 気を取り直してブルマはカリフに向き直って、まごうこと無き母親の顔で命令する。

「時々、疲れたら帰って来なさい……その時はウンとご馳走してあげるから」

 ……不覚にもその言葉にオレは少しだけ胸が軽くなった気がした。

 このオレがガラにも無い……これ以上いると複雑になってくる……

「もう行く」

 場の雰囲気に耐えきれなくなって宇宙船に乗り込む。

 そんな中でオレに声をかけてくるギャラリー

「じゃあな!! 修業頑張れよ!!」
「また悟天とあそんでやってけろ!」
「帰ったら試合してあげるから帰って来い」
「次に会ったらカリ兄ちゃんより強くなってやるんだ!!」

 悟空、チチ、悟飯、悟天のがカリフに暖かい言葉を送る。

「だったらオレ悟天よりも強くなって先に倒してやる!!」
「元気でやんなさいよ」
「次に会ったらミッチリと鍛えてやる。ありがたく思え」

 トランクス、ブルマ、ベジータからの激励。

 中には聞き捨てならない言葉も混ざってはいるが、あまり気にしないで乗り込む。

 荷物を中に放り投げてカリフは宇宙船から顔だけ出して一言言ってやる。

「なんだ? しおらしく別れの挨拶とは女々しい奴だ」
「黙れ」

 ベジータの嫌味にカリフも思わず言い返し、気を取り直す。

「余計なことを言う気はないけど、これだけは言わせてもらう」

 その顔には自信に満ち溢れていた。

「次に会った時は……オレがNo.1だ。だから精々足元をすくわれんように精進するがいい」

 そう言うとすぐに宇宙船のハッチを閉じ、宇宙船を起動させる。

 辿る道は最強への道、苛烈を極める獣道

 だけど、彼は歩みを止めない。

 その道こそ彼の信じる道であり、憧れ続けていた道。

 皆の声援を受けたカプセルコーポレーションのロゴ入り宇宙船はゆっくりと、着実に天へと登り……











 光となって












 消えていった……

















「行ったか……」

 ベジータはいつもの仏頂面で天を仰ぎ、宇宙船を見届ける。

「あんたが追い出したのに、なに感傷に浸ってるのよ」
「感傷? くだらん。これで生意気なガキが当分消えてくれると思って清々していたところだ」
「ふ〜ん……」

 ブルマは平然と辛辣なことを言うベジータを細目で睨み……

「じゃあなんで笑ってるのかしら? 口が上がってるわよ」
「なっ!!」

 ブルマの一言で顔に手を当てて顔を隠そうとするるベジータ。

 そんなベジータを一瞥して一言。

「ウソよ」

 その一言にベジータはハッとし、顔を赤くさせて震えながら拳を握る。

「こ……のぉ……夫をからかうんじゃない!!」
「じゃあ行くわよ。トランクス」
「うん!」
「おい! 無視するな!!」

 トランクスと手を繋いでベジータを無視するブルマに怒声を上げて追いかけるベジータ

 その後ろ姿を見ていた悟空だけが分かっていた。

 カリフはどちらかと言えばベジータに似た。

 だからこそ、ベジータは本人の意志を尊重し、涙を呑んで愛息子を送ったのだ。

 同じサイヤ人だからこそ分かるベジータなりの愛情を悟空だけが見抜いていた。

 誇り高い王が魅せる密やかな優しさがそこにはあった。

「やっぱオメエはすげえよ……ベジータ」

 悟空はだれにも聞こえない程の声で静かに呟いた。

「悟空さ! 早く帰るべー!」
「おぉ! 今行く!」

 チチに促された悟空は家族の元に走り寄る前にもう一度だけベジータをチラっと見て、そして笑った。

 悟空の視線の中に写ったのは……

 誰にも気付かれないように天を仰いで優しい笑顔を浮かべる……



 ベジータの姿だった……

「本当に……生意気なガキになりやがって……」

 ベジータの声は



 優しくそよぐ風に乗って






 空へと






 溶けていった。



















































































































































 時が経った青い惑星……地球。


 地球はいたって平和であり、人々の笑い声で溢れていた。


 そんな地球のとある山で、一人の人影が崩れた小屋の前で呆然と膝を着いていた。背丈から見て少年と思えた。

「……」

 その人物の瞳には生気は無く、永久の闇のごとく黒に染まっていた。

 その人物の手にはいくつもの風化した写真が握られていた。

 写真に写っているのは穏やかに笑う老婆と二人の息子と思わしき青年が二人、そして小さく、バンダナを付けた女の子と女の子と良く似ている母親と思わしき女性が……

 その他に老婆と楽しそうに肩を組むもう一人の老婆と、その老婆の肩に手を添える人のよさそうな紫の髪の好青年が写っていた。

 ここまでなら普通の集合写真である。

「……」

 だが、その中の二人の人物の存在に写真を見た少年は衝撃を与えていた。

「……」

 その存在は写真の中央に隣り合わせで座っていた。

 一方は仏頂面でそっぽを向く男と、もう一方はそんな隣り合う男を見て太陽のような能天気な笑顔を浮かべる男性が……

「……」

 見間違うことのない……







 変わらぬ姿で写真に写る








 偉大なる師である悟空と……







 偉大なる父であるベジータが写真の中にいたのだから……


「……」


 少年の瞳は黒に染まっていた。

 深い、深い、光の届かない黒に染まっていた……



「……」

 少年……カリフは絶望に打ちひしがれた。

「……」

 かつてのパオズ山の……悟空の家の跡の前でただひざまづくしかできないほどに……





























































 家族と友人達との約束通り、カリフは帰ってきた。











 200年の時を経て







 彼の知る人もいない地球へ









 帰ってきたのだった……

-3-
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