小説『ハイスクールD×B〜サイヤと悪魔の体現者〜』
作者:生まれ変わった人()

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炎に包まれる教会

その近くではカリフの提案でイッセーとレイナーレが対峙している。

「喰らいなさい!」
「くっ!」

レイナーレの光の槍をイッセーは咄嗟に避ける。

「ほらほらぁ! ちょこまかと避けるだけでどうしたの!? かかってこないと勝負にならないわよ!?」
「くそ! 数が多すぎる!」

レイナーレは光の槍を大量にイッセーに投合し、イッセーはそれを避けていく。

イッセーはそれらを避けることしかできず、ただ逃げ回っているだけだった。

「さっさと死になさいよぉ!」
「ふざけんな誰が……!」
「お願い……そんなこと言わないで?」
「!?」

突如、レイナーレはイッセーの付き合っていた姿……天野夕麻の声色でイッセーの動揺を誘う。

目論見通り、イッセーの動きが一瞬止まったのが悪かった。

両足の腿を光の槍で貫かれた。

「ぐあああああああぁぁぁぁぁぁ!!」

刺されたことはもちろん、悪魔にとって毒にあたる光の力を受けたのだから。

肉が焼ける音と痛みがイッセーの動きを止め、レイナーレを調子づかせる。

「あっはっはっは! どう!? その光は痛いでしょう!? あなたのような下級悪魔では耐えられないわよ!!」
「ぐううぅぅぅぅ!」

イッセーはその場に膝を付いた。

『Dragon booster!』

その時、籠手の宝玉になにかの紋様が浮かんだのをレイナーレは気付かなかった。












それを見物していたリアスたちは内心でハラハラしながら見守っていた。

「……イッセーくん不味いですね」
「ええ、まだ悪魔になりたての彼には荷が重すぎたのでは……」
「……このままだと死にますね」
「そんな! イッセーさん!」

木場、朱乃、小猫は不安を抱きながら各々の感想を口にすると、アーシアが絶望する。

しかし、そんな中でもカリフだけは違った。

「いや、あの馬鹿堕天使はイッセーを舐めきって隙だらけだ……上手くいけば寝首をかけるな」

たしかにそれもそうだ。しかし、それはあまりに可能性が低い。

三人が何故こんなにカリフが自信満々に言えるのか分からなかった。

「それで? それはあなたの推測からの答えなのかしら?……話を聞かせてもらうわ……あの子の力にいつ、どうして勘づいたの?」

リアスがカリフに問い詰めると、カリフは抵抗することも無く話した。

まるで、手品のタネを明かすように

「最初におかしいと思ったのはこいつが殺されたのを朱乃たちから聞いたときだな」
「それって、最初からってこと?」
「あぁ、イッセーはてんで戦いを知らないド素人だってな」
「それだからイッセーくんは殺されたんだよ。それが?」

木場が聞いてくると、カリフがそこで指を一本立てる。

「そこからおかしいだろうが。問題は殺されたことじゃなくて殺され方だ」
「……どういうこと?」

小猫が首を傾げる。

「イッセーが本当に一般人並の力なら誰か神父とか適当な奴に任せればいい……だけど堕天使自らがわざわざ直接殺しに来た」
「つまり、確実に殺しに来たことに疑問を持ったんですの?」
「あぁ、それに殺すだけならデートなんてまどろっこしいことせずにその場で殺せばすぐ済むし、楽だ……だけど奴はあえて面倒にも遠回りするような真似をした。周りの記憶なんてどうにでもなるはずなのに……」

朱乃に相づちを打ちながら答えていく。

「それはイッセーの神器の観察もそうだが、イッセーの性格とかを兼ねて観察してたか、それをするための時間稼ぎだったんだろうよ。神器を宿してるとはいえ、一般人相手にそこまで警戒するのもおかしな話だ……多分、上がイッセーのスペックの低さを補うだけ危険な神器だと判断したんだと思うぜ?」

確かに……そこまで言えば確かに……そう思っていると、今度はアーシアを見た。

「その点ではこいつも同じだ。こいつには何か特殊な力が眠ってると思った」
「特殊な力って……これですか?」

アーシアが聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)を発動させると、カリフはマジマジとその指輪を見た。

「これは生物の傷を治す物なんです……天使も悪魔も治せます」
「悪魔も……すごい能力ね」

リアスが感嘆していると、カリフがさっきのレイナーレの話を思い出していた。

「そうか……それでこの神器を抜き出そうと……」
「でもカリフくん、この子の力についてはどこで予想してたんだい?」

木場が聞いてくると、カリフが答えた。

「最初に奇妙に思ったのはあの時のイカレ神父と対抗してた時だ……正確にはイッセーの盾となろうとしたあたりだな」
「え? それも最初のころだけど……」
「そう、問題はアーシアがあそこで『殺されなかったこと』が既におかしかったんだよ」

そう言ってカリフは再びイッセーの方へと向く。

「あの神父は悪魔と関わるもの全てを殺すことに快感を感じていた。それならあそこで激昂してアーシアをすぐに殺さなかった点も奇妙になる」
「あらあら、そうなんですの?」
「敵を庇う味方など殺した方が効率がいいからだ。下手に生かして裏切られたり邪魔されたりするより百倍もマシだからな……だが、殺さずにこちらへ再び引き込むように促していた。あの快楽殺人者がな……」
「なるほど……」

たしかにそこもおかしい……そう思っていると、カリフが二つ目の指を立てた。

「ああ言った奴でも上司の命令通りに動かなければ飯も食えないと理性で我慢した……そこで問題、その上司はなぜアーシアの殺害を良しとはしなかったか……
?高名な血統だから
?都合のいい力を持ち、死なれると困るから
と思った訳よ」
「そして、的中したと?」
「あぁ、?はすぐに拒否させてもらったよ。あの神父は上司の命令を守ってたんだ……そんな奴が上司が“殺すな”と言わしめるほどの血統ならば乱暴や暴言など論外……下手に刺激して上から罰せられるのは腑に落ちないからな。だからこそ?は拒否して?に目処を立てたんだ。イヤ〜、オレの勘も捨てたもんじゃないな」

自画自賛するカリフにリアスが再び問う。

「それなら何故イッセーに戦わせるの? それに私たちの仲間じゃないと言いながらイッセーに覚悟を説いたっていうじゃない?」

カリフは途端に不敵な笑みを浮かべて言う。

「奴はつい最近まで戦いとは無縁だった……だからこそ神器もろくに発動できなかったんだよ」
「……真に強い力を想像できなかったってこと?」
「そう、そして何より覚悟という精神の爆発によって奴の内に眠るポテンシャルを目覚めさせることが今回の目的だ……そして……」

ここでカリフはイッセーの当初よりも膨れ上がった気を感じて確信した。

「遂に目覚めの時かもな」














「へぇ、まだ消えないんだ。以外に頑丈なのね」
「こんなもの! アーシアが受けた痛みと比べたらなんだってんだよ!!」

イッセーは蝕まれる体に鞭打って叫ぶ。

「……初めての彼女だったんだ!」
「えぇ、見ていてとても初々しかったわ。女を知らない男の子はからかいがいがあったわ」
「大事にしようと思った!」
「大事にしてくれたわね。私が困ったことになったら即座にフォローしてくれた。私を傷つけないように。でも、あれ全部演技だからね? だって慌てふためくあなたの顔が可笑しいんですもの」
「初デート、念入りにプランを考えたよ……絶対にいいデートにしようって……」
「アハハハハハ! そうね! とても王道なデートで退屈だったわ!」
「……夕麻ちゃん」
「あなたを夕暮れに殺そうと思っていたからその名前にしたの。素敵でしょ?」

……俺はここまで外道な奴を知らない……初恋の相手がこんな奴だったなんて……

「レイナーレェェェェェェェェェェェェェェ!!」

俺は怒りのままに光の槍を無理矢理引き抜いて立ち上がる。

この時、俺の頭の中に部長の声がよぎった。

―――あなたが悪魔でも想いの力は消えない。その力が強ければ強いほど神器は応えるわ

『Explosion!!』

その機械的な声が俺に力をくれた。

宝玉が一層照り輝き、すさまじい光を発する。

それになんだろう……アーシアの光のような安らぎも感じる……

公園であいつと対峙した時の恐怖も消えてる……これもお前の力なのか?……神器

「うそ……なんで立てるの?……それにこの魔力の波……なんで私の力を越えて……上級悪魔並になってるの!? あれはただの龍の手(トウワイス・クリティカル)でしょ!?」

何だかレイナーレが怯えてるようだが関係ねえ! 体に流れるこの力が理解できる!

この力は永続じゃねえ、一発で霧散する!

それならこの一発、大いにぶん殴って終わらせてやる!

「!? いや、来るな!」

光の槍を投げてくるが、さっきまでの脅威を全く感じない……俺はそれを片手でなんなく弾き返した。

弾いた槍はそのまま消え、レイナーレも一層に顔を青くする。

「いや!」

そして、少しでも勝てないと分かると翼を生やして逃げようとする。

さっきまで俺を嘲笑ってたじゃねーか! 良い御身分だな!

俺は追いかけてレイナーレを捕まえようとした時だった。

「うあ!」

突然、レイナーレの翼が全て斬られ羽が散っていく。

そして、そこには手刀を出した後の態勢のカリフが俺に言った。

「やれ! そいつは個人的に気に食わねえ! お前が殴ったらオレにも殴らせろ!!」

あぁ! 言われなくてもやってやるさ!

カリフが翼を斬ったのだろう、落ちてくるレイナーレに腰を低く構えて……

「吹っ飛べクソ天使!」
「おのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 下級悪魔がぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「うおりゃああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

籠手の力全てを解放して拳に乗せる。

そして、憎むべき相手の顔面へ鋭く、正確に打ち込んだ。

「ぐああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

断末魔を上げてレイナーレは森の中へと吹っ飛ばされていった。

当たりも完璧だった……ざまーみろ。

「はぁ……はぁ……一矢報いてやったぞ……」

気持ちのいい一発を思い出し、俺はその場で大の字になって倒れた。














「イッセーさん……大丈夫ですか?」
「平気だよ。アーシアのおかげで元気になったから」
「そうですか……」

アーシアも無事守ることができた……あのクソ堕天使もぶっ飛ばしてやった!

俺はアーシアに傷を治してもらって立ち上がると、そこへ部長が近付いてきた。

「やったわねイッセー」
「ははは……はい、部長」

苦笑しながら部長に返す。

すると、そこへ小猫ちゃんがやってきた。

「部長、持ってきました」

小猫ちゃんは気を失っているレイナーレを持ってきたのを確認すると、すぐに朱乃さんに命令した。

「ありがとう小猫。さて、早速起きてもらいましょうか。朱乃」
「はい」

そう言って朱乃さんが手をかざすと宙に水が生まれてくる。

それをそのままレイナーレの顔へ被せる。

「ゴホッゴホッ!」

咳き込みながら起き上がる堕天使はすぐに周りの状況に表情を青くする。

「ごきげんよう。私の下僕に負けた堕天使さん」

部長がにこやかに言うと、すぐに面白そうなのか話したくて堪らないのか話を続ける。

「今度こそ冥土の土産に教えてあげるわ……イッセーがあなたに勝てた最大の理由を。イッセー」
「は、はい」
「その神器を見せて」
「? 分かりました」

何でだか分からないが言われた通りにすると、部長は俺の神器をレイナーレに見せつける。

「これはただの神器じゃない……これは神器の中でもレア中のレア籠手に浮かぶ赤い龍が何よりの証拠」

そこまで言うとレイナーレは怪訝そうに眉を吊り上げる。

「赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)、13種の神滅具(ロンギヌス)の一つよ」

ここでレイナーレは驚愕する。

「ブ、ブーステッド・ギア……魔王や神すら越える力を得られるという……あの忌まわしき神器がこんな子供に……!」
「いい伝え通りなら人間界の時間で十秒ごとに力を倍にする能力。最初が一でも十秒ごとに力が倍になっていけばいずれは上級悪魔や堕天使幹部クラス、極めれば神すらも屠れるわ」

マジですか!? そんな力が俺の神器に!?

でも、思い返せば思い当たる節もあったな……よくブーストって鳴ったと思ったら体が軽くなったりとか……

俺が思い返していると、レイナーレは自棄になったのか、急に走りだした。

逃亡か!?……と思っていたらレイナーレの逃げる先を見て一気に身構えた皆は構えを解いた。

何故かって?

だってさ……

「どけえええぇぇぇぇぇぇぇぇ人間がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

この時になってまだあいつの実力が分からないのかな……いや、それが分からないほどテンパっているとか……なんにしても終わったな。







レイナーレがカリフに光の槍を持って特攻していた時だった。

「……五連……」

カリフの右腕の袖が急に破れて異常なまでに膨張した筋肉が露出した。

……とても碌なことが起こらねえと思い、やはりそこらへんの期待は裏切らなかった。

「釘パンチ!!」

レイナーレの頬に極太のパンチがめり込んで吹っ飛ばされる。

一発で顔の原型が壊れかけている時、さらなる衝撃がレイナーレの顔面を貫通した。

―――バキ! バキ! バキ! バキ!

「ぐべらあっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁ!!」

何も無い空中でレイナーレの顔がさらに見えない力で弾かれてより一層に顔面が血で濡れて瓦解していく。

放り出された人形のように転がりながら再び同じ場所へと戻って来たのだが……

「ぐああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

握り拳の跡まで残った顔は最初の面影も見せず、本当に酷く歪に変形していた。

アーシアもこれにはビビりまくって俺の背中にしがみついてきた。

「よかったなぁ、これで顔も心も一体となったぜ……そのうすぎたねえ『嘘』にまみれた心にようによぉ……」

相当苛立っているのか青筋を立てていた。

「よくも……よくもこんな……」
「そうだ、『目には目を』って言葉は聞いたことがある。だが、俺は嘘を嘘でかえすことはしねえ……だからこそ今回は『外道には外道を』というわけだ」
「ひ、酷い……」
「いーや慈悲深いぜ。こうして殺されずに済んでいるんだからよォ……」

見下ろして痛みに悶えるレイナーレをカリフは嘲笑う。

「ま、今回は目に見えていた結果だった……お前の負けに賭けてたからな」
「嘘よそんな! 私がこんな下級悪魔に負けるなんて……ひっ!」

すると、カリフは再び拳を握って威嚇すると、レイナーレは酷く怯えて丸くなる。

「てめえの心は薄汚い『偽り』と『嘘』で形成されてるのに対し、イッセーの心は『素直』と『正直』でできてる」
「そ、それがどういう……」
「分からないか? いつだって偽りや嘘から生まれた結果はすぐに滅び、真実から生まれた結果は生き続け、滅びはしない……つまりそういうことさ」

そう言うと、カリフは拳を引かせた。

「お前のくだらない偽りのデートから全てが始まった……こいつの力を舐めきり、そこのシスターをさらってイッセーの覚悟を決定づけさせ、お前と戦うことでイッセーは真の力に目覚めた!」
「!?」
「お前は『偽り』で塗り固められた結果に導かれたのだ……あらゆる『嘘』が集まった結果だからこそ今の状況がある!」
「そ、そんなばかなことが……!!」
「つまり、お前はお前の首を自分で締めつけて破滅に向かってただけなんだよ!」

未だに認めようとしないレイナーレに叫ぶ。

「そして、お前のおかげでイッセーはここに来て初めて本当の意味での転生を迎えた……赤龍帝の兵藤一誠になぁ!」

レイナーレに血の気が引いていくのがありありと見て取れる。

「そして、俺には許せねえことが二つある……一つはきさまが裏切ったことだ」
「な、何を言って……」
「分かりやすく言おう……てめえはイッセーの気持ちを裏切った」

カリフ……お前、それで怒っているのか……? 俺のために……

思わず感激しそうになるが、そこは黙って話を聞こうと我慢した。

「別にイッセーを殺したのはどうでもいい……だが、お前は奴の『素直』と『正直』な心を『偽り』と『嘘』で裏切った!」

再び腕が肥大化していく。

「俺は嘘が嫌いでね……そんな『嘘』で『正直』を否定しやがった!! このクソ野郎!! ママに教わらなかったか!? 『礼は礼で返せ』と! それと同じ様に『正直を正直で返す』それが礼儀ってもんだ!!」

そうか……カリフは俺のために怒ってるんじゃなくて『真実』を『偽り』で返したことを怒っているんだな……

そして、この会話で分かったよ。

カリフはとことん嘘が大っ嫌いで……

とことん正直で素直な奴なんだって……

「そしてもう一つはオレの親を狙ってたってことだ……さっきのはその意味合いで殴ったが、正直言おう、あれじゃ足りねえ!!」
「ひぃっ!」

レイナーレも相当参っているのか顔が涙と血でグチャグチャだった。

「だが、これ以上やるとお前は必ず死ぬ! そして今回お前に勝ったのはオレじゃなくてイッセーだ!! お前の処分は今回の勝者のイッセーに決めてもらう!」

お、俺が!?

急な提案に混乱してしまうがカリフは俺に近付いて教えてくれた。

「これが力を得た者の特権だ……この光景を忘れさえしなければお前はさらに強くなれる」

そう言ってカリフは俺のすぐ後ろで止まった。

「性欲に対して愚直なほど素直……学園でも名高いエロの権化とはよく言ったものだ」
「うわ、そんな噂があるのかよ……」
「だが……その欲望を躊躇なくさらけ出すお前の正直さは結構気に入ってるぞ? 個人的にな」

……やっぱカリフって変わってると思うよ

こいつの考えはよく分からないけど、悪い奴じゃないかもな……今回の俺の気持ちを弄んだことに対して本気で怒ってくれたのは素直に嬉しかったし……

俺のためじゃなくても俺は嬉しかった……あの時の……デートしてた時の気持ちを嘘じゃないって言ってくれたから……

「さて、話はもう終わりね。さっさと逝くがいいわ」

部長が黒いオーラを纏ってレイナーレに凄むと、レイナーレは顔を青ざめ、俺に懇願してくる。

「イッセーくん! この悪魔が私を殺そうとしているの! あなたのことが好き! 愛してる! だから一緒にこの悪魔をごはぁ!」

夕麻ちゃんの声色で叫んでいたのをカリフはレイナーレの頭を踏みつけて黙らせた。

その表情には怒りで満ち溢れている。

「……俺を前にして未だ嘘を吐くとはな……しかも愛ってきたもんだ……マジで消してやろうかぁ!? あ”ぁ!?」

カリフは足をどけてレイナーレの頭を掴んで引き寄せる。

「オレは知っている……愛で結ばれた者がどれだけ幸福を得られたのか……毎日を幸せそうに生きてるのかを……オレを産んでくれた親が見せてくれたからなぁ……」
「あ、ぁ……」
「『愛』ってのは生物の本能に宿された真実だ……『愛』があるから太古から男と女は交わり、生命を育んできたんだ……嘘や建前で愛を語るな!!」
「同感ね。あなたの言う愛はエレガントじゃないわ」

先人に対するカリフのリスペクトを汚したレイナーレに凄みを利かせ、完全に心を折った。

もう救いようがなくて……憐れ過ぎる。

「駄目だ……こいつはオレに殺される資格がねえ……オレが殺したら恥かくだけじゃねえか……」
「決まりね……どうする? イッセー」

決まってますよ……さっきまで可愛そうだと思ってた俺がアホだった。

あの命乞いで完全に失望させられてしまったよ……

「グッバイ、俺の恋……部長、お願いします」

それに応えるように部長は魔力を収束させて言った。

「私の可愛い下僕に言いよるな。消し飛べ」

その瞬間、俺の背後から黒い羽が散った……

こうして、俺たちの長い夜が終結したのだった……

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