小説『ハイスクールD×B〜サイヤと悪魔の体現者〜』
作者:生まれ変わった人()

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遂にやってきたライザーと一戦を交える日、レーティングゲーム。

未だに両家が来ていない状況の中、既に両家の縁談を心待ちにしていている貴族たちの面々が集まりつつあった。

「今回のレーティングゲームは楽しみですなぁ」
「なんたって両家の縁談がかかっているのですから気合も入りますなぁ…」
「でも、今回のゲームには人間の助っ人がグレモリー陣に入るとか」
「おやおや、捨て駒を雇うとは次期党首も人が悪い、いや、悪魔が悪いってとこですかな?」
「それは悪魔ですからな! はっはっは!」

貴族同士の洒落を言い合う様子から、既にライザーに軍配が上がっているものだと考えている。

そんな中で、部屋の片隅に陣取るグループが一つ。

シトリー眷族一同だった。

「たく……今回は分が悪いっすね。フェニックス家とあたるなんて」

その中で、以前にカリフを案内した匙がこの空気にウンザリしながらも今回のくじ運の悪かったグレモリー一同に同情していた。

他の面子も同じことを考えていたようで、匙の言葉も咎めずにいたのだが、一人、ソーナだけは違った。

(魔王さまの一人が目にかけた人間……果たしてこのままスンナリと終わってくれるでしょうか……)
「会長?」

黙って思案するソーナに匙が心配そうに声をかけると、何事もないかのように振る舞った。

「なんでもありません。それよりもよく見ておきなさい。レーティングゲームとは何が起こっても不思議ではありません……最初から風聞だけでかかると痛い目に遭いますよ?」
「そ、それは分かってるつもりなんですが……でも、グレモリー眷族の助っ人の人間ってカリフって奴ですよね? 大丈夫なんですか?」

人間がレーティングゲームに参加することは前代未聞のこと。

これが非公式のゲームだからこそカリフの参加が叶ったのだ。

人間と悪魔の地力は明らかに絶望的だ。

そう思っての匙なりの後輩の心配に対して、顔色一つ変えずにソーナは言った。

「それはこれから分かります」







さらに別の席では三つの影がこれからの戦場となるフィールドを眺めていた。

「それにしても、妹が勝てないのを知っててゲームをやらせるか……お前こそ生粋の悪魔だよ。サーゼクス」
「まあいいじゃないかアジュカ。悪魔の社会とはそういうものだよ」
「どうでもいいけど寝ていいかい? 勝敗が決まってる勝負を見るなんてなによりもめんどくさいんだから……」
「そう言うなファルビウム。今回の勝負は一転、二転も戦況が変わるかもしれない世紀の一戦……もしかしたら我々の予想を越えるかもしれない」
「ほう……お前がそこまで言う根拠があるのか?」

そう言ってサーゼクスと呼ばれる男性はリアスたちの陣に映像を変えて一人、欠伸する長ラン高校生に焦点を当てる。

「へぇ、例の助っ人人間か〜……」
「あぁ、グレイフィアが言っていたよ……底が知れない子供だって」
「ほう、確かに人間は可能性の塊だが……そう簡単にこのゲームを制することができるかな……少し楽しみになってきたよ」

三者共、興味が湧いたのかそのモニターに映るカリフを見つめる。

だが、その中でもサーゼクスだけは違う意味で気分が高揚していた。

(一度だけセラフォルーが婿に迎えたいと言っていた人間……どうもグレイフィアから外見を聞いた時は少し驚かされたからねぇ……こりゃ楽しみだ)

ニコニコしながらセラフォルーを学園の安心のために呼ばなかった判断が正解だと考えていると、すぐ近くで魔法陣が現れ、そこからはグレイフィアが現れた。

「どうした? リアスたちの陣営へ行ったんじゃないのか?」
「いえ、ここでカリフさまからの提案といいますか、確認したいことがあるようです」
「確認?」

アジュカと呼ばれる男がそう言うと、グレイフィアはいつものような凛とした態度で振る舞った。

「『ルール上の反則行為以外の行動は全て許されるんだな?』と申されまして、その是非を魔王さまたちに取りに来ました」

その質問に三人は間髪入れずに答えた。

「もちろんだ。それで一向に構わない」
「あぁ、反則行為さえしなければ退場など無いからな。構わんよ」
「いいんじゃない? 規則の隙を突くのも戦略ってもんだし〜……」

三人は肯定の意を示すと、グレイフィアは一度頷いた。

「では、貴族悪魔の多数決と魔王さまの満場の一致により、カリフさまの申し出を認めさせていただきます」

口の近くに小さな魔法陣を形成して、そこに声を吹きこむとモニター越しでカリフが拳を握ったのが見えた。

そして、大がかりな荷物を肩にかける。

ゲームへのアイテムの持ち込みはある程度は許可される。

しかし、回復アイテムのような物には回数制限を設けているのだが。

とにかく、カリフの荷物はゲームに持ち込むことができる。

そして、ここでカリフの申し出は許可された。

誰の反対も無く、満場の一致で……







グレイフィアさんのアナウンスが部室にも聞こえてくると、カリフの不敵な笑みが一気にどす黒い、明らかな悪人面の笑みへと変わった。

それを見て、俺たちは思った。

ライザー……お前のことは忘れないよ……嫌な奴だったけど。

部長はおろか小猫ちゃんや朱乃さんにもカリフはこれから何をするかなんて聞かされていない。

まあ、多分だけど常識なんて考えずに無茶苦茶するんだろうな……それだけは分かる。

「それでは皆、準備はいいわね?」

部長の一言にカリフ以外の全員が首を縦に振った。

「作戦はあっちに着いたら説明するからいいとして……私が言いたいことは一つ」

部長は握り拳を作った。

「あの合宿を通して私たちは強くなった……それを証明するには今日は絶好の機会よ! 今こそ私たちの力を存分に見せつけて差し上げましょう!」
「「「「はい!」」」」

俺たちは部長の激励に返事を返した瞬間、俺たち全員は魔法陣の光に包まれたのだった。

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