小説『ハイスクールD×B〜サイヤと悪魔の体現者〜』
作者:生まれ変わった人()

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レーティングゲームが始まってから十分くらいが経っただろうか。

その短時間の中で運動場は変わり果て、無残な光景となっていた。

地面は割れ、瓦礫が散らばっている廃墟のような場所で火花がぶつかり合っている。

「やるな! その怪我でここまで立ち回れるとはな!」
「こっちだって十日間も遊んでいたわけじゃないさ。こっちもこっちで命賭けてきたからね」
「だが、だからこそこちらも手加減する訳にはいかなくなった」

現在、木場は甲冑を付けた『騎士』のカーラマインと仮面で顔面の半分を覆った『戦車』のイザベラが片腕から血を出している木場に襲いかかっていた。

「無駄だよ。君たちじゃあカリフくんと違って遅すぎる」

木場は無駄のない動きで攻撃を全てかわし、イザベラの拳を剣の腹で受け流してカーラマインの剣を受け止める。

しかも、片手だけで成し得るところも凄いという訳だが

「よくぞここまで鍛え上げたものだ……だが、それもここまでのようだな」

そう言ってイザベラの視線を辿っていくと、そこにはリアスと相対しているライザーの姿があった。

リアスの傍ではアーシアが寄り添っていた。

「お兄様。私もうそろそろ帰りたいですわ」
「まあ、そう言うな。俺はまだまだこのゲームを終わらせるわけにはいかないんだよ」
「はぁ!」

ポケットに手を突っ込んで立っているライザーを兄と呼ぶ一人の少女がいる。

そんな中、リアスは魔力をライザーの顔へぶつけるも本人はまるで何も無いかのように避けることなく当たり、普通にリアスに話す。

「リアス……早く投了すればお前やお前の下僕たちにも危害は与えない。それで全て丸く収まるんだ。だから……」
「だから投了しろですって? 分かってない様ねライザー。『今そこにいる』あなとの最強の下僕の『女王』は任務に失敗してここに来たのよ?」

不敵に笑って遠くで腕に包帯を巻いて魔法陣を展開させているユーベルーナがいた。

今、カリフにやられた傷の出血を押さえながらアーシアの力を封じているので戦いにはしばらく参加できない。

そのリアスの間接的な指摘に対してライザーも一変して不機嫌になる。

「たしかに、お前の下僕も人間も強いのは認める……だが、俺には『不死』がある! たかだか下級悪魔や人間風情にやられるような生っちょろいもんじゃないんだよ! それはお前も体験しているはずだ! 今ここで!」

確かに、ライザーの言い分にも一理ある。

今の状況でライザーを倒せるのはカリフだけなのだろう。

カリフ以外ではまだライザーは倒せない。

「それに、奴のおかげで随分と恥をかかされたようだからな。ここで奴にも同じ様な屈辱を与えてやる。そのために奴の参加を認めたんだ!」

高笑いするライザーにリアスももう呆れるしかなかった。

そんな我儘が通用する相手だと思っているのか……と。

そんな感じでリアスが見ていると、後方からある意味待ち侘びた声が聞こえてきた。

「なら、さっさと終わらせてやるか? トリ頭よぉ」
「「!?」」

その声にライザーとリアス、それどころか全員が目を向けると、そこには薄ら笑いを浮かべて宙に浮いているカリフが見下ろしていた。

「貴様!」
「カリフ!」

二人が一斉に叫んだ。

「あなた、ある程度自由にしていいとは言ったけど、ここまでするなんて聞いてないわよ!」
「人間風情がここまで虚仮にしてくれたものだ! 我が業火で焼き尽くす!!」
「味方はおろか自分の『王』まで攻撃するなんて非常識にもホドがありますわよ!!」
「できれば前もって言ってくれればよかったんだけどね……」

リアス、ライザー、レイヴェル、木場が各々の言いたいことを主張するが、カリフはそれを鼻で一笑する。

「知るか。オレはさっさと終わらせたくなったのだ。だから終わらせてやる」

そこでカリフは何かを持参していた巨大なバッグから高速で取り出して指で弾いてライザーにぶつける。

「ぐお!?」

ライザーもその衝撃を体を『く』の字に曲げて受けた。

だが、すぐにほくそ笑んで立ち上がる。

「そうか……なんだかんだ口で言っても所詮は人間……こうやって不意打ちするために散々挑発してきたつもり……」

そこまで言うと、ライザーの口が止まった。

「お兄さま?」

レイヴェルが怪訝に思ってライザーを見上げると、その口が……いや、口だけでなく体までもが震えていた。

「が……あぁ……」

それどころか冷や汗も滲みだし、胸の奥からとてつもない感覚が湧きあがり……

「ぐああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

その感情を一気に吐きだした。

『『『!?』』』

突然のライザーの尋常じゃない苦しみぶりに全員が目を見開いた。

だが、対するカリフは口を三日月状に変えて笑みを浮かべていた。

深淵の闇から蔓延るような闇を含むような笑みを浮かべて……

「き、貴様ぁ……何を……づぁ!」

ライザーは苦しみのあまりに腹に刺さっている『何か』を無理矢理引き抜き、触れて痛む手で『それ』を投げ飛ばした。

「こ、これは……」
「じゅ、十字架!?」

リアスの驚愕の声に全員が息を飲み、同時に戦慄した。

地面には銀光りする十字架が転がっていた。

「き、貴様ぁ……これは一体……」
「察しが悪いようだから教えてやる……オレは色んな意味で他者を驚かせるのが大好きだから少し考えた……前に使った鞭打や毒を使っても面白みに欠ける……」

得意気に語りながらライザーの周りをコツコツ歩くカリフに全員は冷や汗を流す。

「お前は不死ゆえに、どんな生半可な攻撃も通用しなければダメージも与えられない……これではオレの気が済まない……はて、どうしたものか……とな」

カリフは持っていた巨大なバッグを無造作に落として中身をまさぐり……

「そこでこれの出番というわけだ! 貴様が不死だろうが関係の無い刑を思いついた!」
「なっ!?」

瞬時にありったけの十字架を取り出したカリフにライザーが目を見開いた。

「青ざめたな? 貴様が不死でも……いや、『不死だからこそ』効果的なやり方だ……これから起こる結末に気付いたようだな?」

その一言に全員がカリフの真意に気付き、ライザー眷族が非難した。

「そ、そんなことさせられるか!! 今すぐその手を降ろせ!」
「そんなの、反則でしてよ!!」

しかし、カリフは鼻唄を歌いながらも十字架をジャグリングのように弄ぶ。

「反則? 違うな。これは足りない頭で考えた『ルールの節目』と言ってもらおう。このゲームにおいて『十字架及び、聖水などの道具持ちこみの禁止』なんて無かったぜ♪」

それはそう、なぜなら悪魔はそんなもの持参できるわけがない。持って行くにしろ相当な危険を要するのだから、誰もしないことだとルールによって規制するのを怠っていたのだから……

それを理解していたカリフはさらに得意気になって未だ苦しむライザーに指をさす。

「今からお前は『この人間風情が調子に乗るな』と言う」
「この人間風情が調子に乗るんじゃねぇぇ!!……ハッ!」
「その言葉の通りだ……既にお前の考えていることは承知済み……お前はオレの掌の上で躍っているだけだと理解したか?」

そう言うと、すぐにカリフはまたカバンの中から十字架を掴んで投げた。

「がぁ! この猿……なっ!?」

ライザーは痛みに叫びながら無造作に炎をカリフにぶつけようとするが、既にそこにはカリフはいなかった。

「き、消え……っ! おぐぁ!」

カリフは周囲に漂う微小な気と同化し、誰にも認知されないままライザーを襲う。

「はぁ……はぁ……! ど、どこに……あが!」

十字架が顔面に当たり、のけ反りながら態勢を整える。

あまりの極限状態に過呼吸状態に陥っているライザーと以下数名の眷族はリアスたちと戦い、ライザーの『女王』は魔法でカリフを必死に辿っている最中。

だが、それでも攻撃は執拗に続く。

「がぁ!」

手に十字架が刺さり、嫌な音が聞こえた。

それでも傷はすぐに完治する。

だが、ダメージは確実にライザーの『心』を蝕んでいく。

「姿が……見えない!……次はどこからだ!? い……いつ襲ってくるんだ……何回耐えればいいんだ……俺は……俺は……」

膝を付き、冷や汗が流れ、涎が垂れていることにさえ気付かないほどの緊迫状態。

それを人知れず、ライザーの目前でカリフがほくそ笑んでいるのにも気づかずに、ライザーは一心不乱に叫んだ。

「俺のそばに近寄るなァァァァァァァァァァァッ!!」

戦いは……ここまで来て最終局面に入った。


さぁ、この甘美なる時間を共に過ごそうではないか……

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