第九話 救済
ある日、小さな海の近くの街で騒動が起きた。緑に囲まれた、教会を中心に白い壁に赤茶の瓦屋根の家が立ち並ぶ美しい街である。
「誰か助けてーーー!!」
20歳くらいのショートヘアーの女性一人を、幾人もの海賊が追いかけている。海賊は、この女を人質にして、金を警察からむさぼりとりたいのである。
女性の名はメアリ。
メアリ一行は平和なテントを張った商店街をざわめかせた。
数人の海賊が商店街の品をどさくさに紛れて盗んだのか、罵声をあげる者も多くいた。
メアリは目前に迫ってくる教会の中に勢い良く飛び込んだ。
教会には誰もいない。
メアリはすぐさま奥の部屋へとかけこみ、鍵を閉めた。
奥の部屋の鍵がかかっていなかったのが幸いであった。
その中には神父さまがいた。
「あれ?メアリさんではないですか。」
豊かな黒髪にうっすらと白髪が混じっている目もとが精悍な50歳くらいの少し小柄な神父が
書斎の花瓶の水を取り替えようと瓶を手にしていた。
どうやらマレーシアとかフィリピンの人みたいな顔つきをしている。
メアリはこの教会の日曜のミサに毎回参加していたし、興味本位で時々この教会で神父さんに神学について教わっていた。
「私今、魔女狩りだ!!っていって海賊に追われているんです。私を人質にして金を巻き上げようって考えているんでしょう。」
神父さんは花瓶をもとの場所に置き
「君はクローゼットの中に隠れていなさい。」
とメアリをクローゼットの中に入れて鍵を閉め、さらに奥の部屋に入っていった。
「おい、コラー、出てきやがれ!!」
「魔女め、俺たちが懲らしめてやる!」
「おとなしく出てきなさい!」
クロゼットの中からメアリは海賊の罵声を聞き、怯えていた。海賊の中にはどうやら女も含まれているようだ。
しばらくすると・・・
奥の部屋からサングラスをかけた革ジャン姿のハードボイルドな
神父さん!!!?
が出てきた。
なんと、手にはマシンガン。
小柄ながらも肩幅の広い体にぴったりのマシンガン。
(つ、つよそう・・・・。)
クローゼットの扉の隙間に目をやっていたメアリは生唾を飲んだ。
神父さんは勢いよく表に飛び出し
ババばばババばばババばば
とマシンガンを打ち鳴らし
「うんどりゃコラあああああああああ!!!!!!!!!罪のない子羊になんてことしとるんじゃああああああ!!!!!!!」
ババばばばばババばばババばばババばば
すると、奥の部屋からたくさんの修道女が弓と矢を抱えて小走りにクローゼットの前を通り過ぎて行った。
(なんか、すごいことになりそうだ・・・・。)
海賊はさっさと退散していったのだった。