小説『不思議な話』
作者:あさひ()

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おまけ編2



ある日、その小屋に機械技師が訪ねてきました。その機械技師は女の人が魔術師のまだ見習いだったころの知り合いで、機械の致命的な故障を直すために、彼女の小屋を訪れたのでした。

彼女はすぐさま彼を部屋に入れました。自分で作った飛行船に乗ってやってきたので全然平気だったそう・・・。しかもお土産にでかいマグロを抱えてきました。彼女は驚きを隠せませんでした。また、マグロの凍結に時間がかかりそうで困りました。

「わざわざ機械の故障を直すなんて理由でここに来れるのは、あなた以外誰もいませんよ・・・。」
女の人は半ばあきれながら言いました。しかし、魔法の盾を改造してもらって、それで悪魔と強力に戦えることになった、という深い恩があり、その要求を快く受け入れました。

故障した機械というのは、未知の惑星を探索するためのロケットでした。女の人には、彼がビックになりたいのか、宇宙に興味があるのか、単に仲間と仲良くしたいのか、よく分からなかったけれども―。ただ、彼がお人よしで、最悪ともいえるような理不尽は大嫌いなのは分かっていました。彼女はよくそのことについて文句を聞かされていたからでした。

(まぁロケットの1つや2つ、直しても祟りがあるとは思わないし・・・。)

女の人は久しぶり会った技師のためにロケットの故障部に特殊な機械向きの回復魔法をかけて、元通りに直し始めたのでした。それが、彼が考案した新しい改造方法によってきちんと飛ぶようになるのかは知らないが―。


その様子を見ながら、ソファーに腰かけた技師は彼女に話を始めた。

「最近、○○村の裁判官に会ってきたよ。」
「あぁ、そうですか。」
「仕事が大変だって言っていて、理不尽なことがたくさんあるから辛いみたいなんだけど、我慢も必要だって言ったんですよ。」
彼女は (おそらく自分に会う前のことだな。) と思いました。

「そしたら?」
「怒っちゃったんですよ。」
「・・・、それはきっと自分だったら絶対にやらないことを平気でやる人に対する怒りを分かってもらえないことに憤りを感じたからでしょう。」
彼女はふと魔法をかけるのをやめて技師の方を見ました。
「みんな自分と同じだと思うのがいけないんだ。」
「・・・、彼は倫理基準の高い人間ですからね・・・。」
「僕はもっと成長した彼を見たいな。」
「彼はいざとなったら一番嫌な仕事でも引き受ける人間だと思いますが。私はやたらめったら人に迷惑をかける人間や、腹の中で何考えてるか分からないような人間より、ずっとできた人間だと思いますけどね。」
彼女は微笑み、再び魔法をかけはじめました。技師はなんだかよく分からないなぁという顔をしていました。

-7-
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