小説『遙か彼方の』
作者:読み手書き手(僕のブログ)

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実のところ山高のハンド部は、昔から強かった訳じゃない。
俺が中一のころに名前を聞くようになって、どんどん強くなっていった。
強豪校みたいに、中学から上手い選手を引き抜いたりもしなかったから
最強って訳では無かった。


まあそれはいいとして。

マイナースポーツのハンドボールでも、全国制覇したとなれば知名度は高くなる。
実際、全国大会終えてからしばらくは、地元じゃちょっとしたヒーロー扱いされてたし。
だから部員は俺らがいたときより増えていると思っていたのに・・・・・・。

なんで八人しかいねえんだよ!?

混乱が俺の脳内を支配していた。


・・・・・・・・・・とりあえず久しぶりにハンドやるんだ。
人数が減ったってハンドをすること自体は変わらないわけだし。
切り替えて、ハンドを楽しもうか。

・・・・・・ちょっとした自慢だけど俺は気持ちの切り替えが早い。


早速シューズを履いて、右手にテーピングを巻いていく。

その途中、俺に気づいた啓太が近づいてきた。

「よっ」

「おっす」

「ビビったろ?」

「・・・・・・ああ」

「何か色々あったらしいぜ?
顧問も変わって、今はハンドの知識ゼロの名前だけの奴らしいし。
ホラあそこのパイプ椅子に座って、あくびしてる奴いるだろ?
今年から入った新任の教師らしいんだけど―――――」

なるほど、ナルホド。
要するに顧問が替わって、部員が減って、今の状態になった訳ね。
ふう〜ん
って納得できるかいッ!!
そもそも顧問が変わっただけで部員が減るとかありえんだろ?
山高のハンド部に何があったんだ?


考えながら最後のテープを切って、完成。

考えるのは後にして、今は楽しんだモン勝ちだ。
よし。テーピングも巻き終わったし、行くか。

「集合!」

あれ?

あっ、そうか俺一応OBだから集合すんのか。

・・・・・・それにしても集合遅え〜。
ノロノロ歩きやがって。
五秒で来いよ。五秒で。

十秒以上かかってやっと集合する。

遅え〜よ。
と心の中でため息混じりにつぶやく。

それより何話せばいいんだろ?
よく分かんねえけど
・・・・・・まあいいや。

適当に自己紹介でもすればいいかな。

「お願いします!!」

あ〜なるほど。声はデカイんだ。
それはいいことだけどさあ、もっと素早く行動しろよ。

とまた心の中でつぶやく。

「えっとここのOBの寺上龍磨。
三年で俺のこと覚えてる奴いる?」

さっき集合を掛けた奴が口を開く。

「俺とユウは覚えてますよ。」

・・・・・・あ。
コイツのこと知ってるわ。
俺が三年の頃の一年。
ポジションはセンターで、当時一年の中では抜群に上手かったし
山高のハードな練習にもついてきたような気がしないでもない。
少し垂れ目で、どこか能天気な雰囲気。
確か・・・・・・

 
「智弘だ!!んでもって―――」

ユウって奴も見覚えあるぞ。
ポジションはキーパーで、結構上手かった気がしたな。
強気な目の割に無口な奴だった。
確か名前は・・・・・・

 クワハラ ユウジ 
「桑原 雄治!!あだ名はユウ!」

やっと思い出したぁ。

他の奴は見覚え無いけど一年かな?

まあいいや。

「とりあえず今日一日よろしく」

さーて久々のハンドだ。
楽しくやろ〜ぜぃ。

龍磨は久々のハンドに心を躍らせ
準備運動を始めた。


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