小説『ハルケギニアに蘇りし紅き狼』
作者:大喰らいの牙()

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第十話  祝儀


〜真紅狼side〜
はぁ〜、超憂鬱だ。
理由は聞くな、前回を読んでいれば分かるかもしれないが、現在祝儀のまったただ中なんだ。
御招待を受けたガリアは意気揚々に飛んできやがったよ。トリステインは普通に来たが登場の仕方が派手だった。ゲルマニアは、渋々来たという感じだったな。
そして、先程からアルビオン、トリステイン、ガリアと順番に祝いの言葉を俺達に向けて喋り、あと一言、二言喋って去っていくが、いきなりアルビオンで問題が発生した。
祝儀に参加していたモード夫婦が見つかったのだ。


『貴様は………モード!?』
『ジェームズ?!』
『こんなところに逃げていたとは………!! 今ここで………』
「おっと、これ以上我が国の国民(・・)に手を出さないで貰おうか?」
「なんだと?!」
「聞こえなかったか? 俺の国の国民だって言ったんだよ」
「奴は俺の弟だぞ!?」
「そりゃ、おかしいですね。アルビオンに“大公家”という名の御家は抹消されたと伺っていますが?」
「奴はだな………」


うるせぇ、ガキだな。


「一々うるせぇぞ!! ここは俺の国であって俺の土地だ。アンタの国じゃないんだよ! これ以上彼らに手を出すと言う事は、俺の国に喧嘩売るって見なすぞ?!」


すると、ジェームズ一世は言葉に詰まり、俺を睨みつける。
そして苦々しく言葉を吐く。


「くそっ、この若造が!!」
「……ク、ハハハハハハハハハハハハッッ!! 俺が若造(・・)か!! こりゃいい、傑作だ!! センスあるぜ、ジェームズ一世!!」


俺が急に大声で笑ったことに全員が驚き、俺を見る。


「貴様……この俺を侮辱するつもりか!?」
「アンタから見りゃ、俺は若造に見えるだろう。………だがな、俺から見りゃアンタ等こそが“若造(・・)”に見えるんだよ」
「なんだと………?」
「俺の歳はこう見えて714歳なんだよ。アンタ等よりも軽く200倍は生きてるわけ、お解り?」
「貴様、人間じゃないのか?!」
「俺は人狼だよ。まぁ、人間臭さが残っているから分かりづらいかもしれんがな」


俺の国の国民は全員知ってる。もちろん、モード夫婦も知っている。
七年間もあれば、打ち明ける時間なんて腐るほどあるからな。
そして三日前結婚したカトレアにも教えたが、そんなに驚くことも無く普通だった。
すると、ジェームズ一世は出口に向かっていった。


「俺は今すぐ帰らせてもらおう! 人狼が治めている国など存在したくもないわ!!」
「そりゃ、ご勝手に………出口はあちらだ」


数人の衛兵たちに命じて、空船まで見送らせた。
次にトリステインの姫殿下と枢機卿が挨拶しに来た。


「この度は、ご結婚おめでとうございますわ。蒼騎陛下」
「これは、どうも。アンリエッタ姫殿下。態々、こんな弱小(・・)な国に来て頂いて………口に合うかどうか分かりませんが、我が国の御馳走を楽しんでいってください」
「いえ、とても美味しいですわ! トリステインでも食べれたら!と、想うほどですわ〜」


カトレアが色々な人との話し合いが終わったのか、こちらにやってきた。


「アンリエッタ姫、お久しぶりでございます」
「ええっと、どこかでお会いしましたか? ちょっと記憶の方が………」
「無理もありません。姫さまがもっと幼い時に出会いましたので、“カトレア・ラ・フォンティーヌ”御存じですか?」


最初は頭を傾けていたが、思い出したようだった。


「カトレア!? でも、貴女は確か奇病を患っていた筈じゃ………?」
「それなら、真紅狼様に治してもらいました。そして、このように結婚をさせていただきました」
「「なっ?!」」


アンリエッタ達は、非常に驚いていた。


「ど、どのようにでしょうか?」
「我が国で調剤した秘薬だが、申し訳ないが内容まではお答え出来かねない」


誰が、好きこのんでトリステインに喋るか。
お宅らの意地の悪さは知っているからな。噂になったら、確実に密猟者がやってくるだろうが。まぁ、倒されることはまずないが、念の為だ。
そう言えば、明後日、トリステインに行く予定だったな。
荷卸しなんだよね………あるお店に。
五年前ぐらいから付き合い始めて、今ではお得意さんだ。
まぁ、行くことは告げなくていいな。
騒ぎになっても面倒だし。
すると………


「では、今度よろしければ、我が国トリステインに来て頂けませんか?」


……Why?
いきなり、何故そのような話になるんだ?


「えーっと、アンリエッタ姫、何故でしょうか?」
「カトレアがご結婚され、こちらに住むとは言え、生まれ育った故郷を訪れないのはいかがなものと思いまして………」


ああ、そういうこと………。
俺の一存じゃ決められないし、カトレア自身に聞いてみるか。


「カトレアはどうしたい?」
「私ですか? う〜〜ん、そうですね〜〜。御挨拶したい方達もいますので、伺いたいです」


トリステインに来日することの意思を見せると、アンリエッタ姫は子供らしい………つーか、まだ子供か。
それらしい表情を見せていた。


「では、すぐにでも………」
「三週間後にお尋ねしたいのですが、よろしいですかな?」
「分かりました。マザリーニ枢機卿、三週間後の予定は必ず空けといてください」
「確かに承りました」


そのような話をした後、「他にも話したい者達がいるので………」と言って、その場を離れた。
〜真紅狼side out〜


〜マザリーニside〜
私達と話し終わった後、この場を離れた蒼騎陛下とカトレア様が去ってから、私は改めてこの国がとても脅威に感じた。


(この国の技術、それに国民たち………どれも我が国よりも遙かにレベルが高い。しかも、過酷な環境の土地を上手く利用する知識まであるとは、この国は注意を払わなければならないな)


私は心中の中でこの国の事を考えており、さらにこの国にある不安を抱えていた。


(この国には………何故か分からないが、恐怖を抱いた。この“恐怖”がどんな意味を指すのかは分からないが、注意は払っておいた方がいいだろう)


我が国の繁栄の為にも。
〜マザリーニside out〜


〜真紅狼side〜
俺達は、最後にジョゼフ達の元に向かった。


「よぉ、ジョゼフにシャルル」
「何時の間に結婚したんだ?」
「お前等が帰った後の二日後」
「「まじっスか?」」
「まじっスよ」


すると、再び口を空けるガリア兄弟。


「で、こちらが、ミセス・カトレアですね?」


シャルルは、名を確かめるようにカトレアに訊ねた。


「はい。妻のカトレアと申します。お二人は、ガリア国王のジョゼフ様とその弟さんのシャルルさんですよね?」
「ああ。俺がジョゼフでこっちがシャルルだ。よろしく頼む」


今度はジョゼフが受け答えすることに。

「お二人はどうやって出会ったんだい?」
「カトレアの病気を治して欲しいって頼まれて、俺が治療した後、その日の夜に返事をもらった。という流れ」
「「ストレートすぎるだろ!!」」


本当にお前等ツッコミの才能あるな。
漫才師やれるぞ、お前等。
芸名は………“青髭兄弟”でいいな。


「いいじゃん、シンプルで。回りくどい方法なんか、気持ちが伝わらないだけだし、誤解を招くしよ」
「あ、それ、僕も分かる気がします」


ジョゼフももう一人の女性と結婚しちまえばいいのに………

「おい、ジョゼフ」
「なんだ、真紅狼?」
「さっさともう一人の女性と結婚しちまえよ」
「ぐほっ!? オイコラ、止めてくれ!! 毎晩が最終決戦なんだよ!!」


さらに追撃をかける者がいた。


「そうだよ、兄さん」
「シャルル、お前までもが敵に回ったか?!」
「男として答えを出さなきゃアカンだろ?」
「ホントですよね〜〜」
「なんで、俺、こんなに攻められなければならんのだ?」


あ、やべ、やり過ぎた。


「あ、もう! 真紅狼様、シャルル様やり過ぎです!!」
「「すみませんでした」」


と、まぁジョゼフ達とはお互いの身の周りの話で盛り上がり、そろそろお開きの合図をリュオンに出してもらい、祝儀が終わった。
っと、そうだ。


「ジョゼフにシャルル!」
「「なんだ/い?」」
「明後日、荷卸しでトリステインに行くんだが、シャルロットの様子でも見て来てやろうか?」
「あ、是非、お願いするよ! あと、伝言で『何か困ったことは無いか?』と『イザベラが寂しがっているから、たまには帰ってきなさい』と伝えておいてくれないかい?」
「OK、OK。確かに伝えておくよ。今日は有難うな、来てくれてよ」
「また楽しいパーティがあるなら、呼んでくれ! 必ず来るぞ!」


ジョゼフ達に軽く手を振った。
そして、二人っきりになった瞬間………


「ルゥちゃんは、明後日トリステインに行くんですか?」
「ま、まぁな。この国の地酒が好評でな、取引しているんだよ。………やっぱり、ルゥちゃんはまだ慣れねーな///」
「慣れてくださいね♪ ルゥちゃん」


こりゃ、無理。
破壊力が半端ない。
しかも、追撃が来た。


「あっ! そういえば、ジョゼフ様をからかい過ぎですよ!? ダメですからね? めっ!」


ヤベェ、萌え死ぬかもしんねぇ。
今まで、“萌え死ぬ”って単語を聞いたことがあったけど、『そんなのあるわけないだろうが』と思っていたけど、すいません、ありました。許してください。
極めつけが、人差し指で俺の唇を軽くつつくんだぜ?
しかも、ぷくぅって口を膨らませて。
一日一回は三途の川を渡りかけてるよ。
冗談抜きマジで。
そんな非っっ常に甘い空間を作りながら、夜を過ごしていった。
〜真紅狼side out〜


砂糖を吐いた人、もしくは、萌え死んだ人はコメントで手を上げて〜〜




―――あとがき―――
どうも、大喰らいの牙です。
新作の方は、明日もしくは明後日に投稿になります。

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