第十五話 バカ貴族達の対応
〜真紅狼side〜
俺は怒鳴った後、タマモ達が居る場所まで堂々と歩いていった。
「タマモ、大丈夫か?」
「あ、はい。ちょっと驚きましたけど………」
「あ、そりゃゴメンな。あと、やっておくからカトレアについてあげてくれ」
「はい、分かりました」
カトレアの元に向かうタマモを見送り、俺は金髪のお坊ちゃんと対峙した。
「……キミがあの使い魔の主か?」
「そうだと言ったら、なんだコラ?」
「言葉遣いや行動の悪さ………なるほど、主の質が悪ければ、使い魔の質も悪いわけだな」
おお、言うね〜。
相手も確認せずにそこまで言えるなんて………キミは勇者だね!!
素晴らしく輝いてるよ……………悪い意味でだが。
「ハッ! トリステインの貴族共は口だけは達者だが、中身がほぼゼロに等しいからって大見栄を張るなよ、哀しく見えるぜ?」
そう言われた貴族のガキ共は、目の前のガキだけではなく、周りに居たガキ共も怒りを露わにしていた。
「貴族にそこまで言ったからには、容赦はしないぞ!! 決闘だ!!」
「いいぜ。だが、決闘の意味を履き違えるなよ?」
「ヴェストリの広場で待つ!!」
そういって、格好付けているのかマントを翻して数人の女生徒貴族と男子生徒貴族を連れていった。
「おい、ヴェストリの広場ってのはどこだ?」
「こっちだ、ついて来い」
近くに居たガキに訊ねると、顎でしゃくって場所を示した。
コイツ等…………俺が他国の王族と知ったら、泣くんじゃないかな。
結構な勢いで不敬罪の罪数が溜まってると思うんだよね。
ま、ここに原作主人公(バカルイズ)達がいないのが………重症だな。
いたら、多少は……………マシにならないか、むしろさらに悪化させるかもしれん。
取り敢えず、ライフェンとタマモにはカトレアの傍に居てもらう事に命じた。
周りのガキ共が、手を出すかもしれんし。
そして、俺達は広場に向かった。
その離れた場所で、タバサとミス・ツェルプストーが遠くで眺めていたのを後で知った。
〜真紅狼side out〜
〜タバサside〜
真紅狼の使い魔であるタマモに杖を振ろうとした瞬間、真紅狼の長銃が火を噴いた。
そして、堂々と登場して話の流れで決闘することとなったが………確実にギーシュが負ける。
「決闘ですって、見に行きましょうよ、タバサ!」
「………分かった」
「それにしてもギーシュと対峙していた男の人カッコ良かったわねぇ、私の『微熱』が疼きそうだわ」
「…………………」
キュルケは結構マジで言ってるっぽい。
声の張りが全然違う。
私達は、皆から離れた場所でヴェストリの広場の決闘を見守ることにした。
〜タバサside out〜
〜真紅狼side〜
ヴェストリの広場では結構のガキ共が集まっていた。
「諸君、決闘だ!!」
目の前のガキが高々に叫ぶとそれだけで周りに居るガキ共は騒ぐ。
「僕はメイジだ。だから魔法を使ってお相手する。構わないだろう?」
「どうぞ、ご勝手に。俺は俺流の戦い方をするだけだ。お互い、得意なスタイルで戦うんだから、後々文句は言うなよ?」
「いいだろう!」
よし、言質を取った。
これで文句は言わせねぇ。
「全員聞いたな! お互い後々文句は言わない! この証拠はここに居る全員が証人だ!!」
すると、野次が俺を見てクスクスと笑っていた。
その笑いもこのあとの現状を見て笑えるかな?
「さて、では、戦ろうか」
すると、口に咥えていた薔薇を振るう。
振るった時、花びらが数枚散りそのまま青銅の戦乙女の形となった。
「おっと、言い忘れていたが、僕の二つ名は『青銅』。そしてこのゴーレムは『青銅の戦乙女』。『ワルキューレ』がキミのお相手をするよ。キミも二つ名がぐらいあるだろう? 名乗りたまえ!」
と言ってもなぁ、そんな名前はねぇんだが。
ああ、新しく名乗るか。
「二つ名じゃないが、異名ならあるから、それを名乗らせてもらおう。
“天喰魔轟(てんをくらいまをとどろかす)”」
良く覚えとけ」
「ふ、ふん。大それた名だ。………行け!」
金髪のガキが命じると、一直線にそのワルキューレが突っ込んでくる。
俺は一体目と二体目の攻撃を避けた後、三体目と四体目の距離があった事を確認した後、反撃に移った。
――ジェノサイダーカッター――
俺はその場で垂直飛びをしながら、周囲を足で斬り払った。
すると、ゴトン!という音を出しながら、三体目のワルキューレの胴体が真っ二つになった。
目の前の状況に金髪のガキは目を見開き、周りのガキ共も口を開けてあんぐりしていた。
そして、四体目は着地と同時に素早く踏み込み、右足で真横、下段、上空にと高速で連続蹴りを叩きこむ。
――ビース・ディストラクション――
ボコ………ボゴォン!!
四体目もボロボロになり、あっという間に四体創ったワルキューレが半分になっていた。
この状況には誰もが驚き、当の本人である金髪のガキは恐怖に怯えた。
「おいおい、こんなもんじゃないだろう?」
「あ、当り前だ!! やっつけろ!」
薔薇を振ると残りのワルキューレが時間差で襲ってくる。
俺は一体目のワルキューレを殴られる直前で掴み、そのまま二体目の盾にした。
すると、二体目は一体目のワルキューレを砕き、技後硬直で僅かな隙を出した。
俺はその瞬間を見逃さず、こちらに引き寄せた後、乱舞攻撃を叩きこんだ。
――ディストラクション・オメガ――
「HAHAHA!!!」
通常なら、このままジェノサイドカッターに繋げるが、そのままボロボロになったワルキューレをガッシリと掴んで金髪のガキ目掛けて運送をした。
「なっ!? こっちに来る……がっ!!」
「壁のシミ経由の病室直行便だ。嬉しく思え」
――ゴッド・プレス――
ドゴンッ………!!
金髪のガキを掴んだ後、高速で駆けて端の壁に激突させた後、再び掴み今度は反対側の壁に激突させた。
ボゴンッ………!!
「………………ま、まい”っだ……」
「ふん。大したことねぇな」
俺はボロボロとなった金髪のガキを後ろに放り投げた。
貴族のガキ共は目の前の状況が信じられず、固まっていた。
俺は気にせず、カトレアの元に向かおうとすると、少し離れた人ごみの所にカトレアに杖を振るおうとするガキを見つけて、素早く真紅の執行者を引き抜き、構わず二の腕を撃ち抜いた。
ダァーンッ!!
ドンッ!!
「ぎゃあああああああああ………っっ!! 腕が、僕の腕がぁぁぁ!!」
撃たれたことに気が付くガキ共はその者から離れながら悲鳴を上げる。
俺は、そいつに照準を定めながらゆっくりと近づく。
「由緒たる貴族が闇討ちとは、いい度胸じゃねぇか。なぁ、クソガキ」
「き、貴様、この僕に向かって………!!」
「決闘中に不意打ちまがいなことする貴様が悪い。撃たれても文句は言えないはずだが?」
銃口をそいつの頭に押し付け、引き金に手をかけると………
「や、やめてくれ、悪かった。もうしないから!!」と痛みの声を上げながら喚く。
「真紅狼さん、やめてください!」
「………カトレア」
「私は大丈夫ですから、彼らを治してあげてください」
「………カトレアがそういうなら、仕方がない。タマモ、撃たれたガキの銃痕を塞げ。ライフェン、先程の金髪のガキを持ってこい」
「「はい」」
タマモは嫌々ながらもそいつの腕を持ち、符を使い治癒を開始する。
ライフェンは金髪のガキを担ぎ、俺の元に降ろした。
「御苦労さん」
「いえ、とんでもない」
「こいつに使うのは気が引けるが………仕方がない」
俺は懐から蒼白い液体が入った小さな小壜を取り出した。
そして、そいつを飲ませてやった。
すると、金髪のガキの体中にあった傷がみるみるうちに塞ぎ、元の姿に戻っていった。
「傷が治っていく………」
「水の秘薬かしら………」
あーあ、ここではめちゃくちゃ高い水の秘薬を使っちまった。
あとで請求額に追加させとこ。
この治療薬の素材は、不死鳥の羽根と水竜の鱗をすり潰し、熱したものだ。
ウチの国では結構安価でどの家庭でも手に入る様な治療薬であるが、トリステインではおそらく上級貴族でもほんの一握りしか手に入らないような代物だろう。
その時、騒ぎに駆けつけた一人の教師がやってきた。
「何をやってる!?」
教師がやってきたことで、貴族のガキ共は安心していたがすぐさまにその来た人物を見て、嫌がっていた。
「ギトー先生! アイツが僕の腕を撃ったんです!!」
「なんだと!? キミは確かヴィリエ君だったかな?」
「はい、そうです。風系統の名門です!」
「素晴らしい生徒を傷つ………け……た………、貴様はあの時の!! い、いや、しかし、あの時は確か髪が紅かった筈だが………」
何やら、一人で自問自答しているみたいだが、今ここではまだ明かさない。
明かす時期はもうちょっと先にするつもりだからさ………
「何を言っているのか、良く分からないんだが?」
「取り敢えず、貴様、捕縛させてもらうぞ!!」
「お断りさせてもらいます」
「………貴様、ふざけているのか?」
「………いや、割と真面目に答えたつもりなんだが?」
こめかみがピクピク動いている。
うん、堪え性が無いね、キミ。
100%、俺のせいだけど!
「よろしい、貴様は俺をバカにしているんだな? ならば、多少手荒な事をしても黙らせてやる」
ギトーと呼ばれた男は杖を引き抜く。
ふむ……………もうちょっと請求代を追加させておくか。
俺とギトーはお互いに得物を引き抜こうとした時、ギトーの前にライフェンが立ち塞がった。
「貴様、どけ!」
「私が相手になりましょう。よろしいですか?」
「………まぁ、ライフェンがしたいなら、別に俺は構わないぜ」
「では、一度限りの勝負としましょう。長い闘いは好きではない。故に全力でかかって来なさい。
“蒼龍隊”部隊長ライフェン。――――――――推して参る」
その雰囲気に押し込まれたのか、ギトーも一撃に掛ける為に呪文を強く唱えていた。
ライフェンは、腰についている刀の柄に手を乗せて、居合いの構えを取った。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
静けさが場を支配し、その様子を全員が見守る。
そして、どこかで何かが落ちる音がした。
カコーン…………!
その瞬間、互いの四肢が動き、ギトーは杖を振るう為に腕を撓らせ、ライフェンは脚の裏に溜めていた力を爆発させて、一気に距離を詰めながら刀を火花を散らせながら抜いた。
ブオッ………!
ギィン………!!
ゴォゥア!!!
ギトーはおそらく気絶目的で“エア・ハンマー”を放ったが、その“エア・ハンマー”をライフェンはぶった切り、そのまま振り下ろした瞬間、炎の斬撃が地面を奔り大地を切り裂き、壁に傷痕を残した。
そして、切っ先を顔に突きつけられているギトーは敢え無く降参した。
ライフェンは常に持ってる和紙で刀を拭った後、カチンという音を鳴らして鞘に戻した。
「勝負ありですな」
「く、くそっ!」
「勝負は一度と言いました。二度も手を出されるのであれば、今度は……………斬り捨てます」
ライフェンは感情を殺した目付きでギトーを見下ろす。
「真紅狼さん」
「ん、なんだ? カトレア?」
「ライフェンさんの武器、見たことないんですけど、なんて言う武器なんですか?」
「これは“刀”って言ってね。剣と全く違う代物なんだ」
「刀ですか…………」
「“刀”と“剣”の違いは簡単に見分けるなら、刃の位置だ。剣は両刃にあるが、刀は片刃仕様になっているところだ」
ライフェンが鞘から抜いて、カトレアに実物を近くで見せてあげた。
「あ、本当ですね。片方しかありませんね。………? この黒くて固いのはなんですか?」
「ああ、これは峰といってな、刃の無い部分で刀の強度を司る部分だ。ここが弱ければ、刃も欠けやすくなったりする」
「ライフェンさんの刀は風と火の魔法らしきものが出てましたが………あれは?」
「アレは、この刀を鍛つ時に“風石”と“火石”を溶かして混ぜて叩いたからな、中々うまくいった」
「『叩いた』って、真紅狼さんが造ったんですか?!」
「おう。部隊の連中の武器の大半は俺が造ったな」
「物作り好きなんですか?」
「あー、まぁ、うん」
「じゃ、じゃあ、今度私達の結婚指輪造ってください////」
「分かった。妻の望みと言っちゃ、断れない」
妻(カトレア)の少ない望みを聞きつつ、ようやく俺達の存在を知っている教師がたってきた。
「これは…………何事ですか!?」
「どうもこうも見学していたら、襲われたのでこちらで対処しただけですよ、ミスタ・コルベール」
「お、お、襲われたですって!!?」
コルベールは蒼白になり、口をパクパクと動かしていた。
「ああ、そろそろ時間ですね。戻りましょう。心配しないでください、こちらが被った被害金額は全て加算させていただきますから」
完全に動きが止まった。
トドメを刺したな、こりゃ。
トドメを刺した、コルベールを余所に俺達は休憩時間が終わりなので旗艦に戻った。
〜真紅狼side out〜
さぁ〜て、答えは出たよな?
―――あとがき―――
プライドをバカみたいに高く掲げている貴族達を潰しました。
真紅狼=ガロンだと言うのは、ある場所でバラします。
もうちょっと先ですが、原作の話で言うと結構前倒しになりますので、「時系列が違うとか言わないでください」ね?
そして、ライフェンの武器ですが、刀が主流です。
真紅狼が造った物ですがね。
ライフェンの刀には、“風石”と“火石”を混ぜ合わせて作られています。
最初に“火石”を混ぜ合わせてから刀を鍛ち、その後にもう一度ほんの少し溶かして“風石”を混ぜ合わして叩きました。
その為、“風石”の力で刀に風のコーティングがされ、中は“火石”の力により炎の斬撃が繰り出すことが出来る様になっています。
つまり、最初の一撃は風で斬り裂き、その後炎で燃やし尽くすということです。
次に、異名ですが“天喰魔轟(てんをくらいまをとどろかす)”でも構いませんし、“天喰魔轟(てんしょくまごう)”と読んでも構いません。
キャラ紹介
名前:ライフェン
種族:翼人、モデルは鷹
性別:男
詳細:トゥルゥーガ公国の国軍、『神狼』の一つの“蒼龍隊”の部隊長。
常に冷静で公私をちゃんと区別できる人。
主流武器は刀。