小説『ハルケギニアに蘇りし紅き狼』
作者:大喰らいの牙()

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第十七話  どこまでも我が侭道


〜真紅狼side〜
会談から四日が過ぎた。
あの会談は色々と波乱万丈だったので、全員一週間の休暇を与えた。
リュオンに関しては二週間与えた。
その為、結構静かです。
俺の机は書類で溜まってるけどね!
まぁ、全部判子押し済みのやつだからいいんだけど〜
時間帯は昼ごろ………
ん? カトレアはどうした、だって?
カトレアなら………………


「真紅狼さーん、昼ごはん出来ましたよ〜!」


料理をしてました。
俺も作れるんだけど、びっくりなことにカトレアも作れたらしい。
羨ましいだろ! カトレアの手料理を独り占めだ!!


「はい、どうぞ♪」
「いただきます」


一口食べてみる。
………………………美味しい。
優しい味がする。
カトレアの性格が出てる様な料理だな。


「………どうですか?」
「美味しいよ」
「そう言われると、嬉しいわ。そ、それでね………////」


何故か、カトレアはモジモジしていた。


「どうした?」
「あの、その…………・・・んを///」
「え、なに? 聞こえない」
「その/// “はい、あーん”を………///」


………………そうきたかぁ〜〜〜!!
だが、やるか…………
カトレアはスプーンを持って…………


「あーん…………////」
「あーん…………(もぐもぐ」


とまぁ、画面の向こう側では今頃大量に砂糖を吐かせているだろう。
そうこうしているうちに、昼食を終えて、俺はいつもの変装をして地酒を積んでウォルフガングに乗り込んだ。
〜真紅狼side out〜


〜タバサside〜
今日は虚無の曜日で、皆、好き勝手に過ごしているが学院が少しの間休校の報せを出した。
休校の期間は二週間ほどらしく、その知らせを聞いた皆は実家に帰っていった。
私達(・・)は寮に残っていた。
本当なら、ガリアに帰りたいが、二週間じゃすぐに経ってしまうので一カ月以上休みがあるときに帰るつもりだ。
そして、先程私達と言ったが、私と他には私の親友、キュルケだ。
あとは、真紅狼にボコボコにされたギーシュとモモランシーが残っていた。


「しかし、暑いわね〜」
「………帰らないの?」
「二週間ちょっとじゃ帰ったって意味はないわよ。貴女こそ帰らないの?」
「………夏休みに帰る」
「あたしと同じじゃない。皆帰っちゃったし………まぁ、残った生徒と言えばギーシュとモンモランシーぐらいか…………そうだわ! たまには涼みに行きましょうよ! 四人でちょっと王都まで行きましょ!!」


キュルケは半ば強引に私を引っ張り、後、ギーシュ達を引っ張って私達はトリスタンに向かった。


そこで、ブルドンネ街を歩いていたら、武器屋にルイズと使い魔の男の子が入り、その後変装した真紅狼が入っていった。
それを見たキュルケは一人でその武器屋に向かってしまったので、私達もやむなく向かう事にした。


『ガロン! 久しぶりじゃない!! 元気だったかしら〜?』
『おや、これは奇遇ですね。ミス・ツェルプストー。学院はどうしたんですか?』
『いきなり休暇になっちゃって〜、暇なので街まで繰り出したのよ〜』
『それは、また………。突然な事ですね』


と、あたかも初耳な情報を聞くように真紅狼は振る舞う。
騒ぎの原因を引き起こした者がなにを言っているのか………
外で待ってるのもアレなので、中に入ることにした。


「………ガロン、久しぶり」
「タバサも居たのか。そちら………はお初ですね」
「………こっちの男の名はギーシュ、女の名はモンモランシー。どっちも貴族」
「お初にお目にかかります。私、ガロン商会のガロンと申します。以後、お見知り置きを」


すると、二人は適当に会釈した。
ガロンはアイコンタクトで『余計な事を言うなよ』と言ってきたので、『分かった』と返した。


「………ガロンはここで何を?」
「商人ですから、荷卸しですよ」


そう言って、長方形の細長い木箱を何個も隣に置いていく。


「ガロンの旦那、いつも有難うございやす!」
「いつも通りの値段にしたいんですが、ちょっと値上げしてもよろしいですか?」
「そりゃまた、なんでぇ?」
「通行料がかなりの値上げをされましてね………。一体どうなってんのやら」
「ああ〜、そりゃ、なんでも国の強化の為とか言って政府が税率を引きあげるらしいみたいなんですぜ。こっちも商売あがったりでやってられませんよ、まったく」
「それほど、逼迫した状況なんですかね?」
「さぁ〜俺達、下々にゃ分からん」
「まぁ、値段が上がると言っても2エキュー程なんで。後は変りませんよ」


すると、武器屋の主人は『悪いねぇ』と言って、支払っていく。
主人はその武器を何本か取り出し、すぐに飾った。
どうやら武器は剣や斧槍、槍だったが金属の部分の色が変った色だった。
それを見た、ルイズが………


「ねぇ、アンタ。私達にその剣を一本安く売ってちょうだい」


などと無礼千万な口調でガロンに言った。
学習しない人………。
〜タバサside out〜


〜真紅狼side〜
俺が武器屋の主人と話していたら、我が侭お嬢様がふざけたことを抜かしてきた。
おっと、ここで感情的になったら正体がバレる。
冷静に処理するか………トリステイン値段で売っちまうかの二択だな。


「………それは無理ですね」
「私は貴族よ? 貴族の言う事が聞けないの?」
「私はトゥルゥーガ公国の者です。そんな脅迫は聞けませんよ。まぁ、売るにしてもこちらが提示した値段で買ってくださるのなら、別に構いませんが………」


我が侭お嬢様は不機嫌な表情で考え、値段を訊ねてくる。


「いくら?」
「軽く………500エキューってところですかね」
「……私は『安く売ってちょうだい』って言った筈よ? それに、さきほどアンタが主人と取引した値段よりも200エキューも多いじゃない!!」


何を言うと思えば………
当り前だろう………これは店同士のやり取りじゃなくて個人相手の販売………元以上の金額を取れなくて何が商売だ。


「何か勘違いされておりませんか? 主人との取引値段は大量に商品を購入して頂いた為、割引をしているんです。だけど、貴女様は違います。個人販売(・・・・)ですよ? 割引もへったくれもありません。この値段が気にいらないのであれば、買わなくて結構です」


俺は至極真っ当な理由を述べると顔を赤くする我が侭お嬢様。


「私はその剣が欲しいのよ!」
「なら、お支払いを」
「だから、安く売ってちょうだい!!」
「お断りします」
『そうだぜ! おめぇさんにはそんな武器はもってぃねぇ!!』


俺と我が侭お嬢様の会話にこの中に知らない声が響いた。
誰だ?


「………どこから声が?」
『ここだ! よく見やがれ!!』


武器が収まってる酒樽の中から、カチンカチンと音を鳴らす大太刀があった。


「こら、デル公、お客様になんて言葉遣いだ!!」
「………それってもしかして“インテリジェンスソード”?」
「主人、“インテリジェンスソード”ってのは?」
「ああ、旦那。“インテリジェンスソード”ってのは意識がある剣でさあ。遙か昔に鍛冶屋のある男がこの剣に意志を持たせたらしいですよ。まったくなんの為に与えたのかまったく分からんのですよ」


すると、我が侭お嬢様の使い魔の少年は興味を持ったらしく、それに夢中になり最終的にその剣を買った。


「少年、それを少し持ってみたいんだが、いいかな?」
「あ、はい。どうぞ」


そして、手渡された剣を持ってみると………


『やい、なんだてめぇ!』
「おお、本当に喋るのか。こりゃ、おもしろい」
『………な、なんだてめぇ!?』


ん? どうしたんだ?


『おめぇは本当に人間か?! なんだ、その体の中に眠る化物は!!』


コイツ………俺の中の狼(モノ)を分かりやがった。


「少年、有難う」
「え、あ、はい」
「では、主人。これで取引も終わりましたし、次がありますので………」
「ああ、旦那。毎度!」
「では、また御贔屓に」


俺は軽く頭を下げて、外に出た後、次に行く予定の“魅惑の妖精亭”に向かおうとすると、タバサ達が付いてくる上に我が侭お嬢様までついてきた。


「何故、ついてくるんですか?」
「私達ー、どこかで涼むつもりなのよ、それで商人のアナタならどこかいい酒場とか知ってないの?」
「まぁ、酒場にはこれから荷卸しに行きますが………」
「じゃあ、そこに行きましょ!」


そう言って、キュルケ御一行は俺の後にぞろぞろと付いてくる。
ブルドンネ街からチクトンネ街に歩き、“魅惑の妖精亭”に辿り着く。


「出来れば、開店する前に荷卸ししたかったですが………まぁ、しょうがないですね」


そう言って、桃色でブロンドをかけた我が侭お嬢様をさりげなく睨んだ。


「では、私は荷卸ししなければいけないので………」


そこで別れ、キュルケ御一行は店の中に入っていった。
俺も遅れて店に入る。すると、俺の姿に気が付いたスカロンが裏口に視線をやったので俺は頷き、裏口に回るとやはりジェシカが居た。


「今日は遅かったわね」
「ちょっと厄介なガキに捕まっていてな。それで時間を食っていた」
「今日は寄ってくの?」
「ん? ああ、寄ってくぞ?」
「そう。………この前の席でいいわよね?」
「別にどこでも構わないが………」
「じゃあ、この前の席ね」


人の意見は無視ですか、そうですか。
テキパキと木箱を中に運んでいく。


「はい。終わり」
「御苦労さま、お代はいつも通りね?」
「まぁ、そうだな」


酒代は武器と違ってさほど、変動がなかったので引き上げはなしだ。


「じゃあ、表から入るよ」
「裏口から入ればいいじゃない。皆知ってんだし、文句なんか言われないわよ。席も取ってあるし」
「そんじゃ、甘えさせてもらおうかね」


そして、厨房を通り過ぎ、前回座った席に座った。


「なんにする?」
「麦酒でいいかな」
「分かったわ。ちょっと待っててちょうだい」


ジェシカが奥に引っ込み、来るまで時間があるので、“真紅の執行者”の空の薬莢に暗黒魔法を込めたり、『七ツ夜』の刃研ぎをしていた。
すると、前からマントを羽織った集団がやってきたので顔を上げてみるとキュルケ御一行だった。


「ガロン、アナタ一体どこから店に入ったのよ?」
「裏口から。このお店とは付き合いが長いですから」
「ここに座ってもいいかしら?」
「まぁ、どうぞ」


すると、キュルケ御一行は座り、手に持っていた酒を飲み始めたので、俺は“真紅の執行者”と『七ツ夜』をしまおうとするが………………


「ガロン、その長銃を見てもいいかしら?」
「あー、これは大事な物なので」


そう言ってしまおうとする傍で金髪のガキは何かを思いだそうとしていた。
まぁ、記憶が確かなら俺の銃を覚えているが、その後にフルボッコに遭ってるからそのせいで記憶が飛んでるな。


「お待たせって…………なんでこの人達がここに? 貴女達はあっちの席に座ってたんじゃないの?」
「あー、コイツ等は知り合いでな」
「あら、そう………。はい、麦酒!」
「どーも」


しばらくは出された酒を飲んでいたが、店内の中にトリステインの士官中隊がこちらを見ていた。
あー、なんか嫌な予感がするから、飲むの止めて意識をはっきりさせておくか。
銃はマズイし、『七ツ夜』でいいな。


「そこのお嬢さん方」
「なにかしら?」
「我々はナヴァール中隊の者なのですが、一緒に飲みませんか?」
「友人と飲んでいますので」
「そこをなんとか。我々は軍人、いずれ死地に向かわなければならない身です。一時の幸福を与えてくれませんか?」


そう、遠回しに口説こうとしているが、キュルケはそれを一蹴させた。
そうすると連中のプライドに障ったのか、次々と陰口を叩く始末。
プライドもへったくれもないな、こいつら。


「………仕方が無いわね」
「あー、俺がやってこよう」
「ガロン、アナタは関係ないじゃない」
「関係無かろうが、今日顔を合わせた仲でもないんだ。それにこっちもさっきから迷惑でな。美味い酒がマズくなるのだけはいただけない」
「あら、そう。なら………そこの兵隊さん達?」
「なにかな、ゲルマニアのお嬢さん?」
「私の代わりにこの人が戦ってくれるそうですわ。この人に勝てば、酌でもなんでもしてあげますわ」


………おい、ハードル上げんな。
あーあ、連中の眼の色が変ってるし、ちょっと追い払おうとした結果がこれだよ!!


「………すまないが、我々は法により私闘は禁じられてる身。それ故………「なんだ、今から負けた時の言い訳か?」………なんだと?」
「今から言い訳の用意とか………トリステインの兵隊と言うのは情けないねぇ。まぁ、言い訳を用意してれば、負けた時でもプライドだけは保てると? 無理だろ、そんなのはよ。それにしてもアンタ等って結構チキンだな。口喧嘩に勝てないで、勝負にも勝てないなんて………この国の未来は真っ暗だな。しかも、まず考えたことが自身のプライドなんて、酷いったりゃありゃしない」
「………青年、そこまで言うなら我々の相手をしてもらおうか!!」
「いいぜ、表に出な。今夜はいい月だから………その月の美しさのあまりに手元が狂っちまうことにならないことを祈りな」


そういって、俺と中隊共は外に出て対峙した。
〜真紅狼side out〜


今夜はいい月だよなぁ。



―――あとがき―――

次回は戦闘ですが、まぁ、殺人貴イクリプスモードです。

最後のセリフはちょっと七夜っぽくしてみましたが、風味を上手く再現できたか不安です。

そして、砂糖はもうスルー…………出来ないです。ゴハァッ!!
砂糖を吐いてる人は正常な方です。

吐けてない人は、無意識レベルで回避しているか、それか慣れてしまった人です。

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