小説『ハルケギニアに蘇りし紅き狼』
作者:大喰らいの牙()

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第二十一話  修行終了


〜真紅狼side〜
盗賊討伐からさらに二週間が過ぎた。
ギーシュの修行レベルから見て、抑えるべき基礎は全てクリアして、今は応用に入っているが、どれもこれもトリステインでも行えるものばかりなのだった。
ただ、今、リュオンに習っている経済の勉強については、週に一回ほどウチに来てもらう事になるが、送迎艇を出せば問題ないだろう。
修行終了の証として、専用武器を作成………というより、すでにカタログに乗っている武器は常に二つ以上はストックがあるので、後は何が欲しいか聞くだけだったりする。
なので、俺はクロにギーシュを呼んでもらった。


『陛下、失礼します』
「おう」
「報せとはなんでしょうか?」
「ギーシュ」
「はい」
「お前は約一カ月ではあるが、基礎を全て習得したことをここに宣言する! よって、今日をもって修行を終了する」
「え……? ほ、本当ですか!?」
「ああ。ということで、このマントを返そう」


俺は貴族の証のマントを返してやった。


「でだ、終了の証として専用武器をくれてやるって話をしたが、決まったか?」
「はい。僕はガンランスの【獄銃槍リュウケツ】が欲しいです」


コイツはまた、エグイものを要求するなぁ。
“覚醒”が発動すると『龍属性』が発生し、しかも型は拡散型でLv.3。
そうそう、こちらの世界では、持っている武器に属性が付加されている場合、対象物がそれに斬られた場合、“属性やられ”という状態になるらしい。



【火属性】―――斬った対象物に火傷を負わせ、さらに火が体に纏わりつく。
火を消さない限り、火傷が広がる。受けた者の体には小さな篝火が燃えている。
ただし、地面を数回転がれば火は消えるし、トルトゥーガで採れる不思議な実―――“ウチケシの実”を食べることで回復可能。



【水属性】―――斬った対象物の体全体が水に浸かったようになり、対象物のスタミナを多く奪う。さらに纏わりつく水のせいでスタミナを回復するのを遅くさせる。受けた者の体には水が滴る。
トルトゥーガで採れる不思議な実―――“ウチケシの実”を食べることで回復可能。時間経過で回復も可能。



【雷属性】―――斬った対象物の筋肉を電気の力で固まりやすくさせて、気絶を誘いやすくする。頭を強打されると確実に気絶する。受けた者の体には雷が纏わりつく。
トルトゥーガで採れる不思議な実―――“ウチケシの実”を食べることで回復可能。時間経過で回復も可能。



【氷属性】―――斬った対象物のスタミナと体温を一気に奪う。体温を奪う為、敵の行動力を強制的に下げる。受けた者の体には氷の欠片がパラパラと散る。さらに、低確率ではあるが凍傷を引き起こさせる。
トルトゥーガで採れる不思議な実―――“ウチケシの実”を食べることで回復可能。時間経過で回復も可能。



【龍属性】―――斬った対象物が発動しようとしている魔法と敵に掛かっている魔法を打ち消すことが出来る。受けた者の体には黒と赤い光が纏わりつき、消すまでその者のメイン魔法は使用不可。


(例)………土のメイジで、クラスはトライアングル。土のラインと火のドットなら、“土のライン”が使用不可。………と言う事になる。


つまりは、クラスダウンにも繋がり相手によって威力は変動する。
そして“虚無”にもそれなりに有効だが、効果は薄い。
ただし、発動される前にやられているなら、通常の威力を引き出す。
トルトゥーガで採れる不思議な実―――“ウチケシの実”を食べることで回復可能。時間経過で回復も可能。



と、なっている。


「じゃあ、あとで工房に取りに行くからちょっと待ってろ。あとそれと、こっちでやった基礎は終わっても続けることだ。お前に渡した重り“グレートストーン”四つもやるからよ」
「有難うございます! あ、でも………経済の勉強の方は………?」
「安心しろ、週に一回。こっちから送迎艇を出してやるから、それに乗ってこい。行き先は魔法学院でいいよな?」
「何から何まですみません」
「それと、これをやるよ」


俺は、机の中からシルバーアクセサリを渡す。
形はブレスレットだ。真ん中に魔力を透しやすいメランジェ鉱石を付けたモノだった。


「これは………?」
「ウチでは杖を持たないのは知ってるよな?」
「はい」
「杖の代わりの魔法媒体として、それで補っている」
「これがですか!?」
「少しは洒落たモノを身に付けようぜ。伝統は重んじてもいいが重んじ過ぎるのもダメだと思うんだよ。常に新しい風を取り込んで、進化を進めないといけないだろ?」
「確かにそれもそうですね」


そういうギーシュは、右手にブレスレットを付ける。
うん、中々悪くないな。
その時、ノック音が聞こえた。


コンコン………


「はい、どちらさま?」
『……持って来たぞ』
「入ってくれ」
「……失礼する」


部屋に入ってきたのは、俺の身長の半分ぐらいの高さまでしか者だった。


「態々、悪いな。………ゴルド」
「……いい。買い出しついでに来た」
「そうかい」


部屋の中に【獄銃槍リュウケツ】が運び込まれ、ギーシュは実物を見て息を飲んでいた。
その武器はただならぬ雰囲気と威圧感を醸し出していたのだ。


「……じゃあ、帰る」
「御苦労さん」


ゴルドは、我が国でもっとも大きな工房の総代だ。
ゴルドの種族はドワーフで、この種族は皆、ほとんどが鍛冶屋の仕事をしている。
造る物は、日常用具から武器まで幅広く作っており、鉱石を扱った仕事はほぼ彼等が創ったモノだ。


「さてと、ガンランス用のケースを渡しておくぞ。これに入れて持って帰れ。ついでに常に持ち運びが出来る様に、特殊なアクセサリを入れておいた。それは、ガンランスをしまえるようにしてある。取り出したい時は「出て来い」と念じろ。逆にしまいたい時は「戻れ」と念じればいい」
「本当に有難うございます。では、支度をします」
「じゃあ、荷物を持って空港に集合な」
「わかりました。では、一度戻ります」


ギーシュはリュウケツをケースに入れ、担ぎながら部屋に戻っていった。
俺は報告書を机の上に置き、重しを乗せて部屋を出て空港に向かった。
〜真紅狼side out〜


〜ギーシュside〜
部屋に戻った僕は、ここで学び、貰ったものを纏めて持ち帰ろうと部屋に帰ったら、バックが置かれていた。
おそらく、「これに入れて持って帰れ」というメッセージなのだろう。
本当にこの国の人達は………世話焼きだなぁ。
この気持ちに感謝しつつ、カタログや重り、陛下の手作りの竹食器を入れた。
そして、僕は最後に【獄銃槍リュウケツ】をケースの中に入れて、部屋を出た。
これほどの荷物、一カ月の前では絶対に持てないハズだったが、今では簡単に持てる。
むしろ、これでも軽いほうだ。
こうしてみると、鍛えた自分を実感できるのがよく分かった。
この国に滞在してたのはたった一カ月だったけど、濃くて深い一カ月だったな。長い様で短い日々だった。
僕は、この国で過ごした一日一日の思い出を思い返しながら、空港に向かった。


「お、ようやく来たか」


そこには、蒼騎陛下の他にも、カトレア様やリュオンさん、オウガコーチにクイラさん達がいた。
そして、陛下の使い魔であるタマモさんの姿を見つけると、僕はこの国で最後の仕事をした。


「あの………タマモさん」
「あら、お坊ちゃん。どうしたのかしら?」
「魔法学院の時の一件、申し訳ありませんでした!」


僕は深々と頭を下げた。
すると、彼女は………


「過ぎたことを謝るとは、貴方も変わりましたわね。………許してあげますわ。それと見直しましたわよ、ギーシュ」


今、僕の名を………


「……タマモもお前の事を認めたってことだよ」
「蒼騎陛下………」


彼女は小さな子狐となって蒼騎陛下の肩に乗った。
次に話しかけてくれたのは、リュオンさんとカトレア様だった。


「ギーシュ」
「はい、リュオンさん」
「基礎と応用の修行成功、おめでとう。だが、常に日々精進だ」
「はい。分かっています」
「また逢えるから、“さよなら”は言わないぞ?」
「ええ」


リュオンさんは、話す内容が終わったのか、後ろに下がった。
次にカトレア様が話しかけてきた。


「ギーシュくん、修行お疲れ様。君は元々、勇気があるんだからそれを蔑ろにしちゃダメよ? それとたった一カ月だったけど、貴方は今や立派なトルトゥーガ公国の国民でもあり、私達の家族よ」
「カトレア様、もったいないお言葉です。それと蒼騎陛下と末長くお幸せに」
「ふふ、有難うね♪」


カトレア様も下がり、最後に蒼騎陛下が前に出た。


「色々言ってきたし、俺が言うのは一つだけだな。………ギーシュ」
「はい」
「周りが何言おうがお前は―――――“自分の信ずる道を往け”」
「はい!」
「よし! では、ヴォルフガングに搭乗しろ」
「蒼騎陛下、そして皆さん。一カ月間、有難うございました!」


僕は乗る前に、もう一度頭を深く下げて、トルトゥーガを後にした。
〜ギーシュside out〜


皆、僕が変わった姿を見たらビックリするんだろうな。




―――あとがき―――
三話で修行風景を終わらせてしまいました。
まぁ、これで原作は進みますが。

“属性やられ”については、モンハンの仕様を取り込んでいますが、龍属性だけはアレンジしました。
ぶっちゃけ龍属性やられって、虚無に近いやられなんですよね。
やられている最中は、属性、状態異常が発動しませんし。

ギーシュが最後に「ビックリする」と言ってますが、ビックリどころではありません。
異変が起きますね、確実に。


では、新キャラの説明を。


名前:ゴルド
種族:ドワーフ
職業:鍛冶屋兼工房長

詳細:トルトゥーガ公国の“ゴルド工房”を開いた総代工房長。
日用品から武器まで幅広く製造している。
寡黙で喋ることは少ない。

次回は、ギーシュ視点から始まります。

-21-
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