小説『ハルケギニアに蘇りし紅き狼』
作者:大喰らいの牙()

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第二十二話  一カ月ぶりのトリステイン


〜ギーシュside〜
僕がトリステインに帰ったのは夜遅くで、守衛の人に一言入れてから男子寮に戻り、寝る前に自分の部屋を片付けた。
あちらの暮らしをこちらでも続ける為に、なるべく周りの人間を起こさない様に静かに作業し、簡易ではあるが片付け早めに就寝した。


早朝………


早朝六時………
僕は目が覚めて、いつものトレーニングを始めた。
ヴェルダンディーには、「トレーニングに行ってくるよ」と伝えると、眠たげに頷いていた。
僕は、マントを外して運動姿に着替えたら、両腕両脚に“グレートストーン”を付けて魔法学院の塀の周りを走る。


30分後………


入口まで戻ってきた。
息は上がっていないが、軽く汗はかいた。
その後、僕は後悔した。


「しまった………。ここはトルトゥーガじゃないから風呂がないじゃないか! このままじゃ気持ち悪いなぁ。考えてみたら、トルトゥーガに行くまで風呂は数カ月に一回だったココはもっと酷いな。………蒼騎陛下に頼んで大浴場建設してもらおうかな。今度の勉強時に頼んでみよう」


風呂場がないので、仕方がなく水場に行き、汗を流した。
上半身裸だが、その上半身には修業でついた傷がいくつも残っている。
それにしても、オウガコーチの太刀筋は読みにくかったなぁ。
気を抜くと一瞬で体に刃傷が付いてるんだから………いやぁ、今では良い思い出だ。
あらかた汗を流しきった僕はタオルでよく拭き取った後、上着を着て部屋に戻った。
部屋に戻ると、急いで窓を開けて風を取り込む。
そして、いつもの貴族の姿に着替えようと思ったが、やめた。
蒼騎陛下があちらで創ってくれた藍と黒のコートと黒のジーンズに着替えることにした。
貴族の姿は“公の場”だけにしようと思っていたのである。
これは、トルトゥーガに居て考えを改めたのだが、日常生活で貴族として威張ってもどうしようもないと思ったのだが、蒼騎陛下に感化されたとも言える。
蒼騎陛下曰く、『締めるべきとこで締めればいいんだよ』と言っていた。
なので、僕もそうすることにした。
おそらく、最初は皆僕の事を“変なモノ”として見るだろうが、それでも構わない。
蒼騎陛下は“自分の信ずる道を往け”と言ってくれた。


「………っと、蒼騎陛下に頼まれていたお土産をマルトーさんに渡さないと」


蒼騎陛下と別れる時に、「マルトーに渡しておいてくれ」とお土産を頼まれていた。
なんでもトルトゥーガにしか採れない食材だった。
僕は在国中に一度口にしたが、新たな好物の一つだ。
あと、ガンランスを収納しているアクセサリと杖代わりのブレスレットを持つ。………一応、杖も所持する。
そして、僕はヴェルダンディーと共に厨房に向かった。


「すみませーん!」
「………はい、なんでしょうか、貴族様?」
「マルトー料理長はいますか?」
「料理長! 貴族様がお呼びです!」
「………貴族様が私になんでしょうか?」
「あ、僕の事はギーシュと呼び捨てでいいですよ」
「そんな! 貴族様の貴方を呼び捨てなんて………!」
「……良いですよ。僕もトルトゥーガで一カ月ほど在籍しましたので」


そのことを言うと目を見開き、ニヤリと笑う。


「っていうことはァ、真紅狼に鍛えて欲しいと頼み込んだのはアンタか」
「ええ。色々と礼儀作法を厳しく叩き込まれましたよ。それでなんですが、陛下からお土産です」
「おお、悪いねぇ。こりゃ、食べ物か?」
「はい。あちらでしか採れない食材で筍と言うらしいです」
「ほう………筍ねぇ」
「あと、お米も入ってます。中に筍を使ったレシピがありますんで、それを使って僕だけ筍を使った料理を出してくれませんか?」
「ギーシュだけか?」
「おそらく、ルイズ達は“こんなの食えるか!”ってテーブルをひっくり返しますし」
「あー、そうなりそうだなァ。よし、いいだろう! ギーシュだけはこの料理を出そう! 全員分かったな!」
『はい、料理長!!』
「で、三食ってわけにもいかねぇだろ? いつだしてほしいよ?」
「今日は夜でお願いします。今後は、出して欲しい前日にこちらに寄りますので」
「おう。わかった」
「じゃ、失礼します」


僕は頭を軽く下げて、厨房を出ていこうとした時、料理長に呼びとめられた。


「おい、ギーシュ!」
「はい?」
「なんつーかよ、お前。カッコ良くなったぞ」
「……有難うございます」
「頑張って来い!」


再び軽く頭を下げて、食堂に向かった。
皆、僕の姿を見ると驚いたり、奇妙な目で見たりと様々な反応をしていた。


「おい、ギーシュ。貴族の証のマントはどうしたんだよ?」
「マリコンヌか。僕はあっちで考えを改めてね。本来“貴族”である姿になるまでは着ないつもりだよ。だけど、着なくてはならない公共の場では着るけどね」
「お前、頭大丈夫か? “貴族”の姿なんか、『魔法が使える』こと! これが正しい姿だろ?」
「………たしかに蒼騎陛下が嘆きたくなるのも分かる気がするよ。こんなんじゃいつまで経っても強くなれる気がしない」


一か月前まで僕もマリコンヌ側だった。
やっぱり蒼騎陛下に鍛えてもらう様に頼みこんだことは正解だったようだ。
別の視点から見れば、これはなんと無様な姿なんだろうか。


「ギーシュ。お前本当に頭大丈夫か? あの野蛮な国に行って洗脳されたのか?」
「いいや、マリコンヌ。僕は新しく変わったんだよ。……キミもそんな愚かな姿から変わることをお勧めするよ。実に酷い」
「……僕をバカにしてんのか?」
「そう聞こえたなら、被害妄想が激しいことで」


そう言い捨てて、マリコンヌ達を一瞥して離れた場所で食事を取ることにした。
食事が出てきて、ルイズ達は食事の前にいう“祈り”をブリミルに捧げていたが、僕はこの食事を作ってくれたマルトー料理長と農家の方々に感謝した。
僕が一人食事していると、両隣りにタバサとキュルケがやってきた。


「あら、ギーシュ。アナタ帰って来たの?」
「昨日の夜にね」
「………どうだった?」
「良い体験だったよ。あの国に行って、僕の人生の転換期と言っても過言じゃないね」
「それほど良い国だったの?」
「最高だよ! このハルケギニアで一番最高の国だ! 他の国とは比べる程も出来ないほど戦闘技術は高いし、魔法技術も高い」
「まぁ、貴方の姿を見れば、強くなったと言うのは感じられるけど………」


キュルケは、さほど興味を示していなかった。
トルトゥーガは見ているだけじゃあ、自分には伝わらない。実際に行き、体験することで伝わり、変わることが出来る。


「………ギーシュ」
「なんだい、タバサ?」
「貴方、もしかして系統が増えた?」
「ああ。土がライン、火のドット。それと水のドットを教えてもらったからまぁ一応スクエアってことになるのかな。………トリステインではね?」


トリステインでは“一応”スクエアだが、トルトゥーガではトライアングルだと僕は思う。しかも、トライアングルの中でも下の下だろう。
あそこは色んな魔法があるから、強さを示そうにも難しいモノであり、とにかく各部隊長のレベルを辿り着ければ、相当達人レベルだ。


「貴方が“スクエア”レベルまで引き上げられるなんて、どういう手を使ったのよ!?」
「………やることは全く同じさ。ただ、教えられ方が全く違うけどね」


キュルケは興味深そうに話を聞いていた。
僕は食事を終えると同時に腕に何重もの包帯を巻いているヤツが僕を呼び付けた。
彼は誰だっけ?
名前を忘れてしまったが、どうでもいいかな。


「おい、ギーシュ! 学院長が呼んでるぞ!」
「ああ、わかった」


僕は、「ごちそうさまでした」と小さく呟き、学院長室に向かった。
〜ギーシュside out〜


〜学院長side〜
朝起きると、グラモン家の息子が帰ってきた。
守衛の話によると、「夜に突然出現して、中に入ってきた」と守衛の一人が報告して来た。
そこで、ワシは彼をここによぶことにした。


コンコン………


『ギーシュです』
「入ってくれぃ」
「失礼します。………して、何用でしょうか?」
「うむ。キミはトルトゥーガに修業しに行ったようじゃが、どのような国なのじゃ?」
「それは、どういった質問なのでしょうか? 理由によっては答えかねます」


さすがに警戒してるの………。
本当ならワシも聞きたくないのじゃが、王室の連中がうるさくて仕方がない。


「キミが強くなるために向かった国じゃ。こちらとしてもそれなりにお礼を申し上げなくてはならないと思ってるのじゃが………「大丈夫です」………ギーシュ君?」
「僕がトルトゥーガに向かったのは自分自身で決めたことなので、国がお礼なんて、しなくてもいいです。ただでさえ、トリステインの国庫は逼迫する真似なんてしてどうします? 税を引き上げて間も無いのに、さらに引き上げますか。そんなことをしたら国民を苦しめますし、叛乱が起きますよ?」


ギーシュ君は、こちらの目論見に気が付いていたらしい。
しかもワシ等の足元を完全に把握している。
さらに、起こりうる未来を武器にしてくる所を見る限り、厄介な存在になったのぅ。


「………御苦労じゃった。何も言う事は無い、出ていいぞい」
「では、失礼します」


彼が部屋から出ようとした時、彼の服に気が付いたワシは呼びとめて訊ねた。


「ちょっと待つのじゃ、ギーシュ君!」
「まだ、なにか………?」
「キミ、貴族の証のマントはどうかしたのかね?」
「ああ、アレですか。あれなら、僕はしばらく着ません」
「どういうことかね?! 貴族の証であるマントを着ないなんて………!」
「僕が本当の意味で“貴族”らしい姿になるまで、着ないことにしました。僕はまだ未熟で、アレを着る資格がないから、着ないんです」
「………なら、キミが語る“本物の貴族”とは、どんな人をイメージしているのかね?」
「……僕はトルトゥーガに修業しに行ったんですよ? なら、誰をイメージするかなんて分かるじゃないですか。―――蒼騎陛下ですよ」


ギーシュ君の眼は「絶対にあの人の様になってやる」という決意の満ちた目だった。
ここの学院にいる教師、生徒達が誰一人見せたことのない目だった。


「そうか。今度こそ行ってよろしい」
「そうですか。改めて失礼します」


………これは、あの国を聞きだすなんてことは無理難題に等しいのぅ。
〜オスマンside out〜


〜ギーシュside〜
学院長の質問も難なく躱して授業に出ようと思ったが、時間から察するにほとんど終わりの方なのでサボることにした。
代わりに広場に出て、【獄銃槍リュウケツ】の熟練度を上げることにした。
呼び出し、右腕に楯が装着され、左手に銃槍を装備した。


「まずは、正面突き! もう一度、突き! そして、振り上げ!」


と、弾を装填しないで動作を体に染み込ませる。
それを何度も何度も繰り返していく………
しかし、こればっかりやっているのも意味がないので、次は装填した動作を行う事にした。
腰を深く構えて、弾を装填する。
「ガチャコン!」と弾が装填されると同時に重さが多少変わった。


「弾が入るとやっぱり弾の重さだけ増えるのか………普段からこの重さになれないとダメだな」


まず始めに砲撃のみ行う事にした。
砲撃のみの行動はこれが初めてではなく、一度だけ【通常型】で砲撃の練習をさせてもらい、砲撃の反動や砲撃を交えた攻撃方法もやらせてもらった。
だが、それはあくまで【通常型】のみでのことであり、これは【拡散型】なので砲撃の反動が全くもって違うだろう。
僕は、銃槍の柄近くにある引き金を引く。
すると、ボォン!と銃槍を震わせる音と共に【通常型】とは比べにもならない反動が僕の全身を襲った。


「くっ!」


吹き飛ばれそうになる体をなんとかこらえ、体勢を維持する。


「凄まじい反動だ。これはしっかり腰を落とさないと敵の前で吹っ飛ばされるな」


そしてそこからは砲撃を交えた動作をする。
突き→振り上げ→上段突き→砲撃→左に避けるそして振り上げ→上段突き×2………と、そこまで行き最後に砲撃を行い、ガンランスの特殊行動――“クイックリロード”をする。
「カチン!」と弾を一発だけ装填する技術だ。
“クイック”と言われているだけはあって、高速でリロードする。
その仕方は複雑な動きを要求する。
銃槍自体を大きく左回転させるのだが、回転始めにまず逆向きで銃槍を開き、弾を装填する準備をする。そして半分まで回したら弾を一発込める。最後に向きを整えながら構えるのである。
これに必要な技術は、手首と振り回せれるほどの腕力だ。
んでもって、“クイックリロード”の行動後はガードするか左右後ろにステップするか叩きつけ攻撃、もしくは叩きつけ後、砲撃する………と様々なことが出来る。


「最後に竜撃砲を撃ってみよう」


僕は腰を低く落として、銃槍に圧力が掛かる。
ギュウゥゥゥオォンという重低音が次第に高まり、そして爆音が辺り一帯に響いた。


ドンッ!


「うわっ!」


竜撃砲を放つと同時に襲い掛かってくる反動になんとか吹き飛ばされずには済んだモノの放った場所よりも数センチ程、後ずさっていた。
そして、銃槍の下の辺りが自動に蓋が開いた。
そこは、排熱蓋で竜撃砲で撃った後、銃身の中には高温の熱が未だに残っている為、放熱するようになっている。
この排熱蓋が閉じるまでは竜撃砲は連続して撃てない。
しかも、竜撃砲は普通の砲撃違って武器の斬れ味を大幅に落とすので『ここぞ』と言うべき場所で使うのがいいらしい。
陛下が言うには「タイミングを見極めろ」と言っていた。


「今日は取り敢えずここまでにして、斬れ味を元に戻そう」


懐から砥石を取り出して、綺麗に研ぐ。
すると、授業が終わったのか教師が先に出てきて、次に生徒達が出てくる。
だが、その生徒の大半がこちらに寄って来ていた。
どうやら……砲撃音の響きが教室まで届いていたらしく、その砲撃音の出所を掴むべく周りを見渡したら、それらしい原因を見つけたので寄って来た。というのがおそらく真相だろう。
人は寄って来るが、僕は研ぐ方が大事なので気にせず作業を続ける。
すると、視界の端に桃色のブロンドと金髪のロール、赤いロング、水色のショートカット、そして黒髪のツンツン髪と太っ……マリコンヌがこちらにやってきていた。


「おい、ギーシュ。なんだよ、その武器は?」
「………話しかけないで欲しいな、マリコンヌ。今、僕はこれを研ぐのに集中したいんだ」
「………さっきから外で爆音が聞こえけど、その武器の仕業か?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・(シャリシャリッ」


僕は無言で答えた。
答えること自体が今では邪魔な行動に等しいからだ。


「おい、聞いてんのかよ!」
「・・・・・・・・・・・・・(シャリ……シャリ……」


なにかが喚いているが、気にせず研ぐ。
あと少しで無事終わる。
すると、先程からそっけない答えを貰っているマリコンヌは業を煮やしたのか、せっかく研いだ部分の銃槍を踏みつけたのだ。


「何すんだ!? せっかく綺麗に研いだ部分を………!!」
「答えない方が悪いだろう!」


おっと、いけないいけない。
こう、すぐに怒ってしまっては人付き合いに影響が出てしまう。
怒る時は静かに、仕返しする時は派手に。
もちろん、この教えも蒼騎陛下から教わったモノだ。


「……これだから、キミは色々とダメなんだ」
「………なんだと?」
「キミは人がしてる行動を待つと言う事は出来ないのかい? “貴族”としてどうかと思うがね」
「………ギーシュ、お前はこの僕が“モテない”だと!?」
「どこをどうしたら、そう聞こえるのか……是非とも御教授してもらいたいんだが?」


あくまでも冷静に聞いたつもりなんだが、マリコンヌの怒りは止まらず、逆に答える度に怒りのヒートアップは増加していった。
そして、つい衝動でマリコンヌは拳を振り上げてきた。
女子生徒は、この後起きる出来事に顔を覆ったが、僕はマリコンヌの貧弱な拳を簡単に受け止めて、足払いを掛けて仰向けさせるようにすっ転ばした。


「ふんぎゃっ!」


悲鳴もある動物を思い浮かべさせるようなもので、いよいよ危ないなと思った。
周りの女子生徒は自分達が思っていた結果とは違う声が出たので、おそるおそる見てみると「あれ?」と首を傾げていた。


「マリコンヌ、僕はトルトゥーガに行って修行して来たんだから、今までの僕とは違うことぐらい、予想できなかったのかい?」
「こ、このっ……! 腕っ節が強くなっただけで威張るなよ!」
「威張っているつもりはないんだが………まぁいいや」


僕は【獄銃槍リュウケツ】をアクセサリの中に収納し、砥石をしまった。


「キミは僕の事が気にいらないみたいだし、さっきから僕の武器を欲しがりそうな視線も受けているから、ここからいなくなろう」


その欲しがりそうな視線を出している者―――桃色のブロンドで傍らに人間を使い魔にしている女子生徒は僕に言われたことに気が付き、咄嗟に視線を外すがもう遅い。
蒼騎陛下が言ってたっけ………?


『我が侭お嬢様は他人の物を欲しがる駄々っ子だ』


って。
気を付けないとたかれそうだな。
ルイズはどうしようもないほどの典型的な貴族だ。
由緒正しいなど言われているが、中身を開けてみれば、ガキそのモノだ。
他人に迷惑を掛けていることを気が付かないし、自分のする行動は全て正しいと思っている。
非常に性質が悪い。


僕はキュルケとタバサ以外の三人を一瞥し、昼食を取ることにした。
マルトー料理長がおまけで僕だけ別のモノを作り、出してくれて食事が終わった後一服していた。
すると、向こう側から女子生徒数名が押し掛けてきたのだ。
その中には一年生のケティも居た。


「あのギーシュ様!」
「ん、なにかな?」
「さきほどの行動、カッコ良かったです!」
「あんなのは、普通じゃないかい?」
「私たちじゃ、あんなのは出来ません! それに以前のギーシュ様よりも今の引き締まった方が断然いいです!」


周り女子も「そうそう!」と頷いていた。


「そこで私達、ギーシュ様のファンクラブを創ったんです!」
「……ファンクラブ?」
「はい、ファンクラブ! 名前は『ギーシュ様親衛隊』です!」


そして、きゃあきゃあと喧しく騒ぐ女子生徒達とは余所に向こう側から湯気が立つほどの怒り状態のマリコンヌが僕の前までやってきて、杖を掲げてきた。


「決闘だ、ギーシュ!!」
「……キミがここまでバカだったとは、呆れたな」
「その調子に乗った顔を殴り飛ばしてやる!」
「いいだろう。生半可な修業じゃなかったことをキミの体に叩き込んであげよう」
「ヴェストリの広場に来い!」


あ、なんかデジャブを感じる。
だが、一つだけ違う点と言えば、マリコンヌが見栄を張ってマントを翻しても男子生徒がほんの僅かついていくことだった。
そして、僕はマリコンヌの後についていく。
〜ギーシュside out〜


陛下、ちょっとばっかし変わり過ぎたようです。



―――あとがき―――
ギーシュが色んな意味で紳士になりました。
紳士と言っても、“崖下”や“変態”の意味じゃないですからね?
それと、ギーシュとくっつけるのは定番はモンモランシーですが迷ってます。
テンプレ通り、モンモランシーかそれとも一年生のケティにするか………迷いますねぇ。

今回はギーシュ回。
次回もギーシュ回です。
ギーシュ回が終わったら、そろそろ“アルビオンの内乱”に入ります。
蒼騎クオリティが炸裂します。

それと、この“ハルケギニアに蘇りし紅の狼”がアットノベルス殿堂入り小説に認定されました!
いや、なんか、認定される三日前までは『俺も認定されてぇなぁ』と思ってたんですが、まさか認定されるとは………今後も頑張って行きますのでよろしくお願いします。

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