小説『ハルケギニアに蘇りし紅き狼』
作者:大喰らいの牙()

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第二十三話  vsマリコンヌ

〜ギーシュside〜
ヴェストリの広場には、前の僕みたいに暇を持て余したクラスメイトが集まってきていて、それぞれ野次を飛ばしていた。


『キザになったギーシュをブッ飛ばせ』
『キャー! ギーシュ様カッコいいーー!!』


と、男子はマリコンヌを応援し、女子は僕を応援する構図にいつの間にかなっていた。


「で、マリコンヌ。やるなら、早くしてくれないか? この後、自主訓練のメニューがあるんだ」
「この………っ! 僕をバカにしやがって!!」
「やらないなら、帰ってもいいよな? そんじゃ………」


僕はいつまでたっても始めないので、背を向けてこの場から去ろうとするとマリコンヌは反射的に杖を抜き、エア・ハンマーを僕に放つ。


「くらええぇぇぇぇ!!」


今までの僕ならあたふたして、そのまま無様にやられているかもしれないが、今の僕は違う。
僕は慌てることなく、杖を抜いたフリをして防御用“戦乙女”(ヴァルキリー)をエア・ハンマーが当たる直前で生成する。
トルトゥーガでは基礎しか教わっておらず、スタイルとかは僕以外にも訓練していた人達を見て僕なりにアレンジして創りだした。
ゴーレムを作れる数を極端まで減らして、最終的に二体までにしたがその代わりに、形、強さ、強度といった他の部分を強化した。
ゴーレムを二つにしたのには理由が二つある。


一つ目は、さっきも言ったように数を減らして他の部分を強化すること。


二つ目は、攻撃用と防御用の二つに分けること。


つまり、『多く作ってその内何体かを攻撃に回す』というのではなくて、二つの内一つは攻撃用、もう一つは防御用とすでに役割を決めておくことで、操作ミスを減らすことにも繋がる。
それと攻撃用と防御用は姿形が一部だけ違う。
攻撃用は、剣と小さな盾を装備しているが、防御用は両手で持つほどの大盾を装備させている。
よって、マリコンヌのエア・ハンマーを受けているのは防御用の“戦乙女”(ヴァルキリー)だ。
そして、マリコンヌは突然出現したヴァルキリーに驚いていた。
不意打ちとはいえ、確実に当たったと思われる魔法をいとも簡単に防がれるとは思わなかったのか、口をあんぐり開けていた。


「ぼ、僕の渾身のエア・ハンマーが……………」
「アレで、“渾身”とは………魔法とはこういうことを言うんだ」


僕は杖を引き抜き、誰も居ない方に杖を向けて教えてもらった魔法を唱える。


「“ストーン”!!」


ズガガガガガガガッ!!


唱えると大地が隆起し、そこから土が押し固まり巨岩のように盛り上がっていった。


「こ、これが魔法だなんて、ぼ、僕は知らないぞ!?」
「それはそうだよ、トルトゥーガでしか教わらない魔法だ。それに魔法は精神力で威力や規模が変化するらしいから、もっとメンタル面の強化した方がいいよ」


そういうとマリコンヌは座りこんでしまった。


「その行動は………負けを認めるということで構わないよね?」
「……………〜〜っ! 参った」
「やれやれ、無駄に疲れたな」


僕に周りの視線が突き刺さっていたがさほど気にすることも無く、その場を離れることにした。
その後をファンクラブの子が数人付いてくるのを感じ取った。


「キミたち、僕はこれから自主訓練をするからついて来てもいいことは一つも無いよ? さらには面白いと言う事でもないし」


すると、ファンクラブの子は………


「いいんです! ギーシュ様のお近くに居たいんです!!」
「そうです! 鍛えている所のギーシュ様を見たいし………」


と、なんだかんだな理由を付けられて、修行場までついて来てしまったのである。
まぁ、邪魔してこないし………僕はファンクラブの子たちを端の方においやり、午後の自主訓練を始めた。
〜ギーシュside out〜



場所は変わって………



〜真紅狼side〜
俺がいつも通り書類に判子を押していると、俺宛個人の書通が届いていた。


「差出人は………おや、シャルルか。なんだろ?」


俺は封を切って、中身を読む。
そこには、こう書かれていた。



『前略
どうも、真紅狼。最近いかがかな?
こちらは仲良く元気にやってるよ。そしてついに兄さんにも第二夫人が出来たんだ!
と、まぁこちらの身の上話はこれくらいにして、今週の終わりに僕の領地にある湖………ラグラドリアン湖でちょっとしたパーティーをやろうと思っているんだが、参加しないかい?
もし、良ければ返事を書いて送って欲しい。
                         シャルル』


遂にジョゼフが喰われたのか………。
簡単に場面が想像できる。
俺の見立てでは………おそらくシェフィールドは底なしっぽいな。
っと、返事返事。
カトレアにも聞いてみよう。


「カトレアー」
「はいはい、呼んだ? ルゥちゃん」
「うん、呼んだ呼んだ。シャルルからさ、お茶会パーティーに誘われたんだけど、行く?」
「面白そう♪ 行きましょ!」


カトレアは満面の笑みで返事を返す。
………ヤバイ、可愛過ぎる。
しかも、カトレアは俺の後ろに回って、ぎゅ〜〜っと抱き付いてきた。


「ん、どうした、カトレア?」
「ルゥちゃんに抱き付きたくなったの………ダメ?」
「好きなだけどうぞ………」
「うん♪」


俺は、この状態でクロ達を呼んだ。


『真紅狼さん、呼んだッスかーー?』
「おーう。クロ達、御苦労さん。あのなー………」


俺は手紙の内容を伝えて、「クロ達もいかないか?」と聞くと『週末の仕事とかどうするッスか?』と訊ねてきたので「その日だけは仕事をしなくていい様に御触れを出す」と返事をしたら、全員が『行くッス!』と答えたのでプリニー隊も参加することとなった。
その後、タマモ、リュオン、ライフェン、カイザー、ルクス、クイラ、ルクスにも報せて内容を話すと、全員が参加を希望したので大人数になってしまったが、手紙に参加する人数を書きこんで、ルクスに配達してもらった。
ちなみに、俺の姿を見て全員がニヤニヤしていたが、クイラがある一言を言ってからカトレアが意識し始めた。


どんな一言だったかは、読者の皆様にお任せしよう。
俺は言わん。
そして、その為にも今週の週末は、『全員のお休み!』の御触れを創った。
ライフェン達にはそれを配ってもらい。
俺は今日の仕事を終えることにした。


「そんじゃ、ライフェン達は隊員と国民にそれを配ってやってくれ」
『了解!』
「俺は夫婦そろって昼寝するから」


ライフェン達が出ていった後、カトレアを抱えて仕事部屋を出て、風が良く通る縁側に向かい優しくカトレアを降ろすと俺は枕を二つほど持ってきた後、カトレアの頭をそうっと持ち上げて、枕を素早く敷いた。


「タマモ」
「ここに………」
「お前も一緒に寝るぞ」
「………いいんですか?」
「当り前だろう、お前も家族だぞ?」
「真紅狼様。本当に私は貴方を愛しております」
「まったく、感激の表現が大げさだな、オマエは………」


カトレアと俺の間にタマモは入って、三人揃って昼寝をした。
〜真紅狼side out〜


風が気持ちいいな。



―――あとがき―――
ギーシュが今よりモテている状態です。

次回から“アルビオン内乱”に入っていきます。
といってもまずはじめに“きっかけ”を創る所からですけどね。
ヒャッハー、新しい獲物だーー!!

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