小説『ハルケギニアに蘇りし紅き狼』
作者:大喰らいの牙()

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第二十四話  お茶会 〜ガリアside〜


〜真紅狼side〜
週末になり、お茶会だけど派手な服装ではなく、いつもどおりの服装で向かう。
行く前に俺はある事を思い、進路をトリステイン魔法学院に向けた。


「クイラ」
『はい、陛下』
「寄り道したい。トリステイン魔法学院に進路を取ってくれ」
『了解しました』


クイラとの通信が終わると今度はカトレアが質問して来た。


「なんで、魔法学院に行くの?」
「ギーシュも誘おうと思ってな………」
「……いいのかしら、関係者じゃないのに?」
「大丈夫だろ。多分、シャルル達も同じことをやってると思うぞ?」


おそらく、自分の愛娘二人を呼び寄せてると思うんだよね。
親バカだからなぁ、アイツ………
そうこうしてるうちに、魔法学院の近くに来ていた事をクイラがアナウンスで知らせてきた。


「そんじゃ、ちょっと行ってくるから、即離脱出来るように待機状態で待ってろ」
『わかりました』


俺は昇降口から飛び降りて、塀の中に着地する。
門から入ると一々が面倒だから、避けるんだよ。
俺は素早く移動して、ギーシュを探す。すると、すぐ近くでギーシュの声が聞こえてくる。


『………やぁっ! はぁっ!』


そちらに向かうと、【獄銃槍リュウケツ】を振りまわして鍛錬していた。
おお、やってるやってる。
一段と上手くなってんじゃん。
………っと、見てるんじゃなくて、声を掛けないと。


「おーい、ギーシュ」
「蒼騎陛下!? ど、どうしてココに?!」
「上から飛び降りてやってきた。で、それは置いといて、この後、オマエ暇?」
「え? え、あ、はい。授業も終わったので暇ですけど………」
「よし! お茶会に行くんだけど、来ねえ?」
「お茶会ですか? 良いんですか?」
「構わねぇよ。多い方が楽しいさ」
「じゃ、じゃあ、ご一緒させていただきます」
「そんじゃ、すぐに支度してくれ。すぐに向かうから」
「分かりました!」


ギーシュは駆け足で寮に戻り、使い魔のヴェルダンディーを部屋に置いてきた後、俺がトルトゥーガで修業時に渡した黒のジーンズと藍のコートを着て再び戻ってきた。


「準備できました!」
「じゃあ、俺の背中に捕まってろ」


背中に捕まったギーシュを確認した後、俺はその場で一気に跳躍して10m以上ある塀を軽々と超えて、クイラ達が待ってる場所まで駆けた。
辿り着くと同時に昇降口が開き、俺達は勢いを落としつつ中に乗り込む。


「クイラ、出してくれ」
『了解しました』


ギーシュを背中から降ろしてから雑談やら何やらしてるうちに会場のラグラドリアン湖に着いた。


「あれ? ここって、ラグラドリアン湖ですよね? ここでやるんですか?」
「おう。先に客人達が待っているんだよ」
「客人ですか? 一体………」


ギーシュは「誰ですか?」と俺に問おうとした時、向こう側から野太く、かつ豪快な声が響く。


『おう! 真紅狼! こっちだ!』


その声の主を見て、ギーシュは驚いた。


「アレって、ガリア王国のジョゼフ王ですよね!!? えっ、どういうことですか?!」
「うん、そうだよ? 今日ね、ガリア主催のガリア、トリステイン、トルトゥーガ、アルビオンのお茶会をやるんだよ」
「聞いてないですよ!?」
「うん、言ってないし。お茶会しか言ってないからね」
「完全に部外者な気がすると思うんですけど………」
「大丈夫じゃね? どこぞの親バカが自分の娘、呼び寄せていると思うから」
「誰です、それ?」
「着いたら分かるぞ。あと、豹変してるから気をつけろよ」
「………というか、こんな姿でいいんですかね?」
「大丈夫だろ、俺達も普段着だし、問題ねぇよ」
「いや、それはそれで問題なんじゃ………?」


ギーシュは一人で自問自答している所にカトレアが優しく肩に手を置いて………


「ギーシュ君、もうそのまま流されていった方がいいわよ」
「………そうッスね」


ギーシュも開き直っていた。
カトレアとギーシュが別の意味でポジティブになっていったな。
〜真紅狼side out〜


〜ギーシュside〜
ジョゼフ王の元に辿り着いた僕達は、そこでは想像がつかないほどの煌びかさと優雅さで埋め尽くされていた。


「おう、真紅狼、よく来てくれたな」
「うっすうっす。どうよ? 最近の調子は?」
「………まぁ、調子はいいぞ。表はな………」


なんだろう、先程の声と違って歯切れが悪いな。


「なるほど、やはり俺の思った通りか………シェフィールド、すげぇんだな?」
「凄いとモンじゃない! 搾り摂られたよ………文字通りな」


そう言うと真っ白くなっていた。
何かをやり遂げた様な表情をしている。


「まぁ、頑張れ」
「ああ………。ところで、こちらの少年は?」
「ああ、コイツね。ウチに修業を頼んできた青年。弟子みてぇなもん」
「ジョゼフ王、お初にお目にかかります。僕の名は、ギーシュ・ド・グラモン。トリステイン魔法学院所属三年生であり、トルトゥーガ公国“銃突隊”に所属しています」
「そんなに畏まらなくてもいいぞ。俺の事は第三者がいない時はジョゼフと呼び捨てで言い………いや、そうしろ。これは命令だ」


いきなりジョゼフ王から、「呼び捨てで言い」と言われても思考が追い付かない。
すると蒼騎陛下が助け船を出してくれた。


「まぁ、ジョゼフ。ギーシュもこういう場所は初めてだし慣れていないんだ。慣れるまで我慢してくれよ」
「む、そうなのか? なら、仕方がないな」


他国の王同士なのに、呼び捨てで………まるで友達関係で呼んでいて友好関係は大丈夫なのだろうか。


「あの………」
「なんだ? どうした、ギーシュ?」
「お二人は他国の王……ですけど、そんなに軽い呼び捨てでいいんですか?」
「別になぁ?」
「だよなぁ………」
「「互いが気を許してるからいいんじゃね?」」


二人同時に言葉を放った。しかも同じセリフを………。
その時、ジョゼフ王の後ろから新たな人影がやってきた。


「兄さん!」
「シャルルか。真紅狼達が着いたぞ。それと彼はギーシュ。トリステイン魔法学院の生徒らしい」


ジョゼフ王の弟君、シャルル外務大臣であった。
彼の隣には夫人と彼と夫人の御令嬢が………って!!


「タ、タバサが二人!?」
「ギーシュがなんでココに居るの!?」
「ぼ、僕は蒼騎陛下に誘われて………」
「私は、お父様に呼ばれて………」


僕とタバサはお互いの顔を見合って、疑問を持った単語を復唱した。


「“お父様”???」
「“誘われた”???」


そして僕達は蒼騎陛下に向いて質した。


「「蒼騎陛下/真紅狼!! どういうことなの/ですか?!」」
「そこで俺に振るのかよ。まぁいいや、疑問に答えようかね」


僕とタバサは、答えを待った。
〜ギーシュside out〜


〜真紅狼side〜
二人に質されて、俺は二人の質問に答えることにした。


「じゃあ、まずギーシュから。まぁ簡単に言えば、経営と経済の勉強をしてるんだし、取引相手がいずれ他国の王族との取引をするかもしれないだろ? だから、こういう場に呼んで、面識や繋がりを創っておけば後々役に立つと思ってな。次に………あー、タバサ本名でいいか?」
「別にいいけど………」
「シャルロットの質問については、ぶっちゃけ面白そうだったからかな。ギーシュを連れてくれば何かしらの出来事は起こると思っていたから。あと、ギーシュの質問に二つ答え忘れていたんだけど、さっきも言ったようにタバサは偽名でシャルロットが本名だ。で、もう一つはシャルロットとジョゼットは双子なんだ。一卵双生児ってやつだな。見極めるのはかなり難しいぞ」


そう説明すると、いつの間にかジョゼットの姿が無かった。


「し〜〜ん〜紅狼っ!!」


後ろから声がしたあと、背中に誰かをおぶっていた。


「うおっ! ジョゼット、オマエな………」
「えへへ〜〜、真紅狼は大きいなぁ♪」
「ジョゼット、もう少しお淑やかにだな………」
「だって、最近、真紅狼会いに来てくれないじゃない」
「おいバカ止めろ。勘違いされるだろ!」


さっきからシャルルの目がこわーい。
あ、ちなみに親バカとはシャルルのことだ。
娘二人産まれた時は、メッチャはしゃいだらしい。
この二人が思春期になった時が面白そうなことになることは間違いない。


「ジョゼット、降りなさい。蒼騎陛下が困っているでしょう?」
「はーい。イザベラ従姉ちゃん」


ロングで髪をカチューシャで留めている少女がジョゼットを窘める。


「おー、イザベラか」
「お久しぶりです、蒼騎陛下」


イザベラはジョゼフの娘でシャルロット達の従姉だ。いや、今も姉だが、いずれは本物の姉となる。
理由は簡単。
シェフィールドがお腹をさすっている辺り、おそらく………


「おう。イザベラは前より綺麗になったな。モテるんじゃねぇの?」
「私なんかまだまだ………」
「いや、しかし………時の流れは早いねぇ。つい、この前の事がつい最近に感じるよ」
「蒼騎陛下は、相変わらずお変わりないですね」
「こんなナリして、実年齢700歳越えだぜ? 肉体年齢は20代後半だけどな」
「ところで………イザベラは妹が出来ると嬉しいか?」


この質問をした瞬間、ジョゼフが声を上げた。


「ちょっ!! 何を言い出すんだ、真紅狼!?」
「そうですね。私もシャルロットの様に妹が欲しいです」
「………だそうだ、頑張れジョゼフ」
「その心配はありませんわ、イザベラ様」
「どういうこと、シェフィールド?」
「先程、水の治療士が私の所にやってきて………………授かったそうです」
「えっ」←シェフィールド以外
「ジョゼフ様との愛の結晶が出来ました」


マジか………。


「イザベラ、夢叶ったな」
「叶っちゃいましたね………」


イザベラはあまりの出来事に苦笑していた。
苦笑したくもなるか。
それにしてもすげーなガリア王国、跡継ぎいっぱいじゃん!
読者の皆さんも「お前も凄いだろ!」と思った方も居るだろう。





当り前だ!!
自分でも理解しているよ………。
おそらく“真恋姫”を確実に超えるね、こりゃ絶対に。
ヤバいッスよ!


「そういう真紅狼は作らないのか?」


ジョゼフは反撃に出たが、その反撃は俺には効かぬ!!


「んにゃ、作るよ? ただ、最近はホラ………何かと物騒な噂が流れているからよ。平穏になってからかな、と思ってよ」


俺は話しながら隣に居るカトレアを自分の方に抱き寄せる。
そして、視えない様に背中をなぞると俺の耳元で「あっ…///」と甘い声を微かに呟く。
そのあと、俺の顔を一度見た後再び耳元で小さく、「ルゥちゃんのえっち///」と顔を赤くして呟いていた。
あーもう、本当にカトレアは可愛いなぁ!!
すると、そこで爆弾発言が飛ぶ。


「ねぇ………真紅狼」
「ん? どうしたよ、ジョゼット?」
「私ね………」
「あ、ヤな予k………」
「将来、真紅狼と結婚したい!!」


その瞬間、この場に居る男性陣は飲んでいる飲み物を噴き、ジョゼットを除く女性陣は咳きこんでいた。


「え、ちょっ、ちょっと待ってくれ。ジョ、ジョゼット、も、ももももう一度言ってくれ。誰が誰と結婚したいだって?」
「真紅狼さん、取り乱し過ぎです。こほっ………」
「いやいや!! カトレアは落ち着き過ぎだろ!? さすがにこれは俺でも取り乱さずにはいられないぞ!?」
「だって、真紅狼さんに想いを告げたい女性なんてたくさんいるんですよ? それぐらい察知できますし、真紅狼さんなら一夫多妻なんてあり得そうでしたし」
「それ………誰の主観?」
「本妻の主観です。まぁ、誰もが本妻になりますけど………」
「Oh・・・orz」


本妻の主観………SUGEEEEEEEE!?
すると、咳きこんでいたイザベラがようやく喋られるようになったのか、声を上げた。


「ちょっと、ジョゼット! ぬけg………ッ!!」


俺はすぐさまイザベラの方に顔を向けると顔を赤くして、俺の視線を逃げた。
イザベラ………お前もか!!


「オウフ………ちょっと、これsyレにならんでしょ!」


すると、後ろから凄い力で肩を掴まれた。


ガッシリ!!


「………真紅狼、ちょっと話し合い(物理)しようよ」
「OK.落ち着け。“将来”だぞ! “将来”!! この先考えが変わるかもしれないだろ?!」


シャルルの握力が尋常じゃねぇ!!
さらに事態は悪化した。


「違うもん、決めたことだもん!!」


ヤメテ!
これ以上、事態を悪化させないで!!
じゃないと俺の命が………!! 色んな意味でカルマッハになるから!!


「………真紅狼。ちょっと湖の畔に行って、頭冷やそうか」
「それ、違うキャラのセリフだろ!!」


俺は意見も聞きいられずに引っ張られていった。
ちくしょう、やってやるよ!!(泣)
〜真紅狼side out〜


〜カトレアside〜
ルゥちゃんがシャルルさんに引っ張られて行ってから、私達はそちらの方に耳を向けた。


『さて、真紅狼。何時、僕の可愛い愛娘を口説いたのかな?』
『口説いてねぇーーーー!!』
『嘘をつくな! なら、なんでジョゼットがあんなことを言いだすんだ!』
『知らねーよ!! むしろ、俺が聞きたいわ!!』


そこから互いの拳が出始めているが、それを互い避けあっている。


「………ところで真紅狼は作る。と言っていたが、カトレアはどうなんだ?」
「“子供が欲しい”って言い始めたのは私ですから、あそこまで堂々と言われるとちょっと恥ずかしいです///」


ジョゼフ様は、「そうか」と一言言った後、私もここ最近耳にした噂を訊ねてみた。


「ジョゼフ様」
「なんだ?」
「ここ最近耳にしたのですが、アルビオンで内戦が起こり始めていると聞いたのですが………」


すると、表情が真剣になり始め、夫人も気を利かせてくれたのか少し離れてくれた。


「うむ。アルビオンでは今二つの勢力が存在しているらしい………。一つは王権側、つまりジェームズ一世とここに来ているウェールズ・テューダーの勢力、それに対立しているのが貴族側。彼等は自身の事を“レコン・キスタ”と称し、彼等は王政権を打倒したいそうだ。………だが、奴等の狙いは王政権ではない、それはただの過程にしか過ぎないらしく、本来の目的は“聖地”を取り戻すらしい」


“聖地”の取り戻す―――ということは、エルフの人達を戦うということになるわね。


「トルトゥーガにはエルフも住んでいるんだったな」
「はい。それを聞くとちょっと複雑ですね」
「まぁ、真紅狼のことだから国に配慮すると思うが、アルビオンは浮遊国だ。特定の軌道を周回する為、内乱の結果次第では貴族派の連中が侵略してくるかが決まるな」
「まぁ、その辺の事も真紅狼さんは頭の中で考えていると思います」
「そうだな。こちらも対策はするつもりだ」


そう話し終わった後、再び裏の方に耳を向けてみた。


『………この天然女誑しがぁぁぁ!!』
『うるせーよ! この親バカがぁぁぁぁ!!』


ドカッ!
バキィ!
ドゴォン!


もはや話し合いではなくて殴り合いね。
まぁ、楽しいならいいかな。
〜カトレアside out〜


仲が良いことで。



―――あとがき―――
【アルビオン内乱編】の最初のお話、お茶会となりましたが今回はガリアside側のお話です。
次回はトリステイン、アルビオンsideの話です。………短いですけどネ!

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