小説『ハルケギニアに蘇りし紅き狼』
作者:大喰らいの牙()

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第七話  亡命と救出


〜真紅狼side〜
満月の晩………


俺はいつもの姿、黒コートに黒ズボン、右太腿あたりに“真紅の執行者”を収めて、エアドックのバルコニーにいた。
バルコニーの下は断崖絶壁で、落ちたらまず助からない。
俺は出発準備が出来るまで、ここでこの世界の月を眺めていた。
こういう時、マフィアのボスなんかが煙草を咥えながら月を眺めていたら、カッコいいんだろうな。


「……王よ、準備が出来ました」


後ろから、クイラが出発準備が出来たことを知らせに来た。
俺は一度目を閉じ、気持ちを入れ替えた。


「………行くぞ、クイラ。仕事の時間だ」
「………イエス、ボス!!」


クイラの昔の口癖が出ていた。
クイラは女性でありながら、傭兵の仕事をしていたが、仕事が終わり家に帰ってきたら家族が全員死んでいた。
その後、家族を殺した連中を突き止めたら、なんとその近くに住んでいたトリステインの貴族だった。
一度は、復讐しようと思ったらしいが圧倒的な戦力差に勝てず、自身も追われる羽目となった時にウチに来た。
それ以降は、ウチの輸送部隊の部隊長と飛空挺の教官を担っている。


「全員、敬礼!」


クイラの声で、敬礼をする。


「全員、今日やることは分かってるな?」


俺の問いに全員は頷いた。


「よろしい。見敵必殺!! 襲ってくる敵は全員ブチのめせ!」
『イエス、ボス!!!』


そして、俺達はエクリプスに乗り込み、アルビオンに向かった。
〜真紅狼side out〜


〜大公side〜
今日は、約束の日だった。
あの日から七年………七年が過ぎた。
七年も経てば、子も産まれ新しい家族が増えた。
女の子が生まれ、名をティファニアと名付けた。
幸せな半面、かなり厳しい状況になってしまった。
期限が三年以下になった時、兄は私達の家の周りに監視兵を送りこみ、私達を見張りだした。
さらに、悪い状況が立て続けに続いた。
カルロフが理由もなしに投獄されたのだ。


「くそっ、兄上め………!」


約束の日は来てしまったし、彼が捕まったことを彼等は知らない。
取り敢えず、私達は逃亡する準備を始めた。
この七年間、いらない家具は全て売り払い、金を貯めた。
そして、月が一番高い所まで来たところで、外が一瞬だけ騒がしくなったがすぐさま、音が消えた。


コンコン………


扉を叩く音が二回………、あの時と一緒だった。


「……誰かね?」
『蒼騎 真紅狼です。お迎えにあがりました』
「………見張りの兵はどうしたのかね?」
『それなら、既に沈黙させてます』


私は扉を開けた。


「久しぶりだな、蒼騎殿」
「ええ、お久しぶりです。大公、周りの監視者は倒しましたが、すぐに異変に気が付くでしょう。出れますか?」
「数人程、荷物を運ぶのに手伝ってくれないか?」
「荷物運びに手伝う班と大公達を安全に送る者達で別れて動け。時間が無い、早くしろ」
「了解」


私達は、彼の部下に案内されながら飛空挺に向かうが、その前に………!!


「蒼騎殿!」
「なんですか、大公?」
「カルロフが投獄された! 彼は今、ニューカッスル城の地下にいる!!」
「くそ、面倒になった!」


彼は驚き、数人と話しあっていたが………こちらを向いた。


「本来なら、サウスゴータ家と大公御一行は別々に乗ってもらう予定でしたが、事態が事態なので、申し訳ありませんが一つの飛空挺に全員のってもらいます。よろしいですね?」
「彼を………彼を助けてくれるのか?!」
「約束事は必ず護ります。俺のルールの一つです。―――クイラ」


彼は、飛空挺の船長と話をしていた。


「では、大公。これから大公達を乗せたこちらの飛空挺はこれよりトゥルゥーガに向かいます。私と数人の部下でニューカッスル城の牢屋まで行き、カルロフ氏を救出しますので、ここでお別れです」
「………頼む、彼を助け出してくれ」
「………クイラ、行け! 連中がやって来る!!」


クイラと言われた女軍人は、発進させ私達をトゥルゥーガに連れていった。
〜大公side out〜


〜真紅狼side〜
俺は、クイラ達が行った事を確認した後、俺と残った部下で作戦を立てた。


「ボス、どうします?」
「俺がスパッと侵入して、カルロフを救出。そいて脱出だ、リン」
「では、私達は合図を待ってボスを回収ですね?」
「そうだ。では、延長戦の始まりだ」
『了解!』


俺達もニューカッスル城に向けて、発進した。
潜入モードに操縦を切り変え、ニューカッスル城の上空に俺達は今いる。


「リン」
「はい」
「合図したら、高速降下した後、俺達を回収しろ」
「了解しました。合図は?」
「昏く蒼白い雷が落ちたら、合図だ」
「分かりました。御武運を」
「じゃあ、行ってくる」


俺はエクリプスから降りる。
屋根にうまく着地出来た俺は、次から次へと立っている屋根より低い屋根に飛び移って、下に向かう。


ザッ・・・・


「!!」


俺は、急いで物陰に隠れる。


『………今日は、良い月だ』
『ああ、月を見ながら酒を飲みたくなるぜ』
『さっさと、巡回を終わらせたいぜ……』
『そう、ボヤくな。あとは、牢獄だけだ……行くぞ』
『……そうだな』


ザッ・・ザッ・・・ザッ・・・・


去ったか。
だが、チャンスだ。
手間が省ける。
俺は気付かれず離れずの距離で後を付けた。
〜真紅狼side out〜


〜カルロフside〜
ぴちゃんっ・・・!


漏れる水音が響き渡る。
投獄されてから半年……………今日は大公様達と私達の家族の亡命の日だが、無事に亡命できただろうか。
それだけが、心配だった。
最悪、自分が処刑されても家族と大公様達が生き延びてくれれば、それだけでいい。
その時だった………巡回の二人組の衛兵が見回りに来た。


カツーン・・・カツーン・・・・・


『どうだ、何か問題はあるか?』
『いや、ない。さっさと帰ろうぜ』
『ああ、そうしy………なんだ、貴様h………「寝てろ」……がぁ!?』
『貴様、何者だ!!』


衛兵は笛を鳴らそうとするが、それよりも早く謎の人物が小型の鉄の筒らしきものを抜き、笛を破壊した。


ダァーーン・・・


『ぐぁ!? 手が………』


衛兵の動きが止まった瞬間を見逃すことなく、首に手刀を放ち気を失わせた。
そして、謎の人物はこちらに気が付き、近づいてきた。


「誰だ、お前は!!」


訊ねると、仮面を外し、その姿は………


「………助けに来ました、カルロフ氏」
「蒼騎殿?! どうやってここに!?」
「今は脱出が先です。………少し離れていてください」


彼の言う通りに鉄格子から離れた。
すると、彼は懐から短刀を取り出し………………一閃。


カランッ・・・カラカラカランッッ!!


鉄格子の柵がいとも簡単に切り裂かれ、入口が出来てしまった。


「これは……一体…………?」
「時間がありません、カルロフ氏。脱出しm………そこの窓格子は、外に出られるんですか?」
「む? あ、ああ、風の通り道だが………それが?」
「では、来た道は危険なのでここから脱出します」
「ここから?! 外は断崖絶壁だぞ!?」
「大丈夫です。では、下がってください」


彼の言葉に押し切られ、下がる。
彼は壁に向かって貫くように手突を放つと、壁にぶつかる瞬間…………


ドガァンッ!!


強烈な爆発が手から発生し、壁が吹っ飛んだ。


「さて………」


彼は先程の小型の鉄の筒を上空に向けて放つと、ある一定の地点にいったところで、何かが炸裂した。


バリバリバリバリッ!!


それは昏くも微かな光を持っている雷が遍く降り注いだ。


「あれは………?」
「合図ですよ」


そう言うと、上から何かが降りてきた。
目の前に現れたのは、七年前私達が見たあの飛空挺だった。


「これは…………エクリプス………!?」
『ボス! カルロフ氏! 乗ってください!! 団体さんがクラッカー持ってやってきます!!』
「どうぞ、カルロフ氏。―――リン、俺が丁重に相手する。ゆっくり後退しつつ国に向けて発進しろ」
『イエス、ボス!!』


彼はこの飛空挺に乗りながら、上の甲板で兵達を待ちかまえていた。
〜カルロフside out〜


〜真紅狼side〜
待ってから2分で、兵隊はやってきた。
もちろん、正体をバレたら不味いのでエクリプスにはステルス状態になってもらった状態で俺は仮面を被っている。
兵達は、杖を持って魔法を放ってくるが、どれもこれも掠ることなく通り過ぎていく。
俺は、弾にディープフリーズを装填して、兵達が居る場所に向けて全弾叩き込む。


ダダダダダダンッッ!!!!
パキパキパキキキパキィ!!


着弾と同時に極寒の氷弾が炸裂し、中身が弾けて氷の壁がどんどん形成されていく。
兵達は目の前の氷の壁を壊そうと必死に魔法を放っているが、分厚い氷の壁は何時まで経っても壊れなかった。
俺は彼らに見えなくても、ダンスを誘う様に御辞儀をした。
そして、エクリプスは移動し始めたので、俺は艇内に入り、アルビオンを脱出した。
〜真紅狼side out〜


ちょっとばかし、派手だったかな。




―――あとがき―――

作中では詳細を書いてなかったリンについてのお話です。

名前:リン
種族:翼人 モデル ライチョウ
性別:女性
所属部隊:輸送部隊副長

クイラの部下にあたります。

-7-
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