小説『ゼロの使い魔 〜虹の貴公子〜』
作者:荒唐井蛙()

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 かくして、ミシェルはお縄となり、指輪強奪事件は幕を下ろした。
 なお、清々しいほどの風穴があいてしまったカトレアの寝室や学院長室は、アレクの土魔法によってアッサリ修復されたらしい。それも、破壊される以前よりも若干きれいな仕上がりだったとか。つくづく便利な少年である。
 そんなこんなで、犯人であるミシェルは一切の武器を没収され、学院の一室に軟禁されている。室内には彼女の他はアニエスしかいないが、杖も剣も奪われた状態で暴れるほど、ミシェルも愚かではない。
 というか、暴れたが最後、かの『七色』の手加減無用魔法がぶっ飛んでくるので、それが怖いから、という理由も多分にあるのかもしれない。
 取り調べの結果、やはりというかなんというか、彼女は元貴族の子女であることが判明した。いわゆるフーケと同じ、没落貴族というヤツだ。


 「裏切られたのはこっちだ!」


 机を拳で殴りつけ、ミシェルは苦々しげに叫ぶ。
 10年前、法務院の参事官だった彼女の父親は、汚職事件の主犯という濡れ衣を着せられ、貴族の地位を奪われた。その後彼は、『国に裏切られた』と絶望して自らの命を絶ち、母親もその後を追うように自決したらしい。
 1人孤独になってしまった彼女は、帰る場所も行くあてもなく、国中をさまよった。汚い仕事に手を出しもした。生きるため、そして、父親を裏切った国にいつの日か復讐するために。


 「…分かる」

 「何……?」


 そんな彼女の身の上に、アニエスは背を向けながらもそう漏らした。


 「私も生まれ育った村を焼かれ、たった1人生き残ったクチだ。
  お前の絶望と怒りは、痛いほどに理解できる」


 そんな身の上だからこそ、生きる術を何も持たない子供が、家族も家も失い、突然荒野に投げ出された時の気持ちは、身を持って知っている。彼女に同情できないわけではない。
 しかし、


 「だからと言って、女王陛下を逆恨みはせぬ!!」


ミシェルの怒りの矛先は、明らかに間違っている。
 そう言うかの様に、銃士隊隊長は向き直って叫んだ。


 「王家やその分家が何をしてくれた!
  アルビオンの力を借りてでも、王制を叩き潰さない限り、この国は腐ったままだ!!」


 だが、これにはミシェルが黙っていない。父の時も、先代国王達は黙って見ていただけ。擁護などしてはくれなかった。その息子や娘に引き継がれたところで、結果は同じだろう。
 ならば、この腐った王政というシステムそのものを壊すしかない。


 「違う!!」


 しかし、激情に任せて叫ぶミシェルの胸倉を、アニエスが両手でつかんで反論した。


 「真に憎むべきは、あのお2人を欺き、この国の権力を私物化しているヤツらだ!!」


 アレクとアンリエッタは、以前から国の内部に巣食う裏切り者の存在を危惧し、その正体と不正を暴こうと密かに調査をしていた。そのことは、銃士隊結成以前から彼らの下で働いてきた自分が誰よりもよく知っている。
 とはいえ、敵もさる者。簡単に尻尾を見せようとはしない。これと言って決定的な証拠が挙がることもなく、月日は矢のように過ぎていった。


 「言え! お前は誰の命令で動いていた!?」


 そして、ようやく手掛かりらしい手掛かりが顔を見せたのだ。この機を逃すものかとばかりに、アニエスは恐ろしい形相で元副官へと迫る。


 「…父の、古い友人だ……」

 「友人だと……?」

 「ああ…彼だけは父の潔白を信じ、放浪していた私を助けてくれた……」


 なるほど、世間知らずの貴族の娘が10年間もよく生き延びたものだと思っていたが、影から彼女を支えていた人間がいるらしい。それは、恩義に感じるのも仕方がないかもしれない。
 かつて、そして現在も自分が、そうであるように。


 「…………」

 「…………」


 どれだけ無言の圧力を加えてみても、それ以上は言えないとばかりにミシェルは沈黙を守っている。これは、少々カマをかけてみる必要がありそうだ。


 「…リッシュモン高等法院長か?」

 「ッ!!」


 その名を聞いたとたんに、胸ぐらをつかまれた彼女は目を見開く。これは、図星と見ていいだろう。
 なぜ分かったとばかりにこちらを見てくるミシェルから手を離し、アニエスは再び彼女に背を向けた。


 「…お前の父がハメられたという10年前の汚職事件……今となっては証拠もないが、本当の主犯格はリッシュモンだ」

 「ッ! バ、バカな! デタラメを言うな!!」


 ミシェルは信じられないとばかりに立ち上がる。
 それも当然であろう。今この女は、自分を助けてくれた恩人こそが、父と母を自殺に追い込んだ真犯人であるとのたまったのだ。


 「デタラメではない。事実だ。
  私はヤツに関することなら、なんでも調べた」


 それでも、アニエスは自身の見解を曲げようとはしない。
 残念なことに証拠となるものは何1つないが、それでも長年にわたってかき集めた情報が、ヤツの罪深さを充分すぎるほどに主張している。
 そして、彼女がそこまで1人の男の検挙にこだわる理由。それは、


 「なぜなら…ヤツは私にとって、殺しても殺し足りない仇だからだ!」


ミシェルと同じく、純粋な復讐のために他ならない。
 着の身着のままで野に放り出されたあの日以降、必ずや討ち果たすと心に決めた相手だからだ。故郷のため、家族のため、そして、他でもない自分自身の憎しみのために。
 天井からつるされたランプが、修羅に魅入られたその表情を、怪しく照らし出していた。







〜第42話 『闇に埋もれた真実』〜







 「まーたココ来ちゃったよ……。
  オレ、あの店長苦手なんだよなー……」

 「何言ってんの。
  お店で待機するようにって、アニエスに言われて来たんじゃない」


 指輪の盗難騒ぎから数日後、サイトとルイズは、『魅惑の妖精亭』の前に来ていた。
 先刻、アニエスから直接言い渡された密命で、この店でバラバラに集合することになっているのだ。他にもっとまともな集合場所がいくらでもあるだろうにと、サイトは文句を垂れる。
 それほどまでに、彼のオカマ店長に対するトラウマは絶大だった。なんだかんだで、例の徴税官騒ぎ以降も何度か来てはいるのだが、できるならば、あまり関わりたくはない。


 「てゆーかさ、姫様の命令って割には、『アレクにだけは気取られるな』とか、なんか変じゃねぇ?」

 「…姫様のことだから、何か深いお考えがあるのよ」

 「そんなもんかねぇ……」


 アニエスに指示を受けた際に彼女が言っていた、たった1つの絶対的な注意事項に、サイトは疑問符を浮かべていた。アルビオンの時のように、外国にでも行かされるのだろうか。
 というより、アレクに内緒で集合と言う割には、彼がよく遊びに来るこの店を待機場所に指定するのにも矛盾がある。アンリエッタは、この店が彼の行動範囲内だという事実を知らないのだろうか。まあ、かくいう自分も、かの少年について知っていることなど一握りなのだが。
 色々と考えたところで、ろくな結論に行き当たらない。よって少年は、深く考えることをやめ、ため息をつきながらも開店前の店へと入っていく。
 が、店に入ると、これまたインパクトのある光景が広がっていた。
 きらびやかな衣装を纏った店員達。それはいい。問題は、


 「まぁ! いいわいいわぁ! 最高よ! 妖精さん達!!」


そんな彼女たちに交じって、ちゃっかりとカツラまで着用して貴婦人に扮装している、ヒゲ面ボディービルダーの存在である。なんだコレ。
 何事かと問いかけてみると、何やらこの店の店員達で舞台を演じるらしい。ビックリである。


 「ついにアタシの美しさが世間に認められたのよ!」


 とはスカロンの談。
 断じてそんなことはないと、思いっきりツッコんでやりたい。


 「……『トリスタニアの休日』……?」


 店の壁に貼られている劇のポスターを見つけ、ルイズが口元をひくつかせた。このトリステインにおいて、あまりにも有名な物語の題名を取った劇のイメージ図が、あまりにも衝撃的だったからだ
 見た限り、ジェシカが主人公、スカロンがヒロインであるらしく、2人のキス寸前の1枚絵が、デカデカと貼られているのである。
 言ってはなんだが、かなり気色悪い構図だ。


 「そうだわ! ちょうどいいから、アンタ達も出なさいよ!
  ちょっと人手が足りないから!」

 「「ぅえええぇえぇぇぇぇえええ!?」」


 しかも、スカロンの思い付きによって、サイトとルイズも強制参加になってしまった。というか、なぜ人手が足りないのに劇などやろうと思ったのだろうか。


 「さあさあ、そろそろ開店よ! 準備してちょうだい!」


 自分達には用事があると説明しても、まったく取り合ってもらえない。
 結局、店まで手伝わされる羽目になり、2人は以前にも働いたように、それぞれの持ち場につくことになったのだった。
 まあ、学生服の少女と剣を背負った少年という組み合わせで店内にいるよりは、店員として働く方がはるかに目立たないのだろうが。







 「で、何やってんのよアンタ……」


 自身の足元でボロ雑巾のように転がっているサイトに、ジェシカは問いかける。開店して間もないというのに、いったい何があったのだろうか。


 「…格差社会の番付してたら、底辺の人にド突かれちゃって……」

 「はぁ……?」


 答えるには答えてくれたのだが、それでもわけが分からない。少女は頭上に疑問符を乱舞させた。


 「それはそうとさ、いいの?
  ルイズ(あのコ)、新顔の客となんだかイイ雰囲気よ?」

 「何ィ!?」


 ジェシカのその言葉とほぼ同時、ガバッと音が聞こえてきそうなほどにサイトは体を起こして立ち上がった。
 先ほどまで死にそうなほどボロボロだったというのに、一瞬ですっかり治っている。人間離れした回復力だ。


 「! アイツ……!」

 「? 何? 知り合い?」


 店の一角でルイズと共に酒をあおっている金髪の少年を認めた瞬間、サイトの目が見開かれた。横から黒髪の少女が問いかけるも、少年の視線はテーブルを囲む2人に注がれ、それ以外は目どころか耳にも入ってこないといった様子だ。
 集中するあまり、厨房のカウンターに文字通りかじりついている。


 「…はぁ……」

 「いでっ!?」


 明らかに嫉妬している少年の頭をため息交じりに平手で打ち据え、彼を現実へと引き戻した。


 「今は仕事中。暇ならコレ、裏に出しといて」

 「…わーったよ……」


 足元に置いた空の酒ビンが入れられた木箱を指差し、ジェシカはそう命じる。
 サイトは渋々といった様子で、木箱を両手で抱え、店の裏へと出ていくのだった。 


 「ジュリオのヤツ…こんなトコまでいったい何しに来たんだ……」


 ポツポツと雨が滴り始めた狭い裏通りの適当な場所に木箱を下ろすと、そんな愚痴が口から漏れる。
 先ほどルイズと酒を飲んでいた金髪少年。それは、つい最近になってロマリアからやって来た自称神官の少年であった。
 こんな店に来るわ、酒をあおるわ、ホントにアイツ神官なのかと疑問がぬぐえないのは、もはや今さらとでもいうべきなのだろう。
 と、その時だった。


 「きゃっ!?」

 「す、すみません!」


 路地を歩いてきた、フードをかぶった女性らしき人物と、うっかりぶつかってしまったのだ。
 気に食わないエセ神官のことで頭がいっぱいで、周囲への注意が散漫になっていた。


 「だ、大丈夫ですか?」

 「あの、この辺りに、『魅惑の妖精亭』というお店はありますか?」


 ケガでもしていては大変だと、転んでしまった女性に、サイトは慌てて駆け寄る。
 が、女性は慌てた様子でそう聞いてきた。


 「え……? それなら、ここですけど……って!」


 不思議に思いながらもそう答えたところで、サイトは気が付いた。


 「「その声っ……!」」


 どうやら相手も気が付いたようで、フードを自らはぎ取るように拭い去る。
 そこにいたのは紛れもなく、トリステインの女王、アンリエッタ・ド・トリステインであった。


 「! しっ!」


 思わず大声を出してしまったことに慌て、アンリエッタはサイトの口を手でふさぐ。
 路地の向こうを見てみると、大勢の兵士たちが素早い動きで大通りを走り去っていった。


 「姫様、こっちへ……!」


 いったい何が起こっているのかは分からないが、アンリエッタの様子からただ事ではないと感じ取ったサイトは、とりあえず彼女を以前借りていた屋根裏部屋へと連れ込んだ。


 「事情はよく分かりませんけど、とにかく、ルイズを呼んできます!」


 我ながら妥当な判断である。彼女が用のあるのは、自分よりもルイズの方だろう。


 「待ってください、サイトさん。
  わたくしは、あなたのお力を借りに参ったのです!」


 だが、そんなサイトの予想は斜め上へと過ぎ去り、アッサリと女王に引き止められてしまった。


 「オ、オレ……?」

 「数刻、わたくしを護衛してください!」


 戸惑うサイトに、アンリエッタはそう頼み込んでくる。
 要領を得ない待機命令も、このためだったのだろうが、正直わけが分からなかった。彼女は仮にも女王である。護衛ならば、もっとしっかりしたプロの騎士がいるはずなのだ。それをなぜ、このような一般人出身の使い魔に頼むのか。
 というか、それこそアレクに頼めばいいのだ。言ってはなんだが、彼は自分などより、よほど頼りになる。


 「秘密裏に、事を進めなければならないのです……!」


 だが、そんなサイトの反論に、彼女は否だという。
 どうやら、アレクにすら知らせてはならない何かがあるらしい。
 他ならぬアンリエッタの頼みではあるので、サイトはしばらく悩みながらも引き受けることにした。ルイズの談ではないが、おそらくは、深い事情と考えがあるのだろう。


 「では、すぐに出発しましょう!」


 じきに、警備兵がこの店にも巡邏に来るだろう。いつまでもここには留まれないと、アンリエッタは語る。
 そんなこんなで、アンリエッタは平民に化けるために女王の衣装からルイズの学生服へと着替えて、護衛であるサイトはデルフを担ぎ、店を後にするのだった。
 後に、サイトは語ったという。アンリエッタといいルイズといい、この世界の少女は、なぜ人前で平気な顔をして着替えられるのだろう、と。







 高等法院の長、リッシュモンの屋敷。雷が鳴り響くその場所を、彼女は訪れていた。
 通された部屋で燃え盛る暖炉の炎を見つめながら、銃士隊隊長は腰に差した剣を握る。その瞳に宿るのは、明らかな嫌悪の光。


 「急報とな?」


 そこへ、部屋の扉を開いて老年の男が入ってきた。血色の悪い顔つきに白く染めあがった髪。衣を纏ったこの館の主、リッシュモン本人だ。
 アニエスは剣から手を離し、彼に向き直る。


 「わざわざ高等法院長の屋敷へ銃士隊長が出向いてくるからには、よほどの事件なんだろうな?」


 暖炉の前に立つアニエスに歩み寄り、リッシュモンは高圧的な態度で問いかけた。


 「……女王陛下がお消えになりました」

 「何……!? かどわかされたのか!?」


 アニエスの報告に、リッシュモンは一瞬、目を見開く。


 「調査中です」

 「この前にも似たような誘拐騒ぎがあったばかりではないか。
  銃士隊(きみたち)は無能を証明するために、新設されたのか!」


 リッシュモンの拳が、近くにあったテーブルを打ち据える。


 「汚名をそそぐべく、目下全力を挙げての捜査中であります」

 「…エルバート公は、このことをご存じなのか?」


 それでも努めて冷静に語る銃士隊長に、法院長は目を細めて問いかけた。数週間前と同様、今回もかの神童の協力を仰いでいるのか、と。


 「いえ。そう何度もあの方の手を煩わせては、銃士隊(われわれ)の面目がございませんので。
  つきましては、街道と港の封鎖許可を頂きたく存じます」


 返答は、否であった。


 「ふん……! そうであろうな」


 淡々と本題を切り出すアニエスを横目に、リッシュモンは鼻を鳴らしながら浮遊の魔法で万年筆を手元に呼び寄せ、許可証にサインを書き記す。
 まあ、妥当な判断だろう。アンリエッタの幼馴染であり、今や彼女の側近の地位についているアレクに度重なるこのたびの不祥事が知られれば、銃士隊は解散どころの処罰では済まない。


 「全力を挙げて陛下を探し出せ。
  見つからん場合は貴様ら全員、エルバート公が裁くまでもなく縛り首だ」

 「はっ!」


 許可証を渡す際、アニエスに脅しをかけるリッシュモン。
 銃士隊長は法院長の脇をすり抜け、部屋の扉へと手をかける。


 「…閣下」

 「……なんだ」


 と、そこで、リッシュモンに背を向けたまま、話しかけた。


 「わたくし、見聞を広めるため過去の事件を調べているのですが…閣下は20年前の、『あの事件』に関わっておいでと伺いました。
  『ダングルテールの虐殺』は、閣下が立件なさったとか」

 「…虐殺……? 人聞きの悪いことを言うな。
  あの村の平民どもは、国家を転覆させる企てをしていたのだぞ。
  王家にも、あの村の鎮圧は承諾いただいておった」


 アニエスの言い様に、リッシュモンは心外だとばかりに反論する。あれは王家にも正式に認可された、正当な鎮圧任務なのだ、と。


 「鎮圧……なるほど。当時の記録を探しているのですが見当たりません。
  閣下なら、実行部隊の隊長がどなたかご存じのはず……」


 瞬間、薄暗い部屋で相対する2人の顔を、閃く稲妻が照らし出した。


 「……そんなこと、いちいち覚えておらぬわ。
  20年前のことよりも、今は陛下を探すのが先決ではないのかね?」


 そう言って、リッシュモンは手元にあったグラスに口をつける。
 まるで、全ての真実を水と共に飲み込むかのように。


 「…おっしゃる通り。失礼いたしました」


 その姿を一瞥し、アニエスは屋敷を後にするのだった。







 暗く閉ざされたその部屋を、燭台に灯された炎の明かりが怪しく照らしている。
 テーブルの上に広げられた古い手帳と、数多のメモが書きなぐられた紙切れの数々。数日前に整理されたはずなのに、その寝室は早くも散らかり始めていた。


 「……そういう…ことでしたか……」


 羽ペンを力なく机に置き、椅子の背もたれに体を預ける。感情の読み取れない言葉が、暗い室内に漂った。


 「…行きますよ、ホークス」


 偉大な父の残した日記を懐にしまい、部屋の主はイスから立ち上がって右手を己が使い魔へと伸ばす。
 赤い羽毛を纏った鳥は、2、3度羽ばたき、部屋に設置された止まり木からその手に飛び移った。
 瞬間、一際大きな稲妻が閃き、轟音と共に少年の姿を照らし出す。
 マントを纏ったその後ろ姿は、とても悲しげであった。

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