朝、目覚めると目の前に誰かの顔が、ということはない、何故なら俺は寝相がいい。壁に向かって寝れば何も間違いは起こらない。
そんな風に朝を迎えてからレオ様が実は妹キャラだったとか、ミルヒオーレさんに撫でられている姿を見て、なんと言うか、俺は頭が痛くなったりした。そうやって時間が過ぎていき、シンクの送別会が開かれた。
「いや〜よかったよ。もしあの送還方法見つからなかったら、さっきミルヒオーレさんが言った里帰りに言葉に胸を痛めたよ」
「あはは、そうでありますね」
そしてシンクの挨拶もなんかとても悲しい感じになっていただろう。
それにしt「それでは勇者様の友人の駿さんにも一言、お願いしたいとおもいます」・・・・・・いや、シンクが呼ばれた時点でなんとなく分かってたよ。だって、今回の送別会の名前がありがとう勇者様達、お食事会なのだから。
だが拍手もされて、もう完全に出ないといけない空気になっている。出るしかない。そして言うしかない、帰らないと。
「勇者シンクの友人の天理駿です。えっと、俺は正直シンクみたいなことが言えないですよ。でもこんなパーティを開いてくれたこと、誠に感謝しています。ありがとうございました!それでは最後に・・・・・・・・・・・・俺、帰りませんから〜」
そう言って俺は舞台を降りた。ふっ、完璧だったな。・・・・・・まぁ、驚かれたよ。知っていたシンク、ガウル、リコッタ、ジェノワーズ以外にあれこれ聞かれたよ。遺書やののくだりはもちろん話さなかったが。
やっと尋問から脱け出せて俺は用意されていたジュースをストローで飲んでいた。やっぱり美味いな。そしてたくさん話させられて渇いたのどを潤した俺は適当に料理を取って食べていた。
「駿殿〜」
しばらく料理を堪能した俺にユキカゼが声をかけてきた。
「どうした、ユキカゼ?」
「いや〜、驚いたでござるよ。帰らないとは」
あぁ、まだそれ引っ張りますか。俺はため息を一つついた。
そういえばユキカゼはオンミツ部隊の筆頭でダルキアンさんと共に魔物封印をして周っている。
「ユキカゼってさ、どうしてダルキアンさんと一緒に旅してるの?」
何気なく些細な質問だった。だが訊かれたユキカゼの顔には少し影が出来ていた。
しまった、これはもしかして訊いてはいけないことだったか?と俺は思った。だが気がつくとユキカゼの顔はいつも通り元気になっていた。
「拙者は土地神ということは知っているでござるか?」
「ん?へぇ、そうなんだ」
土地神って人間型のもいるんだったな。なんか動物的だと思ってた。てかそれなら魔物も人間型があるのでは?そこでふと前にあった魔人の少女を思い出したが、今はユキカゼだ。
「拙者の親は魔物に殺されたでござるよ」
「!・・・・・・・・・・・・そうか。でダルキアンさんに拾われたのか」
ユキカゼは首を縦に振った。成る程、そうか、そうか。俺は皿にのっていたトマト(と思う)を1つ口に含み、噛んで飲み込んだ。
「・・・・・・・・・・・・ユキカゼ、それでもダルキアンさんに拾われて不幸中の幸いだったな」
「あはは、そうでござるな」
明らかなから笑いだった。これは俺が悪いのか?なら何とかフォローを・・・・・・
「・・・・・・ユキカゼは俺と似てるな」
とそんな言葉がこぼれた。もちろん、その発言にユキカゼは首を傾げた。
「いや、俺もさ親、殺されたんだ」
誰にも言えず、ずっと隠していたはずの言葉は一度口に出すと空気より軽くなり、この世界にすぐに浮いて出る。そういうものらしい。
「そうでござったか・・・・・・」
「そうでござるよ、なんて。それでさ、殺したのが父さんが最も信頼していた助手だったんだ。しかも目の前で殺されたんだ」
「なっ!?」
ユキカゼは流石にこれには絶句した。
「しかもその後に俺を引き取った親戚、こいつがまた、俺をいや俺の才能を利用しようとしてきたから、もう・・・・・・・・・・・・嫌になるよ」
本当に思い出しただけで不快な気持ちになってくる。しかも!あいつらは俺がそれに気がついていないと思っていたから、これがまた厄介だった。
「本当に俺もダルキアンさんみたいな人に拾われたかったよ」
そうだったら、俺は・・・・・・・・・・・・どうなっていたんだろう?
「すまんな、こんな話して」
突然に出てきた疑問を振り払いながらそう言って締めた。
「いやいや、駿殿のことを知れたので良かったでござるよ」
「それなら俺もユキカゼのこと知れたから五分五分だよ」
人の過去に触れるということはその人について知り、深く関わることを意味する、と俺は思う。だからこれはもしかしたら俺とユキカゼの新密度がアップしたんじゃないか?