訓練後、お昼も終わらせて俺はノワールとセルクルに乗って風月庵に来ていた。
ここに来たのはガウルとレオ様からの命令。前回の魔物騒動、あれによりガレットにも魔物対策が必要と思ったらしく、それに俺とノワールが選ばれた。
ノワールはユキカゼに直接封印術を見せてもらうらしく、外で二人で戯れていた。一方、俺はダルキアンさんと色々と話していた。
「結構色々なこと聞けたな」
「そうでござるな」
封印術について、魔物について、書物では分からないこが聞けた。いや〜、実体験から聞ける情報はやっぱりためになる。
聞きたいことは聞き終ったので俺はカナタさんに淹れてもらったお茶を飲みながら縁側でダルキアンさんとのんびりしていた。
「はぁ、平和だ。お茶が美味い」
「・・・・・・そういえば、拙者も駿殿に訊きたいことがあったでござる」
「?、なんですか?」
色々教えてもらったんだ、お返しには丁度いい。
「駿殿は本当に帰らなくてよかったでござるか?」
「・・・・・・・・・・・・いいんですよ。別にもうあっちに未練ないし」
「?」
ダルキアンさんは未練とはなんだと言わんばかりに首を傾げた。しょうがないか、そう思い俺はダルキアンさんに全てを話した。
もちろん、あの少女についてもだ。それを話し終えるころにはお茶は無くなっていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・まぁ、こんなところです」
「そうでござったか。しかし駿殿、駿殿は本当に人間不信でござろうか?」
へ?ダルキアンさんは何を言っているんだ?俺はずっと人を信じなかったはずだ。というより今の話だけで何かわかったのか?
「駿殿はフロニャルドに来て初めてガレットに来た時、こう言ったでござるよ。勇者殿は少し無茶しても約束を守ると。この言葉は勇者殿を信頼してないと言えないはずでござる」
確かに言ったような・・・・・・てかこの人よくそんなこと覚えているな。ん?待てよ?ということは・・・・・・・・・・・・
「俺はずっと昔から人を信用していた・・・・・・?」
はぁ?意味がわからない。なら俺がずっと悩んでいたことはなんなんだ?
「駿殿」
パニックに陥っていたがダルキアンさんのその声ははっきりと聞こえた。
「人を信用出来ないということはその人の悪意ばかりを見ているからでござる」
「・・・・・・・・・・・・」
「しかし人には悪意と同じくらい善意もあるでござる。拙者も魔物に国を滅ぼされた時は悪意が多々あったと思うでござる」
そうだ、ユキカゼもダルキアンさんも俺と似た様な経験をしているはずなのにこんなにも人を信じて何時も笑顔でいる。
「・・・・・・俺とあなたは何が違うんでしょう?」
「駿殿と拙者達は変わらないでござる。だた駿殿は少し、悪意を多く見てしまっているだけでござる」
悪意を多く・・・・・・、よく分からない。
ダルキアンさんは俺の顔から何を思っている察したらしく、話を続ける。
「今は分からなくていいでござるよ。しかし、人と接していけば、いつか分かるでござる、駿殿なら。送還方法を見つけた時も、さっき言った言葉も善意が悪意を上回った証拠でござる」
確かに送還方法を探す時はいつもの謎を追う時と少し違っていた気がする。
あれは俺がリコッタの涙が見たくなかったからあんなに必死だったのかも。てか送還方法の話、既にここまで広まってるんですか。
「善意をみることが出来れば人を信用出来るんですか?」
「まぁ、そうでござるな。人を助けるのもその人の善意を知っているからでござる」
そうか、俺はやっぱり少しずつ人を信頼出来て来てるのか。
そう思うとかなり嬉しかった。いつか俺も人の善意を見ることが出来るようになって心を開けるかもしれない。
封印術のことを忘れそうになるほど、後の話に感激した。