風呂からあがった後、部屋に戻ると何故かレオ様がベッドに座っていた。
「どうした?」
「いえ、どうしているのかと・・・・・・」
そう言うと、レオ様は笑って「ここはワシの城なのだから当たり前だろう」と言われた。これが職権濫用というやつか。
「まぁ、ワシはいいとして・・・・・・この紙に書いているのはなんだ?」
それを聞いた瞬間、手に持っていた服を落としてしまった。
・・・・・・・・・・・・しまった。直すの忘れた。安堵感と残っていた緊張感でそっちまで気がまわらなかった。
俺は頭の中がぐちゃぐちゃな状態だったが、服を拾ってなんとか平常心保ちながら椅子に座る。
「何って、そのままの意味ですが?」
「むぅ、生憎そっちの文字は読めんのだ」
・・・・・・・・・・・・そうだった。走り書きだったから日本語を書いていたんだ。よかった〜、ばれてない。
「で、どんな内容なのだ?」
あぁ、さっきの反応でもう、やばいことってのはばれてるな。
「あっちの世界で俺は行方不明になってるんです。それの補正というか対処のことです」
「おぉ、成る程。それでその対処の方法はどうするのだ?」
どうやら全部話すまで許してくれないらしい。
覚悟しなきゃな。
「対処方法ですか?親が死んだ後、一緒に暮らしていた親戚がいるんですが、その人が結構慌てやすくて思い込みが激しいんです」
そういえば、俺が一度夜まで帰らなかった時、警察が動き出した気がする。まぁ、外で本読んでて集中しすぎたのが原因だったんだが。
「その人に、さようなら、と言っただけですよ」
「・・・・・・そうすれば、その親戚は・・・・・・」
「たぶん、俺が死んだと思うはずです。そして警察、こっちで治安を守る人間に知らせるはずです。そしてシンクにも事情を聞きにいきます」
まぁ、世に言う事情聴取というやつだ。たぶん七海やレベッカにもやるだろう。
「そこでシンクには途中で別れて知らないと答えるように言っています。だからあいつらも分からない。もしかしたら外国、まぁ、別の国に行ってないことがばれるかもしれませんが、大丈夫だと思います。シンクがそれに触れてませんでしたから」
勇者召喚時と送還時に何かしらの補正があるのかも知れない。というのが俺の仮定だ。
「しかし、それだけでは行方不明で終わるのではないか?」
いい質問ですね。ついつい言いたくなるな。
「生憎俺はこの前まで自殺志願者でしたから、そういった証拠は結構残しているんですよ」
「そうであったな、ガウルから聞いた。しかしお主は変なことを考えつくな」
レオ様のその言葉に俺は少し笑ってしまった。
「変なこと?いやいや、俺はあっちの人間を信頼しただけですよ」
「ふっ、お主がそれを言うとは皮肉だな」
どうやら、ガウルは俺が話したことをほとんどレオ様に報告しているらしい。
「そういえば、レオ様。明日からシンクとの通信機作る為に少しビスコッティに滞在しようと思ってるんです」
たぶん、作るのに数日かかるだろう。
「別に構わんが」
「ありがとうございます」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「えっと・・・・・・話、終わりましたよね?」
「そうだな」
そう言ってレオ様は座っていたベッドに寝転がった。
「居座る気ですか?」
「むにぁ〜」
あ、聞いてない。まぁ、聞いていても職権濫用で結局居座ると思うが。
諦めてベッドに転がるレオ様を眺めていた俺は思った。
レオ様って俺と歳変わらないのに、領主の仕事をやっている時はなんか年上に見えるしミルヒオーレさんに甘えている時は年下に見える。
まぁ、どっちにしろ俺と同じ歳にはあまり見えない。にしても・・・・・・
「レオ様って可愛い部類だよなぁ」
「ほう、私に惚れたか?」
おっと、どうやら声に出ていたらしい。
「そんなわけないじゃないじゃないですか」
俺は椅子から立ち上がり、ベッドに寝転がっているレオ様の近くに座った。
「恋愛とかってのは、本当に信頼出来る異性とやるもんだろう?そんなこと、そうそう・・・・・・・・・・・・」
信頼しきって漫画の様に誰かとキャッハウフフしている俺の姿は到底想像できない。
「・・・・・・さて、それではワシは部屋に戻ることにしょう」
そう言って、レオ様は部屋から出ていった。
あれ?なんか突然あっけなくなったな。
「まぁ、いいか」
今はそんなことに頭を回せる様な状況ではない。結構詰め詰めのスケジュールだったので疲れているのだ。
俺はベッドに倒れる様に寝転がり、そのまま夢の世界に飛び込んでいった。