小説『dog days not勇者』
作者:maguro328()

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また昔の夢を見た。

今度は父さんと母さんが死んだ後、確か12歳になった夏、シンクの両親に誘われて、七海やレベッカと共にキャンプに行った時だったはずだ。

俺は死んだ両親や嫌いな親戚のこともあって、考え事や空想に漬かっていてずっと本ばかり読んでいた気がする。

でもそれだけではなかった。俺はその部分の夢をまるで走馬灯かの様に見ていく。

だが夢というのは曖昧で記憶にあまり残らない。それはこの夢も例外でなく、俺の記憶で鍵がかかり思い出せなくなった。

「・・・・・・・・・・・・んぁ」

そうして目覚めた結果、しかも目覚まし時計に起こされて、俺は最悪の目覚めだった。

「はぁ・・・・・・・・・・・・んん〜〜」

なんとか立ち上がり、一度大きく背伸びをする。それにより少しずつだが頭の中がはっきりとする。

そしてそんなはっきりした頭で今日の予定を確認する。

今日からビスコッティに訪れて、リコッタに通信機の作成を手伝ってもらう。たぶん、シンクへの通信なので快く了承してくれるだろう。

シンクには数日と言ったが、どんぐらいかかるのだろう?とか今考えることが出来ることを考えていたらドアが開けられた。

「駿・・・・・・え?」

入ってきたのはノワールだった。だが俺を見るなり固まった。

「どうした?」

「駿、その目、何?」

目?俺、ノワールを変な目で見てたのか?

俺はノワールの言葉に疑問を思いながら、近くにあった鏡に目をやった。すると・・・・・・

「・・・・・・・・・・・・え?」

俺の左目はいつもの真っ黒い瞳でなく、真っ赤で瞳孔が開いた獣の様な目になっていた・・・・・・・・・・・・そう、それはまるで、魔物のようだった。

「何これ?」
「何それ?」

俺とノワールがほぼ同時にそう言った。

何なんだ、これは?一体俺に何があったんだ?そんなことを考えていたが、正直答えは確実に出ていた。

あの魔人の少女だ。

あの少女はプレゼントだよ、また会えることを楽しみにしておくよそう言った。

つまりこれが、プレゼントもしくはプレゼントでの副作用なのだ。

「すまん、ノワール。眼帯か何か、取ってきてくれないか?」

「え、あ、うん」

ノワールは救護室へ走って行った。よし、今のうちに冷静になって状況整理をしよう。

まず、今俺は目がこんなになって・・・・・・たぶん魔物に、いや魔人に近づいている。そしてこれはもしかしたら少しずつ拡大していくかもしれない。

俺は一度大きく息を吸って、もう一度鏡を覗いた。

まぁ、変わらないのだが、きちんと現実を受け入れなければいけない。

「駿」

「あ、すまねえなノワール」

どうやら現実を受け入れるのに思いのほか時間がかかったらしく、ノワールが救護室から既に帰ってきていた。

俺はノワールから眼帯を受け取り、左目に装着、そしてノワールに説明をした。

「駿、そんなことが・・・・・・」

「あぁ。まぁ、今日から少しビスコッティに行く気だったからダルキアンさんに相談してみるよ」

俺を心配そうな目で見つめるノワールを俺は安心させる様に頭を撫でた。

「ん、んにゃ〜」

そんな声をノワールは出した。どうやら満足頂けたらしい。

「それじゃ、行ってくる」

「うん、行ってらっしゃい」

ノワールは笑顔で見送ってくれた。良かった。元気出たみたいで。

俺はセルクルを一匹貸してもらって、ゆっくりと道を進んでいく。こっちに来てこうやって自然に触れ合うことが増えた。

たぶん、俺が落ち着けたのはこれのおかげだろう。

「ん〜〜、いい空気だな〜」

なんて独り言も呟いちゃうくらい、俺は気分が良かった。

「ほお、もう魔人化が始まっているのか」

はい、どん底に落ちました。俺のテンション核貫いてブラジル到着です。

一体、何時からいたのか。その疑問は分からないが例の魔人の少女が後ろから抱き着く形でセルクルに乗っていた。

「えっと・・・・・・・・・・・・何しに来たの?」

「君が魔人化したのを感じてな、様子を見に来たのだよ」

魔人化、この少女はその言葉を二度言った。これは聞き間違いではないのだ。

「俺はどんどん変わっていくのか?」

「そうだね。少しずつ人間ではなくなるだろうね」

どうなるのか、とは言わなかった。いや、魔人になるのはわかっているが、俺は人間の形を保てるのだろうか?

「それじゃ、また君が魔人に近づいたら会いに来るよ」

そう一方的に言った後、俺の後ろから気配が消えた。

う〜ん、何と言うか・・・・・・


「説明、あざ〜す」


俺は風の音も聞こえない無音の中でそう呟いた。

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