小説『dog days not勇者』
作者:maguro328()

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翌日、俺は起きると正座のまま後ろに倒れているという謎の格好で寝ていた。

最初は軽く混乱した。だが昨日の出来事を思い出したら落ち着けた。
昨日、エルディーナが帰った後、クー様にああ宣言して了承してもらったものの、数十分の説教をくらった。そしてそのまま罰として膝枕になでなでをすることに、クー様はそのまま寝てしまい、どかすにどけれず俺も寝てしまったのだ。

「んあぁ〜、腰が痛い・・・・・・」

「むぅ・・・・・・・・・・・・」

おっと、クー様が起きてしまった。

「駿か・・・・・・?」

「はい。駿ですよ」

どうやらクー様は高血圧で朝に強いらしい。直ぐにベッドから起き上がり、体を伸ばしていた。

「それで駿、お主はこれからどうするのじゃ?」

「はぁ・・・・・・えっと、今は、6時半なので少し書斎の方に行こうと思います」

「まだ調べるのか?」

何が、とは聞かない。正解しているからだ。

「そうですね。もしかしたら魔人化を止めるヒントがあるかもしれませんし」

「そうか・・・・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
何故だが無言が続く。

「駿よ・・・・・・」

「どうしましたか?」

まだ、何かあるのだろうか?

「着がえるので出ていってほしのじゃが・・・・・・」

「あ、そうですね。分かりました」

そりゃ、そうだ。女性の着がえ中で男がいるのはおかしいな。

「・・・・・・お主、まったく照れんのじゃな」

「ん?何か言いましたか?」

「いや、何でもないのじゃ・・・・・・」

そうですか、答えて俺は部屋を後にした。

*

書斎へと辿り着き、俺は昨日読んだ古い本を手にとって席についた。そして昨日と同じページを開いた。

書いてあることは昨日と変わらない。

国の状況と人の死に方、そして宝剣について。

「何にもないな」

俺は本を閉じながら呟いた。

「ん?」

本の背表紙、古くなってあまり分からないがよく見るとそこには何か紋章の様な模様が書いてあった。

「なんだ、これ?」

その紋章に触れた途端、本は光出し、消えていった。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

いや、待て。大事な証拠が消えてしまったぞ。というか、一体何が起きたんだ?

「クー様に何て言おうか・・・・・・」

本が消えてしまったんだ、か?いやいや、わけが分からない。どうしようか?

「おや、駿殿?」

席に座って色々考えているといつの間にかユキカゼがいた。

「どうしたでござるか?」

「例の国について調べてたんだ」

「例の国・・・・・・はて、拙者は存じないでござる」

「え?だってパスティヤージュに来たのだってその為だったろ?」

「ここへおとずれたのは駿にクー様を紹介するためでござろう?」

話が噛み合わない。元々ユキカゼはそれだけの為についてきたのか?

「すまん、ユキカゼ。用事が出来た」

クー様なら、クー様に訊いたなら今の現状が分かるはずだ。

俺は来た道を引き返して、クー様の部屋へ帰ってきた。

「クー様!」

「ど、どうしたのじゃ、駿?」

クー様は既に服を着替えていた。

ここまで来て、ふと思った。どう聞けばいいだろうか?・・・・・・よし、ここは率直にいこう。

「ま、魔人って知ってますか?」


一瞬の沈黙、ここで知っていると答えてくれれば勘違いと分かる。だが答えは俺の思ったものと違った。

「魔人?魔物ではなく?」

俺はその答えに膝をつきたくなった。だが何とかもちこたえて「いえ、魔物と間違えました。すいません」とか言って誤魔化して部屋を後にした。
どうなっているんだ?あの国のこと魔人のことみんな忘れている。それだけならいいんだが、俺が憶えているのはどういうことだ?

「原因は、本だな」

あれが原因、あれが消えたことが原因。

そうだ、不思議な点はたくさんある。魔物退治専門のダルキアンさんがそれを知らないこと、ビスコッティやガレットにあの国の情報が一切なかったこと。そして唯一あったパスティヤージュの情報も消えてしまったこと。

それを総合すると何となく見えてくる。

まずこの世界、フロニャルドで魔人という存在は一度無かったことにされた。それはどんな方法でかは今は仮定が多すぎるから分からないが。
そしてあの本は紋章術か何かでプロテクトが張られていた。そしてそれがさっき切れてしまった。もしくは俺が触れてしまったことにより消えてしまった。
ならみんなの記憶が無くなった理由は?そして俺の記憶が無くならない理由は?

大丈夫だ。もう材料は揃っているはず・・・・・・・・・・・・。

その時、一つの考えが俺の中によぎった。

記憶が消える者と消えない者の区切り。関わりの深さ。その人物の状態。

もしかしたら俺は既に関係者になってしまったのでは?つまり・・・・・・・・・・・・

「君は消される側の人間だってこと、かな?」

「エルディーナ」

目の前にはいつの間にか見慣れた黒い和服少女がいた。

「あってるのか?俺はみんなに記憶から消えるということ・・・・・・」

「大正解だよ。君が魔人になると同時に他の人達から忘れられる」

魔人になるまで、つまり最大で一週間、それで俺は忘れられる。

「それはつまり、どうなろうと俺は一人になるということじゃないか!」

「そうだね。君の気持ちは全部無駄足だったんだ。まぁ、これに君が気付くのはもう少し先のはずだったんだがね」

一人になる。それは前の俺がずっとやってきたことだ。だが一度密の味を知ってしまうと止めれなくなる、それと同じで俺は友人というものを知ってしまいそれを離すのが嫌だと思ってしまった。

俺はどうしたら・・・・・・。気がついたら俺の周りには人がいなかった。

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