小説『dog days not勇者』
作者:maguro328()

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あれからガレットに帰り3日が経った。

どこかずれた世界で俺は過ごした。リコッタもエクレールもノワールも何も憶えていなかった。

そして3日間、俺には特に異常は無かった。夢も見なくなり、あの時の様な症状が出ることも無くなった。

だが後4日、俺はどんどん怖くなっていた。もちろん、ずっと解決方法は探していた。だが分からない。

だから俺はもう一度あの国に赴いた。もう時間がない。たぶん、ここで見つからなかったら、万事休す、ゲームセットだ。因みに国のことは誰も憶えてない上に誰かを連れて行こうとする何故か辿り着けなかった。

そうして俺はあの時調べられなかった姉様と呼ばれていた領主の部屋に来た。

一通り部屋を見て周る。どうやら妹さんの様に日記はつけてないらしい。残念だ。

次に来たのが書斎、俺は古い本をいくつも見ていく。かなり埃っぽく大変だ。だがその時にある本が目に入った。

軍事記録書

どうしてか凄い気になったのでそれを手にとった。

そういえばここの領主様はレオ様みたく随分と好戦的だった気がする。軍事会議にも参加してたらしいし。

軍事記録書をピラピラとめくっていく。そこには予想通りと言うべきか、パスティヤージュへの攻撃方法が書かれている。絵が多く用いられているが字もある。

先方軍は神剣アルティウムを持った領主様と共にエッシェンバッハ城に突入

どうやら不意打ちしたらしい。余程この国は弱いんだな。

俺は呑気にそんなことを考えながら続きを読んでいく。そこで俺はある文が目に入った。

後方軍は雷銃エルディーナを中心として援護

雷銃エルディーナ、どこぞの魔人の少女と同じ名前だった。

「いや、待てよ・・・・・・」

今思い返すと宝剣というのは一体何なんだ?国には必須とされる二対一体の武器、という物ではないとは思っていたが・・・・・・。

それに宝剣と同じ名前の少女、これが偶然だろうか?そんなわけがない。ならあの少女がエルディーナと名乗る理由は分かる。


彼女が宝剣


あり得ないとか、言われるかもしれない。だが宝剣は謎だらけで未知数、これくらいあり得るだろう。

それならもう一方の宝剣、アルティウムはどうなんだ?

こっちは破壊されいているはずだ。それで終わり?そんなわけがない。破壊された理由、それはなんだ?

宝剣というのは二対一体、しかも片方は絶対に神剣だったはずだ。その神剣が破壊されたとなれば何か尋常じゃないことが起きたのだろう。

それが何だったのか・・・・・・・・・・・・尋常じゃないこと、あるとすれば奴の存在。

もし、神剣アルティウムが破壊されたことより、奴が生まれたなら俺は奴の名称を変えなければいけない。

「・・・・・・魔神」

奴は神剣から生まれた魔神。それはとても危険な者な気がする。だがそうだとしたらそいつを倒したのは誰なんだ?そしてあの少女は何故魔人と名乗るのか。

「あともう少しだ」

材料は揃った。後はこれをちゃんと完成させるだけだ。

俺は急いでガレットに戻ることにした。

*

ガレットに急いで帰ってきた俺はすぐさま自室に戻ろうとしたのだが・・・・・・。

「駿、少しいいか?」

レオ様に捕まってしまった。そしてそのままレオ様の部屋に連れてこられた。

「どうしました、レオ様?」

「お主、最近ワシらを避けてないか?」

いきなり図星をつかれた。俺はついつい後退してしまう。

「な、何故そう思うのです?」

「態度を見ればわかる。駿よ、どうしたのだ?」

俺はとりあえず事情を話した。とりあえず、というのはどうせ忘れるからだ。

「お主、そんなことが・・・・・・・・・・・・?」

全部話し終えてレオ様が何かを言おうとした瞬間レオ様が止まった。どうしたんだ?

「・・・・・・お主、何者だ?」

先ほどの図星とは比べ物にならないほどの衝撃が走った。

「レ、レオ様・・・・・・天理駿です・・・・・・」

何とか声を絞り出して自己紹介をした。するとレオ様も自分を言い聞かせるように
「そうだったの、駿だったな。駿、駿・・・・・・・・・・・・」

あれから3日、ついに俺自身が記憶抹消の対象になった。どうやら、思い出せるからまだましだが、これからこんなことが増えてくるのか?

「う〜ん」

「どうしましたか、レオ様?」

「どうしてお主を呼んだのか、思い出せんのだ」

「・・・・・・確か世間話をしてただけですよ」

ここで魔人とか言い出したらまたややこしいので俺は嘘をついた。

「そうか」

と俺の嘘は本当になってここから数十分、世間話が続いた。そうしてやっと解放されて俺は自室のベッドに倒れ込んだ。

体が動かない。どうやらレオ様のあれが予想以上に効いたらしい。

だが寝れもしない。怖いからだ。次寝て完全な魔人となったらどうしようとか起きた時にみんなが俺を完全に忘れていたらどうしようとか恐怖しているんだ。

「・・・・・・・・・・・・さっさと解決しないとな」

寝ることも出来ないのでなんとか立ち上がり、考察用に紙とペンを出したところで扉が叩かれた。

「駿、いる?」

「ノワールか?」

声の主はノワール、入っていいか訊かれたのでいいよと答えた。入ってきたノワールはどこか不安な感じがあった。

「どうしたんだ、ノワール?」

「・・・・・・実はさっき、ジョーとベルと話してたんだけど、駿最近私達を避けてない?」

もしかして今日からこんなことがずっと続くのだろうか、かなり嫌になるな。

「最近用事が出来てな、後少しで終わるから・・・・・・」

これまた本当の様な嘘をつく。

「それに駿、最近寝てる?」

みんな俺のことどれくらい見てるのだろう。そんなに気がつくものだろうか?確かにさっきの理由で俺はここ3日合わせて6、7時間しか寝てないはずだ。

「忙しいいんだ。それに慣れてるから大丈夫だよ」

「・・・・・・・・・・・・」

しばらく沈黙が続いた。そしてノワールは出ていった。俺もそれを見た後、ベッドにまた倒れた。

「君はやっぱり人付き合いが苦手なんだね」

「・・・・・・・・・・・・エルディーナか」

「驚かないんだね」

さすがに慣れてくるだろ、何回目だよ。そうつっこむ力はもうなかった。

「さて、途中経過でも聞こうか?」

「はぁ、わかったよ」

俺はさっき分かったことを全てエルディーナに話した。するとエルディーナは絶句ともとれる表情なった。

「まさか、もうそこまでくるとは・・・・・・」

「お褒めに預かり光栄です。それで?今の表情からこの仮定は正解だと考えて、お前は何者だ?」

そう訊くとエルディーナはふと微笑んだ。なんだ?まだ教えない気か?

「神剣に力を使い生まれた魔人、魔神か。それがいるとしてどうやって倒したんだい?」

「お前か?」

「半々かな?」

半々?どういうことだ?こいつと仲間が共に魔神を倒した?それとも・・・・・・・・・・・・。

そこでまた一つ、疑問が浮上した。この少女がエルディーナ、もう一方の宝剣として何故魔人化しているんだ?

神剣アルティウムに勝てる手段、魔神を倒す方法、あるとするなら、もう片方の宝剣によってだ。だがそれが半々の正解、しかもエルディーナが魔人化してる理由は・・・・・・・・・・・・。

「封印か?」

「おぉ、正解だよ」

「成る程、俺に魔神の一部を渡したから俺は魔人化したのか」

魔人化、それは魔神の一部を入れられることにより、生じることだったのか。

「それで、俺にこれを渡した理由を聞こうか」

「封印の限界だよ」

エルディーナは超簡潔に言った。

「限界って。でもなんで俺なんだ?」

「魔人は私の紋章術で誰の記憶にも残らない様にしている。だから君の様な人と接しない人間が良かったんだよ」

「つまり、一人で生きていくのに苦がない人間がエルディーナを引き継いでずっと魔神を封印してきたのか?」

「そうだよ。でも引き継ぐのは君が初めてだよ」

そうだったのか。その封印とやらはどうやらかなり強いらしいな。

「で、それはどうやったら引き継げるんだ?」

「引き継ぐ気かい?でも残念だったね。私が予想していたよりもずっと早く魔神は動き出してしまった」

残念?動き出した?つまりそれって・・・・・・

「封印は解かれてしまった」

それを聞いた途端、エルディーナの周りの空間にピシリと亀裂が入りそこから黒い手が出てきた。

「ちょっと待て!どういうことだよ!?」

「私の中に封印した魔神が目覚めたのだよ」

そんな会話の間にも亀裂はどんどん大きくなり、もう片方の手も出てきた。そして両手で空間を押し退けて禍々しい魔神が姿を現した。そしてエルディーナは髪の毛が真っ白になってベッドに倒れ込んだ。

「お前が魔神か・・・・・・」

俺は輝力解放でタイタンソードを出現させて戦闘体制に入った。見ただけでわかる、こいつはやばい。

魔神はそんな俺を見ることなく部屋を見渡していた。首を動かすたびにギギギギと不快な音が部屋に鳴り響く。

そしてある程度見渡した後、黒い霧に囲まれて姿を消した。

「なっ!?」

くそっ!ここで見失ったらさすがにやばい。

俺が追いかけようとすると腕を掴まれた。

「待て・・・・・・」

「待てるか!あんな奴外に出たら・・・・・・」

エルディーナは何とか起き上がり裾を探り始めた。

「奴はまだ完全に復活していない。それに行ってどうする気だ?」

それを言われて俺は完全に動きが止まった。確かに行っても勝てる見込みはない。

「だからこれを・・・・・・」

そう言ってエルディーナは俺に指輪を差し出した。

「これは・・・・・・」

「雷銃エルディーナ。それがあれば勝率が0%から0.1%くらいにはなるかもね」

「ありがとう。期待に答えられる様に頑張るよ」

俺は指輪を右手の人差し指にはめて少し眺めた。宝石の色は黒、フレームは薄汚れている。

「そういえば、どうして魔神の存在を記憶から消したんだ?」

「・・・・・・・・・・・・あれは天災だ。誰にも防げない。だから私は誰もあれに恐れることのない様に記憶から消して偽りの安息を作り出したんだ。だが、それは間違っていたな。結局、私が恐れていただけだったんだ」

確かにやり方は間違っているだろう。一時的平穏は教訓を伝えれなく、後の人間をより危険にさらす可能性がある。でも・・・・・・・・・・・・

「間違ってないと思うよ。お前は誰かの為にそれをやったんだ、自分を犠牲にして。それはとても凄いことだよ」

そう、俺を選んだのだって誰も悲しませない方法を考えて、苦肉の策として考え出した出した答えなのだろう。

「ふふっ、慰めありがとう」

どういたしまして、と言って俺は走り出した。

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