小説『dog days not勇者』
作者:maguro328()

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エルディーナ・アルティウムをしまった俺はガレットに帰るために歩いていた。さすがに色々あって走る元気がない。

それにしても髪の毛は腰の辺りまで伸びたままだ。つまり魔人化は解けてない。というか魔人になってしまった。

「マジか・・・・・・」

それにしても魔人になってしまったってことは、俺はみんなから忘れられたのだろうか?それは嫌だな。

色んなことを考えているとガレットに到着、俺は止められないか恐れながら入っていく。だが止められるどころか、普通に挨拶された。

どういうことだ?俺は忘れられていないのか?

そのまま何事もなく自室に戻ると、ベッドでエルディーナが寝ていた。こいつは何を呑気に寝てやがんだ。

俺はスヤスヤと寝ているエルディーナの耳元まで起こさないように近づいて

(起きないと、悪戯するよ?)

昔見た漫画の様に吐息がかかる距離で耳元で囁いた。するとエルディーナはすぐさま目を覚ましてベッドの端まで凄いスピードでよって、そのまま落ちた。そしてそこから顔だけ出した。

「ななななな、何をしているんだ!?」

「何って・・・・・・・・・・・・囁き?」

「いやいやいや!おかしいだろう?なんで囁いた!?」

うるさい。部屋に響く程騒がないでほしい。

「何でって、お前が寝てたから」

「いや、だから!・・・・・・・・・・・・もうやめよう。たぶん、終わらないな、この問いかけは」

「それで、魔神を倒したのだが?」

「倒した?封印じゃなく?どうやって?」

俺はその質問を予想していたのでさっき起こったことを多少端折ってだが話した。するとエルディーナは唖然とした。

「それでは君は今、エルディーナもアルティウムも持っているのか?それに魔人の力も残っている?」

「そういうことになるな」

証拠に宝剣も見せたのだがエルディーナはまだ半信半疑だった。

「なんか私がここまで悩んできたことが馬鹿みたいだな」

「いやいや、エルディーナも凄いって」

俺がそういうとエルディーナはハッと思い出したようになった後、口を開いた。

「私は、エルディーナではない・・・・・・・・・・・・ド、ドルチェだ」

「は?だってお前・・・・・・」

そういうとエルディーナもといドルチェは顔を赤くした。

「あ、あれは宝剣を持っていたし魔神を封印してたからで、ドルチェは私の本当の名前だよ」

何故わざわざ偽名を使った?とは訊けなかった。というか訊いても意味がない気がした。

「はぁ、それじゃ、初めまして、ドルチェ」

俺は笑顔でドルチェに手をさしのべた。

「う、うむ」

するとドルチェは俺の手を握ってくれた。

「それはそうと、俺はみんなに忘れられたのか?」

ここでやっと俺が訊きたかった本題に入ることが出来た。そしてドルチェも真剣な顔になった。

「あれは魔神を封印した時点で発動するものだから、魔神が倒されて紋章術自体がなくなった。だからみんなの記憶は無くなくなってなし、これからも無くならないよ」

「そうか。よかったぁ」

なんか、ようやく勝った気がしてきたな。うわぁ、なんか一気に疲れが出てきたわ。

俺はフラフラとベッドに倒れ込んだ。そして仰向けになって伸びていた髪を指でいじくった。

「しかし、魔人ていうか魔神になっちゃったな・・・・・・」

見えないから分からないが目は真っ赤なのだろう。

「まぁ、いいではないか。忘れられるわけではあるないし」

ドルチェの野郎は完全に他人事にして楽しんでやがる。

「それにしても、君は色々とやらなければいけないだろう?」

「はぁ?何だよ?」

「私の紋章術が解けて記憶は失うことを止めただけでなく、失った記憶は帰ってくるのだから」

そう言って俺の横に座った。

ん?記憶が帰ってくる?ということはつまり・・・・・・

「駿よ!」
勢い良く扉が開き、レオ様やジェノワーズ、ガウル、そしてビスコッティの方々(パスティヤージュ同行組)やクー様まで入ってきた。ってさすがにこの部屋の容量超えないか!?

「頑張りたまえ」

俺はこの後、数人にこれまで起こったことを話した。もう、歴史の先生になった気分だった。

*

説明が終わり、質問タイムも終わった。

みんなはまだ納得していない気もするがどうにか納得さした。そして俺が無理矢理に話を終了させて「こっちはそれで知り合ったドルチェだ!」と言って気を逸らしたのだが・・・・・・・・・・・・

「そうだな、初めまして。私はドルチェ、駿君の彼女だよ」

ぴしりと空間が固まった、気がした。

「違うからな」

「酷いなぁ」

そう言ってドルチェは俺の右手を手にとり指輪を外し、次に左手を持って指輪を俺の薬指にはめた。

すると固まった空間はさらに固まり、ついには氷点下に達したが気がした。

そしてとどめと言わんばかりに俺の唇に唇を重ねた。英語で言うとマウストウマウス、つまりキス、接吻である。

「ん!?んん!」

俺はドルチェの顔を両手で持ち、何とか離した。

「何をやってんだ!?」

「キスだよ?知らなかったかい?」

「知っとるわ!なんでこんなことやってんだ!」

はっと我に帰り、横を見ると何名かが顔を赤らめて、残りが目を輝かしてこっちを見ていた。

「あの〜・・・・・・助けては、もらえませんか?」

こう言いながら俺ずっとこっちに向かってくるドルチェを押さえている。そしてみんな助けてくれない。

「い、い、加減にしろ〜〜〜!!」

俺はドルチェの頭を両手でしっかりと持ちながら、一度自分の頭後ろに下げる。そして勢い良く、でことでこをぶつけた。

「痛いっ!」

それによりドルチェはベッドに倒れた。

「わぁ〜〜・・・・・・・・・・・・」

外野が何人か、そんな声を出した。

「何か文句が?」

「い、いや、そんなんじゃないんだが。てか駿、おめぇ何か変わったな」

俺の誠意が伝わったらしく、ガウルが話を逸らした。

「ん?う〜ん、なんというか、区切りです。元々俺自身も人を信じたいと思っていたみたいなので丁度いいですしね」

みたい、というのはけっこう無意識だったからだ。

「ということは・・・・・・・・・・・・?」

俺は一度そっぽを向いて頬を掻いた。そして再度みんなの方を見てできる限りの笑顔を見せて言った。

「改めて初めまして、天理駿です。よろしく、レオ様、ガウル、ジョー、ベル、ノワ、リコ、エクレ、ユッキー、クー様」

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