小説『dog days not勇者』
作者:maguro328()

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・疑問点の補足的な話2


俺は父は研究者だ。色んなことを解明するために日夜、研究をしている。俺はそんな父をいつも後ろから眺めていたのだが、一度父に「道具と人は最大限利用すべき」だと言われた。父曰く、道具は最大限に利用しないと使っているとは言えないらしく、それが出来てこそ研究は成功するらしい。そして人間も同じらしく最大限の力を引き出させてこそ、その人の本質が見えて信頼出来る様になるらしい。

父の言葉だし、俺も結構同意出来るのでこの言葉に従うことにしよう。だが人を最大限利用するなんてやり方が分からないのでとりあえず道具から。
ということであっちの世界だとゴールデンウィークであろうそんな日に俺は通信機を使うことにした。覚えているだろうか?俺とリコが2人で作ったやつだ。

折角これを最大限利用しようとしているんだ、通信機について少し補足しておこう。これはフロニャルドから地球へ通信出来る機械だ。モードは通話モードと映像モードの2種類、映像モードはリコの要望によりみんなで話せる様に作ったもので不思議な原理で画面からホログラムが現れる仕様だ。
今回は俺1人なので通話モードだけでいいだろう。

Prrrrrrr

そんな久しぶりに聞く電子音の後

『もしもし』

久しぶりにシンクの声を聞いた。

「シンク、久しぶりだな。駿だ」

『あ、駿。久しぶりだね〜』

ここからは少し世間話が続いた。こっちでの生活とかみんなの様子とか。まぁ、みんなの様子の方は俺が知らせるまでもないかもしれないが、俺観点からってことで。もちろん、魔神のことも話した。だがリコが既に話していた。ということでこれも俺観点から。

『へぇ、それじゃ駿は人を信用出来るようになったんだ』

「ああ、そういうこった」

さて、ここからが俺がゴールデンウィークに通信した理由の2つ目になる。

それがあっちでの俺の状態、たぶんだが俺は死んでいることになっている。だからその事件について聞かなければいけない。それなら一ヶ月くらい経ったゴールデンウィークくらいがちょうどいいのだ。
「ところで、シンク。そっちでの俺はどうだ?」

『こっちでの駿・・・・・・あ、えっと・・・・・・』

「成る程、死んだか」

そのごもりだけで十分分かるっての。そして正解らしく、シンクは小さく肯定した。

『それで『シンク、何してるの?』え?』

通信機からシンクのものではない見知った女性の声が聞こえてきた。

『シンク、それ何?シンクの携帯じゃないよね?』

『え、あ、そ、それは・・・・・・・・・・・・」

シンク結構困ってんな。しょうがない、助け舟だすか。

「シンク変われ。どうせ7月くらいにはばらすんだし」

『わ、わかった。七海、はい』

『え?あ、うん』

さて、どう話すべきだろうか?「あ、七海か?駿だけど」いやいや、これは駄目だろ。なら「俺が誰だか分かるか?」はい、分かりませんね、ということで却下。それじゃ、って悩んでてもしょうがないな。ちなみにこの間、0.3秒。

「七海か?おっひさ〜」

『・・・・・・・・・・・・』

「・・・・・・・・・・・・」

うん、これはないな。七海が反応の仕方にわからず、思考停止しちゃったし。

「えっと、七海?お〜い、大丈夫か?」

『はぁ!え、えっと・・・・・・駿、だよね』

もしかして意識失ってたのか?俺があんな挨拶したことがそこまで衝撃だったのか?

「御名答。で何か言いたいことは?」

『生きてたの?』

「生きてるよ。遺体も見つかってないだろ?」

反応なし。どうしたらいいのだろうか?さっきからペースを掴めない。まぁ、いいか。

俺は自己満足気味に七海に説明した。ただいきなりフロニャルドとか言っても意味がわからないだろうから行方不明になった意味とかを主に説明した。

『そんなことがあったんだ』

「ああ。そうなんだよね」

『でも、そんなことになってるなら私たちにも相談してよ』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・本当に七海は良い奴だな。まさか怒るより心配が先に出てくるとは。

「ははは・・・・・・昔は利益、不利益で全てが動くと思っていたから周りを信じられなかったし、そういう俺は嫌われてると思っていたんだ」

俺に近づいてくる人間はみんな俺を利用しようと、利益を得ようとしているだけだと思っていたんだよな。

『そんな、私は駿のこと嫌いじゃないよ。むしろ好きだし』

「ありがとう」

『それに駿は表面ではそう思っていても心の底では利益とか関係なく動いているよ』

「へ?」

なんかこっちに来てから俺自身のことを他の人から教えられることが多々あるような・・・・・・・・・・・・。

『だって、5年前だって私たち助けてくれたじゃん』

え?5年前?ってことは12歳くらいのはず、その頃に俺が七海達を助けた?

記憶を固く閉ざす鍵は自分では開けられない。だってそれは閉ざされた時点で鍵が消えて無くなるのだから。だから思い出せない、憶えてない。だけどそれを開ける方法はある。自分の中にないならそれを共有する誰かから鍵をもらえばいい。

俺の場合はそれが七海だった。俺の中で固く閉ざれたはずの扉は七海の言葉で開かれた。

どうしてこんなことを忘れていたんだろう。

俺は12歳の頃、シンクの親に誘われてシンクや七海やレベッカと一緒にキャンプに行ったんだ。

俺もそろそろ悩んでいるべきでないと思ってその誘いを受けたが結局本を読んでばかりだった。だが元気いっぱいの七海に無理やり連れられて森に入った。

けれども森で遊びすぎて辺りは真暗、さらにそうとう深くに入っていたらしく、俺達は帰れなくなった。レベッカ、シンクはまだ10歳で不安でレベッカは泣いたりもしていた。七海は2人を励ましながら必死に頑張ったんだがキャンプ場には帰れない。そうして時間が過ぎていき、七海もどんどん泣きそうになった。

俺はそれを本を読みながら見ていたんだ。そしてバタンと本を閉じて

「帰り道なら、あっちだぞ」

と指をさしながら言った。木一本一本にも違いはある。それを見ていけば帰ることなんて俺には容易だった。まぁ、これを言ったのは正直これ以上帰りが遅くなると色々面倒がありそうだったから、だったはずだ。

そうやって俺が先導してみんなをキャンプ場まで連れていった。その最中、七海少し怒られもしたが無事に帰ることが出来た。

もしかしてそのことを言っているのか?

「いや、あれは俺が早く帰りたかっただけだし・・・・・・」

『それなら駿1人で帰ればよかったじゃん』

「うっ」

確かにそれはそうだ。他の人間がどうでもいいならそれが出来たはずだ。

『私はあの時絶対にもう帰れないと思ったから、すっごい感謝してるんだよ』

「感謝か・・・・・・まぁ、利益を求めたっても言えるが」

『はいはい。それで?今どこにいるの?』

あれ〜?言ってなかったっけ?どうしようか、フロニャルドにいますよ、と言っても意味が分からないだろうし。

「そ、それはそうと俺ってそっちで死んだんだよな?」

『え、うん。後駿のお父さんの助手が捕まったってニュースで言ってたような・・・・・・』

「え、あの人捕まったの?」

これは朗報だ。俺が部屋に置いといた証拠を警察はちゃんと見つけてくれたらしい。まぁ、助手への怨みを書き連ねたり遺書的な物を置いてたりしたからあれが死んだっていう証拠になったとも思うが。

『それで「おっと今日は用事があったんだ、それじゃ」

後はシンクに全部任せよう、頑張れシンク。

俺は誰に見せるでもなく敬礼をした。

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