小説『dog days not勇者』
作者:maguro328()

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美保side

岡崎さんが家に来たあの日から1ヶ月が経った。天理君はあの後、何かを思い出したように帰っていき、次の日から少し余所余所しくなった。そうして天理君は何も言ってくれず、私も何も言えずに1ヶ月経ってしまった。だが、今日、2月14日、私はとうとう動き出す!そう、チョコだ。バレンタインだ!絶対に今日私は計画を成功させてみせる。

ということで今日放課後、天理君に教室に残ってもらいました。

「まさか、残ってくれるとは・・・・・・」

「期待されてなかったのか」

「まぁ、良いか。えっと、こ、これ・・・・・・」

私はチョコを差し出した。天理君はそれをしばらく眺めて・・・・・・・・・・・・何かを思い出したような顔をした。やっぱり忘れてたというか気にして無かったんだ。

「あんがと、えっとこれだけか?」

何かデジャヴを感じるな〜。でも今回の私はひと味違うのだよ!

「天理君、最近どうしたの?」

「・・・・・・・・・・・・なんでm「嘘つかないで!」・・・・・・・・・・・・はぁ・・・・・・」

天理君は何か諦めた様にため息を吐いてチョコを眺めた。

「別に嘘じゃないんだ。特に何か変わった訳じゃないし。ただ・・・・・・・・・・・・」

「岡崎さんでしょ?」

「はは、お前って鋭いな。そう、あいつ。あいつが・・・・・・・・・・・・俺の両親を殺したんだ」

私は息を呑んだ。この答えは予想外すぎる。天理君は私の顔を見てさらに補足をする。

「別にあの人が殺したんじゃないんだ。殺し屋に頼んでたんだ」

予想外すぎる。私とは別の世界に生きているのではと勘違いしてしまいそうになるくらい、天理君との違いを感じた。

「あ、え・・・・・・・・・・・・」

「すまんな、美保。それじゃ帰るわ」

私は一歩も動けず、何も喋れず、ただ帰っていく天理君を見ていることしか出来なかった。

*

結局、何も解決されず、時間は過ぎていき気がつけば終業式になっていた。

私は春休みにはどうにか天理君と仲直りしようと考えていたのだが、そんな時天理君から電話がかかってきた。

「ど、どうしたの?」

『実は、俺この春休みにちょっと旅に出ようと思ってな』

「あ、そ、そうなんだ・・・・・・・・・・・・」

早速私の計画が潰された。

『色々思ったんだがやっぱりこの方法しかないなって思うんだ。それだけだ、それじゃ』

「え、あ、はぁ・・・・・・・・・・・・」

電話切られちゃった。でも天理君、前より声は元気になってたし大丈夫だよね。

そんな私の期待を裏切って、数週間後、元神童の天理駿の自殺がデカデカと新聞と一面をかざった。

*

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

昔の夢を見た。まぁ、最後の場面から数ヶ月しか経っていないけど・・・・・・でも私が生きてきた17年間で最も衝撃的な1年間だった。
それにしても本当にあの後大変だった。あの記事を見た瞬間、私は涙が枯れたと思えるくらい泣いた。そしてショックのあまり数日学校を休んでしまった。

最初はそうやって混乱していたけど、1ヶ月経った時点で少し分かってきた。今思い返せばあの電話もそうだったんだろう。

そうして岡崎さんも捕まってもう2ヶ月も経ってしまった。天理君に関係するニュースも無くなって、私の心も癒えてきたのに何で今更こんな夢を・・・・・・・・・・・・。

と私はそこで私が起きた原因に気がついた。それはベッドの上に置いていた携帯だった。先程からずっと鳴っている。

「・・・・・・・・・・・・知らない番号だ」

そう言いながらも私は何故か電話に出た。

『お、繋がった。成功だな。美保元気か〜?』

聞いたことある声だ。それに向こうは私を知っているらしい。一体誰だろう。

『あ、そう言えば俺死んでるんだったな』

死んでる、それを聞いた瞬間、私はある人物を思い浮かべた。

「て、天理、君?」

『大正解』

17年間生きてきた衝撃的な出来事は更新された。

*

駿side

美保に電話する数日前、俺はフロニャルドに来る1年前の軌跡を夢で見ていた。まだ2ヶ月しか経っていないのにどこか懐かしい。
美保は怒っているだろうか?悲しんでいるだろうか?それは分からなかったが、とりあえず勝手に死んだことを謝りたくなったのでどうにかあっちの携帯と通信機を繋げれないかと思い、そして電波ジャック機を開発した。
で、早速美保に電話した。だが中々出ない。失敗だろうか?

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ガシャ

「お、繋がった。成功だな。美保元気か〜?」

返事がない、ただの屍のようだ。てか屍なら俺の方か。

「あ、そう言えば俺死んでるんだったな」

『て、天理、君?』

「大正解」

美保は電話越しでも分かる位狼狽している。それもそうか、死人が電話してきているんだから。

「美保、俺の死体って見つかったのか?」

『え、へ?えっと・・・・・・見つかってない、はず・・・・・・』

「実はな、俺は海へ身を投じたんだ」

『へ?そ、そうだったんだ』

美保は真面目に聞いてくれる。

「そうして死ぬ筈だった。だが、なんと!俺は深海の底にあるアトランティカへ運ばれて一命を取り留めたんだ!」

『えぇぇぇぇぇええええ!!』

まぁ、なんと素直な子だろうか。こんな明らかな嘘を信じてくれるとは。いや、俺異世界来てるからあながち嘘でも無いのか。

「そうして俺はたくさんの出会いをしてなんと強大な悪からアトランティカを救ったんだ!」

『えぇぇぇぇぇええええ!!』

「ま、嘘だけど」

『えぇぇぇぇぇええええ!!』

こいつ何言っても驚くんじゃねえか?

「実は異世界に来てるんだ」

『あ、そうだったんだ』

ズルッ

俺はベッドの上で1人こけた。

『それにしても・・・・・・良かった〜〜生きてたなんて。あれ?さっきのが嘘ならどうして・・・・・・?』

「あ、それはな・・・・・・」

俺は美保に結構細かく俺の物語を話した。美保も色んな反応をしてくれた。

「これで終了。どうだった?」

『もう色々驚きだよ。でもそっか〜天理君この2ヶ月で成長したんだね』

「すごいしたよ」

『それにしてもどうしていきなり電話してきたの?』

「へ?」

話はいきなり変わった。

『だから別に私に電話する必要なかったでしょ?それなのにどうして?』

「う・・・・・・・・・・・・それはだな、数日前夢を見たんだ。お前と出会ってからの1年間の」
『え?』

「それで、声だけでも聞きたいな〜と思って、電波ジャック機作って電話した。それだけだよ」

俺は自分が思っている以上に焦っている様で早口で説明した。

『そう、なんだ。・・・・・・実は私もさっきまでその夢見てんだ』

「え、マジで?すごい偶然だな、それ」

『偶然じゃないよ、きっと。だって私・・・・・・』

「駿君〜〜!」

「おぶっ!?」

全てが聞こえる前にドルチェが俺にタックルしてきた。

「さっきからそればっかりで私はつまらん!」

「は、はぁ?ちょっと離れろって!」

携帯は俺の手の届かない所にいってしまった。

「私は君が好きなんだ!構えよ!」

「なんだ、どうした!?そのキャラは!」

「いいから、構え!」

「だぁ〜〜!離れろ!」

「い〜や〜だ〜!」

「こ、の、アルテマキャノン!」

ズドーン!

これは俺が編み出した新技、ツッコミ用アルテマキャノン。何も破壊せず、ただ単なる純粋なツッコミをすることが出来る。

「ふぅ・・・・・・すまんな、美保」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

返事が無い。電話切れちゃったのか?そう思い、画面を見るがちゃんと繋がっている。

「美保〜〜」

『私・・・・・・』
「ん?」

美保は何か呟いていた。

『私、フロニャルド行きたい!』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?

*

美保side

『駿君〜〜!』

『おぶっ!?』

電話をしていると突然、女の人の声が聞こえた。そしてそれと同時に天理君の謎の声も聞こえる。

「て、天理君!どうしたの!?」

携帯を放してしまったのか返事は無い。そして天理君は女性と何か叫びあっている。その内容は良くは聞き取れなかったが

『私は君が好きなんだ!構えよ!』

その一言だけは何故か良く聞こえた。その後も何か叫んでいたけどそれどころではない。

好きだって・・・・・・・・・・・・!いやいや、これはあれだ、likeでloveじゃないって奴だ。きっとそうだ。その筈だ!

『ふぅ・・・・・・すまんな、美保』

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

どうしよう、さっきの話からするにフロニャルドでは女の子の友達が多いらしいし、もしかしたらもしかするかも知れない。

「私・・・・・・」

『ん?』

「私、フロニャルド行きたい!」

負けてられない、絶対に!!

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