小説『dog days not勇者』
作者:maguro328()

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美保side

ミルヒ様達との挨拶も終わり、私は天理君のバイクに乗ってガレットという場所に向かっていた。どうやら戦(天理君からそれなりに情報は聞いた)が始まったらしく天理君も結構急いでいた。

私はというと、16年間で一番と思えるくらい考えていた。議題がもちろん、天理君についてだ。

写真や映像を見てなかったので知らなかったけど、今日分かった。フロニャルドに住んでいる人達はとても可愛らしく美人だ。

例えばミルヒ様、まず第1に姫様なのだ。もうそれだけで彼女は気品なオーラを放ってとても礼儀がいいことが分かる。でもミルヒ様はシンクにベクトルが向かっているので大丈夫。

例えばエクレ、まさかのツンデレだった。しかも男勝りで活発な子だった。ああいうのは時々見せる乙女な部分が反則だ。けどミルヒ様と同じでシンクにベクトルが向かっていると思われるので大丈夫。

例えばユッキー、彼女は他の子と違って、何と言うか・・・・・・豊かだ。しかもそんなボディなのに内面は無邪気でスキンシップが多い。ここは・・・・・・少しグレーなのでノーコメント。

例えばリコちゃん、愛らしい、可愛がりたい、抱き枕にしたい。まぁ、私がそう思っちゃうくらい可愛いのだ。でも年齢的に恋愛対象でない、はず!天理君がロリコンに目覚めてないことを祈りたい。

たぶんガレットに行ったらまた美人さんがいっぱいいるのだろう。難易度が高すぎる。かなり、不利だ。

「・・・・・・・・・・・・」

「ん?どうした、美保」

「・・・・・・・・・・・・へ?あ、なんでもないよ?」

「そうか」

会話が終わる。うぅ、駄目だ。自分の駄目過ぎて天理君と話すことが思いつかない。何か、もう適当な思いつきでいいか、神よ!

「そういえば、最初の電話でいたドルチェさんだっけ?天理君のこと好きなんだっけ?」

「そうだけど、どうしたいきなり?」

「私も好きだよ、天理君のことおぉぉ!?」

バイクが左右に揺られて生い茂る木々にぶつかりかけ草むらに突入した。私もその所為で乙女にはありえない声を出してしまった。

「ど、どうしたの!?」

「す、すまん!けど、えっと、好きって・・・・・・LOVEの方で?」

「へ?」

あれ?そういえばバイクが事故りかける前、私なんて言ったっけ?確か・・・・・・・・・・・・・・・・・・

思い出した瞬間、私の顔は太陽にも負けないくらい熱くなった。私は自分の顔を確認出来ないから分からないけど、たぶん真っ赤になっているだろう。

「あ、えっと、それは!・・・・・・あの・・・・・・・・・・・・そうです」

「・・・・・・・・・・・・あ、あぁ〜と」

天理君は言葉を探して戸惑っていた。そういえば1年と数ヶ月前、体育館裏で同じことを言ったなぁ。その時は、真逆といっても良い位の反応だった。そう思えば天理君も成長したんだね。

「美保、実はちょうどそれについて考えてるんだ」

「え?」

「自分の恋心って言えばいいのかな?ながらく放棄してたからか感覚麻痺してよく分からないんだ。だから考えてる」

「そういえば昔、少女漫画のキャラの心情が分からないって言ってたね」

「だから答えは今出せない。俺がその恋心って奴を感じれたら答えるよ。まぁ、それがお前にとっていい答えかはわからんが・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・そっか、うん、いいよ。それじゃ、頑張るよ!私の美貌で天理君を振り向かしてうわぁ!?」

またバイクは大きく揺れた。きっとわざとなのだろう。その証拠にバイクは安全な道を維持している。

照れ隠し、だったらいいな。



「ガレット領領主、レオンミシェリ・ガレット・レ・ロワだ。よろしく頼むぞ、美保よ」

「あ、はい」

ガレット領に着いた私は天理君に連れられて領主、レオンミシェリ様とご対面した。レオンミシェリ様は案の定というか予想通り美人な人だった。髪はサラサラ、顔は整っており、スタイル良い。文句のつけどころがない。

まぁ、レオンミシェリ様のことは今はいいや、どうせ美人だってことは分かってたし。そんな事より、今気になるのは横だ。

「えっと、レオンミシェリ様」

「レオでよいぞ」

「あ、それじゃ、レオ様、彼女は?」

そう、横にいる耳も尻尾もない少女、天理君に会って抱き着きながら大喜びしている少女は誰なのか。それが私にとって今一番大事だ。

「七海か?七海はお主と同じ異世界から勇者召喚された勇者だが。どうせなら挨拶してきたらどうだ?」

「そうですね」



駿side

「駿〜〜!」

「ぐほぉ!」

ガレット到着、美保の奴をレオ様に会わせたと同時期にそんな声と共にお腹にタックルを決められた。何とかその犯人を見ると耳も尻尾も付いてなく髪は真っ黒だった。真上からなので情報は少ないが俺にはそれだけで正体が分かった。

「な、七海・・・・・・」

「よかった〜本当に生きてた〜」

心底嬉しそうな声を出して七海は言う。今日はやけに喜ばれるな。それにしても頭をぐりぐりするのは止めて頂きたい、非常にこそわい。

そうして少しの間、七海の好きにさしていると不意に俺の肩の誰かが手を置いた。何故かその手からは何か只々ならぬ気を感じる。出来れば振り向きたくない、のだが「天理君?」・・・・・・・・・・・・振り向かざる得ない。

「な、なんでしょうか、美保さん?」

「その子誰かなって思って」

「あ、ああ紹介しなくちゃな。おい、七海」

「ん?何?」

俺は巻付いた七海の手を解いて美保と対面させた。美保は先ほど見せていた張り付いた様な笑顔から普通の笑顔に戻っている。それが逆に怖い。

「こんにちは、私は天理君の友達で神崎美保といいます」

そう言って美保は何故か俺の腕に抱き着いてきた。

「あ、私は高槻七海、駿の幼馴染、かな」

「なっ!」

いやいや、何の抵抗か知らんがそんな情報言わんでいいだろ。てか、美保、何にショック受けてんだ?

「へぇ、駿って友達いたんだ」

「いるよ」

まぁ、確かにあんな性格じゃ友達なんて出来るはずも無いから七海の言うことは正しいっちゃ正しいんだが、こう言われるとなんか悔しい感じがする。

「高槻ちゃん、親交を深める為に少し話そっか」

「そうですね」

さっきの様子からこの様子、どうも変な感じがするが、まぁ、仲良きことは良いことだ、少しあのままにしておこう。

「うむ、七海にはすぐに戦に参加して貰いたかったのだが・・・・・・」

「まぁ、いいでしょう。これから14日間同じ国に住むんだし仲良くなった方がいいでしょ」

「まぁ、そうだな」

そうやって帰ってきた七海と美保は本当に仲が良かった。それはもうかなり奇妙だった。

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