エルディーナ・アルティウム、かつてとある国にあった二対一体の宝剣が1つになったものだ。元々神剣アルティウムが魔人に乗っ取られ、その力を雷銃エルディーナのに取り込んだことで生まれたものだのだが、実は1つの宝剣に2つの力を入れておくことは無理があった。かと言ってもう一度それぞれに分解することも出来なかった。
その結果、エルディーナ・アルティウムとしてその力をドルチェと俺で分割したのだ。そのおかげでドルチェはまた魔人と同等の力を取り戻し俺は初期のエルディーナ・アルティウムの半分の力しか使えなくなった。
しかもドルチェはずっとエルディーナと融合していた所為か、自分の輝力を他人の輝力と融合させるユニゾンという技を覚えた。ちなみに俺との相性が一番いいらしい(本人は愛の力だとほざいている)。
さて補足もここまで、場面を戻そう。今俺の目の前には怪しい笑顔のドルチェと気まずそうな美保がいる。
「美保、なんでここに?」
「あはは・・・・・・・・・・・・さっきぶりだね〜」
ぎこちなく手を振る美保、たぶんこっちに聞いてもあまり情報は入ってこない。
「・・・・・・ドルチェ」
「なぁに、折角の客人なんだし楽しんでもらおうと思っただけだよ」
なんにも悪びれずこっちを見て笑うドルチェ。
「いやいや、そもそもなんでお前が参加してんだよ?」
「実はそろそろ昔の勘も戻ってきたし傭兵でもやろうかと思ってね」
傭兵、雇われ騎士ということだろうか。色んな人と戦えるし、いいかもそれ。と今はそんなこと考えている暇はない。
「つまり今回はパスティヤージュにつくと」
「ああ。でも私も昔の人だ。だからここは若者に力を借りようと美保に協力を要請したんだ」
今の戦いに過去の人間が参加するのは無粋だとでも言いたいのだろうか?そんな理由でこいつがこんなことする訳がない。本当の理由はこっちの方が面白いと思ったから、とかだ。
「美保も賛同したのか」
「うん。服が破れるには嫌だけど天理君、とっても楽しそうだったから」
本当の笑顔で答える美保、どうやらドルチェに嫌々付き合わされている訳ではないらしい。なら
「かかって来い。その代わりこっちも本気でいくぞ」
全力で楽しむまでだ!
「こうこないと駿、負けるぜ?」
どうやらあっちも完全にやる気らしい。ドルチェは美保と手をつないで2人合わせて一言。
『ユニゾン!』
その瞬間、2人は真上に上がる光と共に姿を消した。俺はその光を目で追う。そこにいたのは一言で言えば魔女、元が美保だということは分かるのだが、ウェーブがかかった髪の毛は茶色から漆黒に、姿はさっきまでのカラフルな格好と違い黒いローブにとんがり帽といった典型的な魔女の姿だ。だが、持っているものが遠目で見れば杖に見えなくもないのだが、よく見ると先っちょは蜂の巣の様な形をした砲台だ。しかも周りに浮いている6つの黒い玉は赤い電撃を放っている。
とそんな美保の格好を説明している間に黒い玉は蜂の巣の周りをぐるぐる回り始め、そんな砲台を美保はこっちに向けていた。
「サンダァァァボルトォォォォ!!!」
光は一瞬、少し遅れて凄まじい音が響いた。と言ってもその音を俺は聞いている暇がなかった。美保が放った紋章砲は一直線に俺を包み込み半径数十メートルのクレーターを作る程の威力、俺は防御力が一番高いが目の前しか防げないディフェンダーを三重に全体を守れるが防御力が低い球型のシールドとバランス型の正四面体のブロックを2重、これでやっとぎりぎり防げた。俺もよく反応出来たものだ。正直奇跡に近いだろう。
「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・死ぬかと思った・・・・・・」
『よく生き残ったね』
「全開だったんだけど・・・・・・・・・・・・」
良かった。あれが試し撃ちとかだったら降参するとことだった。
『場所を変えよう、美保』
「あ、うん」
こっちのハラハラドキドキなんて知るよしもなく美保はドルチェと何かを決めて逆ピラミッド型の乗り物から飛び降りた。一瞬、冷や汗をかいたがどうやら心配ご無用、6つの黒い玉が赤い雷電をびりびりいわせながら大きな翼へと形を変えたのだ。しかもすっごいスピードでこっちに来た。
迎え撃つのも悪くないのだが、まだあっちの攻撃方法がはっきりしていない。あの紋章砲もそうそう何発もバンバン撃てないだろう、たぶん。てかそうじゃないと困る。だから俺は向きを180度変えてサンダーバードで走り出した。
「エレキボール!」
後ろからまた紋章砲いやあれは晶術か、雷の玉が砲台から数個出てきて曲りながらこっちに飛んできた。俺はそれを避けるのだが、突然ピタッと動きを止めて進行方向を変えてくる。どうやら追尾性とある程度の自動操縦があるみたいだ。
ドルチェもといエルディーナ・アルティウムの力をなめてはいけない。宝剣2つ分の力は半分になっても伊達ではない。だが、それは俺も一緒、だからエルディーナ・アルティウムをガンモードにしてエレキボールを全て撃ち落とした。
「ありゃ、やられちゃった」
『うむ、だが、どうやらこっちの勝ちのようだぞ?』
「あ、本当だ!」
勝ちってまだ秘策があるというのだろうか?美保の視線が向いている方に俺も視線を向けた。
『なんと3人目!パスティヤージュの勇者レベッカ、ここに誕生!』
なんと箒に跨った魔女というより魔法少女の姿をしたレベッカが映っていた。
「あぁ・・・・・・・・・・・・ミッション失敗ってか」
「そうだね、私たちの勝ちだね?」
『そうだね』
喜ぶ2人、ミッション失敗は正直悔しいが、レベッカが楽しんでいるならまぁ、失敗して良かったと思える。だから俺も目の前のものを楽しもうと思う。
「こうなったらガレットを今回の戦で勝利に導くしかないな」
そう、ミッションは失敗した。だが、戦はまだ続いている。独り言のつもりが美保に届いたようで驚いた顔をしていた。まぁ、ちょうどいい。ここは1つ本気の本気で行ってみるか。
「雷神モード」
俺は指輪状態の宝剣を付けている右手を前に出して輝力を集中。すると周りの木々は騒ぎ出し、雲が太陽を隠した。そして俺の周りに雷が発生する。その雷は見る見るうち輝く黄色から妖しい赤色に変色した。
『おぉと!急に曇ってしまいました!』
雷神モード、俺と魔神の輝力を完全に融合させたモードだ。これになれば身体の強度が上がってライジングモードの限界もマシになる。それによって普段無理な紋章術も可能になる。
『!?』
ドルチェはこの力を知っているからか顔を強張らせた。そして地上に凄いスピードで降りていった。美保との相談が無かったところを見るとドルチェも体を動かせるのだろう。
森に入った所為で見失ってしまったが、逃げるってことはないだろう。なら森へ来るように誘っているんだろうな・・・・・・。
「よし、ここは誘いにのってやるか」
じゃないとこの戦い一向に進まないし。
森に入ると先ほど俺が曇らした所為で思いのほか暗かった。これじゃ危険性が増してしまうな。演出の為とは言えとちったな、これは。
「晴れろ!て言っても晴れないか・・・・・・」
それで晴れてしまったら俺天候操れることになってしまう。そうなったらそうなったらで嬉しいのだが・・・・・・。
諦めて美保探しに戻ろうとしたところ木々の間から光が漏れ、俺に降り注いだ。
「ん?あれ?晴れてる・・・・・・」
空を見ると雲1つない晴天だった。
もしかして俺天候操れるようになっちゃった?試しに何度か命令してみる。だが、何にも起きない。どうやら操れるようになった訳ではないらしい。ならさっきのはなんだったんだ?空が空気を読んだのか?色々ややこしいな、おい。
「まぁ、その真相は後回しだ。今は美保だな」
空が晴れたので視界良好、という訳ではなく木々が邪魔でそれほどでもない。だが、明るくなったので木々の隙間も見える。これなら怪しい影くらいは分かるだろう。あれなら音で探し当てるのもありだ。よし、耳を澄ましてみよう。
聞こえてくるのは微かな解説の声と爆発音。いいな俺もあっちに混ざりたい。勇者になった七海やレベッカと戦いたい。
バシュン!
油断した瞬間、静かな森には少し五月蝿いくらいの音が背後から聞こえた。何かと思えば赤い晶術弾だった。俺はそれを反射的に避けて飛んできた方向に似たような晶術弾を放った。何かに当たった気配はない。だが、草木が揺れる音がないようなので避けられたようでもない。
そんなことに思考を傾けている間にも晶術弾は途切れることなく放たれる。しかも色んな方向からランダムに。どうやら美保が直接攻撃を仕掛けていないようだ。
そんな予想は当たっていた。木々の隙間から見えたものは先ほど美保の周りにいた黒い玉だ。数は分からないが、たぶん6つ全部がここで俺を狙っているだろう。翼を作るときもあの黒い玉を使っていたところを見るとここに降りたのもこれをする為だったようだ。
途切れるどころかどんどん増していくようにも思える晶術弾、スピードは大したことないので避けることは簡単なのだがこのままでは埒があかない。かといって明確は打開策があるかと聞かれれば無いのは事実。さて、どうしたものか・・・・・・。
「・・・・・・別に無視してもいいんじゃないか?」
そうだ、そういえば別に逃げた美保を追わなくても問題は一切ない。寧ろ新しい敵を見つけて倒した方がガレットに多くのポイントが入っていいんじゃないのか?
「ちょっと待って!?」
真剣に無視することを考え始めたところで美保が慌てた様子で繁みから顔を出した。
「お、美保。そっちから出てくるとは何事だ?」
「いやいや、無視する流れになってるの!?」
「そりゃ、見つからない人間を頑張って探しても時間の無駄だし」
『すごい結論だな。正しいのは確かだが・・・・・・』
呆れ気味に言うドルチェ。美保にはかくれんぼのときに見つからなかったら帰るのかと聞かれたが、生憎かくれんぼをしたことがないので分からない。そう言ったら憐みの目で見られた。
「兎に角!戦うの!分かった?」
「はいはい。それじゃ始めるぞ?」
美保と俺は5,6メートルの間を空けてお互いに武器を構える。2人で決めたことは非常に簡単、ただ本気の一撃をぶつける、それだけ。実にシンプルで分かりやすい。
美保は先ほどの砲撃を撃つ気なのか砲台の周りに黒い玉がぐるぐる回っている。それに対抗する俺の技はアルテマキャノン・・・・・・ではなく、雷神モード専用でいこう。
刀身が真っ黒な剣を出して、輝力集中・・・・・・
「サンダァァァァ・・・・・・・・・」
あっちが構えに入るのを見てこっちも剣を上に掲げる。
「ボルトォォォ!」
発射される美保の紋章砲。
俺は半分届く前に剣を振り下げた。
「魔神殲滅斬!」
放たれた黒い紋章剣は美保の紋章砲と激突する。最初は均衡していたが、時間が進むにつれて俺の紋章剣が圧していき、やがて完全に美保を包み込んだ。
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解説を入れたいけど入れ方がわからない。
文章のレベルが上がっていると信じたいmaguro328です。
ご意見、ご感想お待ちしております。