小説『dog days not勇者』
作者:maguro328()

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戦は滞りなく無事終了、リスを倒すのにも全力という獅子魂全開だったレオ様率いるガレットが1位、場数を踏んでいる勇者シンクがいるビスコッティが2位、元々戦が得意ではないパスティヤージュが最下位という結果になった。

自分のいる国が勝てたことは非常に喜ばしいのだが、ほとんどを美保との戦いに費やしてポイントを稼げなかった俺は残念な気持ちもあったりする。しかしそんな気持ちをいつまでも引きずるのもあれなので次の戦にぶつけよう。

そうして今はビスコッティのフィリアンノ城の一室に集合している。メンバーは領主3人に勇者3人魔神に魔人に客人の計9人、男女比率は7:2、アンバランスである。ちなみに魔人のドルチェは俺に膝枕をしてもらっている。

そんな中、クー様がレベッカに抱きついて駄々をこねていた。

「レベッカはもううちの勇者なのじゃ〜。返却したくないのじゃ〜」

「だそうなんですが・・・・・・」

どうやら本気で気に入っているらしい。てか、返却ってレベッカは誰のものでもないんだから・・・・・・・いや、シンクのものって言えなくもないか。
ドルチェ、頭をごしごししないで欲しい、こそわい。

「え、え〜と・・・・・・・」

「わしらに言われてもなぁ、保護者に聞け」

誰が保護者だ。それより美保、先ほどから視線が怖いです。殺気もれもれです。

「そっちの勇者、シンクと七海。それに駿!」

「「はい」」「ん?」

あ、俺だけなんか礼儀なしになった。

「パスティヤージュはビスコッティのお隣じゃし、4人で遊ぶ時間はちゃ〜んと用意する。じゃからレベッカをうちにくれ」

なんか娘さんを僕にくださいと似ているな。ならシンクがお父さんで七海がお母さんか。あれ?なら俺はなんだ?親戚のおじさんくらいか?『ペットだろ』ドルチェ、とうとう思考に入り込めるようになりやがったか。『ユニゾンが出来るんだ、このくらい造作でもない』さいですか。

「私からもお願い。私クー様の勇者でいたいんだ」

「なら、全然OK」

「クー様、ベッキーのこと」

「「よろしくお願いします」」

立ってお辞儀する2人。なんかさっきから俺だけ失礼な気がする。なんかあんまし目上の人感しないんだよなぁ。仕方ない。

「それで、駿はどうなのじゃ?」

「レベッカがOKなら何にも言えないだろ?そもそも俺の許可が必要か?」

「素直じゃないなぁ、駿は。そこは俺のレベッカは譲らねえぞ、だろ?」

俺は膝に乗っている頭を思いっきりゴツンとする。イテッで済むレベルではないものを。

「駿?どういうこと?」

「美保、冗談で殺気を出さないで」

「駿もお願いしたいそうじゃぞ?」

俺と美保とドルチェじゃ永遠と漫才を続けそうだったのでレオ様が無理やり締めました。

「お願いされたのじゃ〜」

お願いはしていない、と言いかけたがややこしくなるので黙っておこう。ちなみにドルチェは痛みに悶絶しているので思考に来れないよ。

「それで、美保はどうするんだ?」

「それこそわしらに聞くでない。お主が決めればよかろう」

「へ?なんで?」

「何故って、美保はお主の伴侶であろう?」

にやにやしながら聞いてくるレオ様。どうやら勘違いをしている訳ではなく冗談で言っているみたいだ。だが、冗談に取れない奴もいるのでこういったことはやめていただきたい。ほら、動揺しすぎて美保はベッドから転げ落ちたし。

「レ、レレレレレ、レオ様!?私たちまだそんなんじゃないですよ!?」

「そうだ!駿は私のものだ!」

まさかの痛みから蘇ったドルチェも参戦、いやまさかでもないか。それはそれとして笑っている筈の七海から少し恐怖を感じるのは気のせいだろう。

「モテモテじゃの」とレオ様とクー様。

「モテモテですね」とミルヒさん。

「モテモテだね」とシンクとレベッカ。

止めてほしい、みんな揃ってモテモテモテモテ言うのは。だからさっきから七海が何も言わず殺気めいたものを送っているのは気のせいだ。さっきと殺気はダジャレじゃない。てかダジャレとか言っている場合じゃない。

「はぁ、それじゃとりあえずガレットでいいですね、レオ様」

「ああ構わんぞ。じゃが、到着当日から別れることもあるまい。ちょうど三国共同で打ち合わせしたいこともあった。二日ばかりここに残ってくれ。クーベル」

「分かったのじゃ」

三国共同の打ち合わせ?もしかしてまた三国合同の戦をやるつもりだろうか?まぁ、楽しそうだから賛成だけど。

「じゃあ、その間は・・・・・・」

「ああ、勇者3人は自由行動じゃ」

おお、さすがレオ様太っ腹だ、な・・・・・・・・・ん?

「勇者3人?」

「お主らにも少し参加してもらいたい。魔神として」

「あ、はいわかりました」

マジで、何する気だ?レオ様




解散後、俺は用意された客間に行き、レオ様が考えていることを想像していた。

していたと過去形なのは実際に過去だからだ。一度休憩がてらトイレに行って帰ってきたらドルチェと美保がさも当たり前のように俺のベッドを占拠していた。そして俺はベッドに押し倒されました。それはそうとこいつらやたらと仲がいいのだが、一体全体何があったんだ?何か共通の話題でも・・・・・・いや、この話はやめよう。体温が上がってしまう。

「で、何しにきたんだ?」

「好きな相手の夜這いは当たり前だろ?なぁ、美保?」

「えっ!?私は・・・・・・・・・」

目的が違うところを見ると、一緒に来たわけではないらしい。

「私は?」

「ううん。何でもないよ」

「そっか」

歯切れの悪いところで止めてしまう美保。言いたいことがあるなら最後まで言えばいいのに・・・・・・。

「それにしても久しぶりの戦は楽しかったなぁ」

「あんまり老いぼれが無理すんいてっ!何すんだよ!?」

「私はどう贔屓目に見たってピッチピチの美少女だよ、駿?」

すごい剣幕で言うドルチェ。何故か今の言葉「これ以上言えば地獄を見せるぞ」と言ったような気がした。どうした俺の耳、謎の翻訳機能が搭載されてるぞ。

「私に関しては今はいいとして美保も楽しかっただろ?」

「うん!びゅんびゅん飛び回ってばんばん撃ちまくってすごい楽しかった!」

なんか小学生の感想みたいだ。まぁ、たぶん本心からの言葉なのだろう。

「しかし駿、君も隅におけないな」

「は?何がだよ?」

凄いニヤニヤした顔で言ってきた。非常に腹が立つ。

「こんな可愛い彼女がいるのに私を惚れさすとは」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?

一瞬、ぽかんとなってしまった。今ドルチェはなんて言った?美保が、俺の、彼女?ガールフレンド?

それは違う、いや、違わなくなる可能性もあるのだが、今は違う、今は。

それをドルチェに説明しようとしたところで美保が先に口を開いた。

「ち、ちちちち違うよ!天理君は、その、友達で、あ、でも彼女になりたくないと言えば嘘になるんだけど、今は、その告白したんだけど、保留中で、だから!彼女とか全然違うの!」

その慌てぶりにドルチェもちょっとの合間ぽかんとした。そして理解したのかこっちを見てニヤッとした。

「成る程、駿、君はまた保留していたのか」

「あ、いや、だから俺は人を好きになるってことが分からないから・・・・・・」

そんな言い訳をするとドルチェがぐっと俺に近づいた。その距離はお互いの吐息がかかる距離、後少しでキスしてしまう距離。

「ずっと疑問に思っていたのだが、それは本当か?本当は美保が君を好きなことを君は知っていたからじゃないのか?」

「!?」

まっすぐ俺の目を見つめるドルチェ。全てお見通しだと言わんばかりに澄んだその瞳。俺は、それを見て嘘は通じないと思った。

だから俺は2人に本当のことを話した。

実際、知っていたわけではない。俺のこと好きなのかなぁ、と思っただけだ。かなり傲慢で調子に乗っていると思われるかもしれないがそう思ったのだ。

だから死んだということにしたとき、少し胸がチクリとしたし、ドルチェに告白されたとき、チラチラと美保が思い浮かんだ。

だから俺は美保に電話をした。

そこまで話して美保を見ると、美保は泣いていた。

「ちょ!なんで泣いてんだよ!?」

「うぅ、だって、私、天理君の中で、ひっく、そんな大事にされてたなんて、嬉しくて」

「そりゃそうだろ。お前は俺を天理駿として扱ってくれたんだから」

そんな美保を置いて死のうとしたのは俺が弱かっただけだ。俺が耐えれなくなっただけだ。今考えれば美保を置いて死のうとしたなんて馬鹿だと思う。

「つまり駿は美保が好きなのか?」

ドルチェが完全に2人の空間だったのにそれを切り裂いて入ってきた。さすが魔人。

しかし俺が美保を好き・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「・・・・・・・・・・・・う〜ん、そう聞かれると頷けないんだよ。ただ単に美保が泣くの嫌だったからだし」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

本日2度目の沈黙。俺とドルチェが集まると沈黙が起きやすいのは気のせいではないだろう。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふ、ふははははは!!」

そんな中、最初に沈黙を破ったのはドルチェの笑い声だった。さすが魔人。

「結局、最初の言い訳も強ち間違ってないじゃないか」

そう、だから俺も後ろめたさなくこの言い訳を言うことが出来た。

それはそうと沈黙のときから美保の反応が見れない。美保を見てみるとぽかんとしていた。すごい、これでぽかん1周だ。また俺がやれば周るかな。

「でもそれなら美保が君に告白したときに答えればよかったんじゃないか?」

「・・・・・・だって、お前が告白した後だったからな」

そう言うとドルチェはぽかんとなった。俺順番抜かされた!?

「驚いた・・・・・・私のことも考えてたのか・・・・・・」

「そりゃそうだろ」

寧ろ考えないという発想は俺には無かったのだが。

「え?え!?結局私は!?」

するとそこで美保復活。話を聞いていたのかいないのか話に参加してきた。

「てか天理君!その考え方じゃあ誰とも付き合えずみんな悲しませるよ!?」

おお、話をしっかり聞いていた。案外侮れないな美保は。

「そう、だよな・・・・・・・・・・・・」

そうなんだよな。誰かと付き合って誰かを悲しませるならいっそ、ていう考え方は結局みんな悲しませるよなぁ。かといって2人と付き合うとか「その手があるじゃないか」・・・・・・・・・・・・は?

「どういうことだよ?」

てか頭の中に入ってくるんじゃねえよ。美保が話についていけずにあわふたしているじゃねえか。

「そうだね。ならちゃんと言葉にすると、先ほど君が言った2人とも彼女にするという発想、素晴らしいじゃないか」

何言っちゃってるんだ、この魔人は。それはつまり2股ということだぞ。

「いや、それは男として駄目だろ・・・・・・」

「何がだい?寧ろたくさんの女性から慕われている、というには誇るべきことだろ?」

「へ?」

「は?」

何やら話が噛み合っていない様子。女性に慕われているってそれじゃあまるで・・・・・・・・・・・・。

「なぁ、ドルチェ。フロニャルドの結婚の関しての法律、覚えている限りでいいから教えてくれないか?」

「ん?そうだね、一夫多妻制、一婦多夫制、女性同士も男性同士もOKだった筈だよ」

なんと自由はことか。結婚においての法律が皆無だと言ってもいいくらいだ。

「そっちは違うのかい?」

「ああ。こっちというか俺の住む国では2股なんて最低だ、と言っても過言でないくらいだ」

アフリカ辺りでは結構多いらしいが、日本では認められていない。それ程女性の立場が強いのか、それとも恋愛というものを尊重しているのか、どちらにしろ認められることはそうないだろう。

「そうか。だが、駿、君はもうこっちの住民だ。ならこっちの法律に合わせるべきだろう」

確かに郷に行っては郷に従え、という諺もあるくらいだ。だが、例えこっちの住人であるドルチェが許してもあっちの住人である美保は許すだろうか?

そう思って美保の方を見てみると目が合った。

「私は、天理君がいいなら、いいよ」

「そうか」

これで晴れて俺は2人と付き合うことになった。と思った瞬間、美保は言葉を続けた。

「ただし、2人と付き合うなら平等な愛を与えること!そしてこれ以上増えるならその子もそうすること!分かった?」

私だけを愛すること、とか言わない辺り2人は本当に仲が良いんだなと思う。

「大丈夫だろ?こっちの住民はシンクがガウルにメロメロだから」

ガウル親衛隊の3人はガウルにビスコッティの住民はシンクに。レオ様は・・・・・・どうなんだろうか?

そう言うとドルチェは呆れた目でこっちを見た。そしてため息を吐いた後、部屋を出ていった。

「え?何あの反応?」

「さぁ?」

その返しは絶対に知っている返しだぞ、美保。

だが、はっきりと訊こうとしたところで美保は俺にグッと近づいてきてチャンスを失ってしまった。

「み、美保?」

「改めてなんだけど、天理君、フロニャルドに連れてきてくれてありがとう。みんな優しいし戦もすっごく楽しかったよ」

「・・・・・・お前が行きたいって言ったからな。それにまだ1日目だ。こっからもっと楽しくなるぞ」

「だね」

目の前で満面の笑みを見せる美保。と一瞬、美保の顔は真正面からずれて頬の辺りに柔らかいものが当たった。

ほんの、ほんの一瞬だったが、確かに感じた体温、そして気づいたときには美保は俺から離れて扉を開けていた。

「それじゃ、おやすみ、駿君」

バタンと扉が閉まる音。俺はそこからしばらく柔らかいものが当たった頬に触れながらその場で固まっていた。
ーーー
駿のキャラが定まらない、maguro328です。
男爵様、意見をくださってありがとうございました。フロニャルドは一夫多妻制になりました。
全然関係ないのですがクーベルの「あい」という返事は可愛いです。
ご意見ご感想お待ちしております。

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