小説『dog days not勇者』
作者:maguro328()

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2人と付き合うことになったその翌日、俺は寝不足だった。あのキスに思いのほかドキドキして30分すら眠れなかった。前日からの徹夜も原因ではあるのだが、結構眠い。この眠気に身を委ねれば眠れるかも知れないがそうはいかない。

俺は重たい体・・・・・・の前に腹に乗っかっているドルチェをどかして立ち上がった。そして背伸びをした後、服を着替える・・・・・・前にこっちをじっと眺めるドルチェを部屋から追い出して服を着替えた。

さて、現在の時間は6時、30分後にはシンク、ミルヒさん、レベッカ、七海、美保と一緒に朝のお散歩に出かけることになっている。
だから眠れない。寝たいんでいかないと言っても絶対に意味がない。5人の包囲網からは逃げれない。数で負けている時点で勝てる筈がない。美保のお願いされたら断れる訳がない。

非常に甘くなった。いや、元がこうだったのか。それは今の俺には分からないが、俺はどうやら彼女に激甘のようだ。ドルチェにだって昨日一緒に寝たいって言うから一緒に寝たんだ。うん、甘々だな。

そうしている間に身支度は大体完了、時間も頃合いなので集合場所に向かおうか。たぶん、楽しみで仕方がないミルヒさん辺りは既に来ている筈だから。

そう思って集合場所に着くと既に全員集合していた。美保もきっちりと身支度を済ませているし・・・・・・いや、目の下に隈がある。もしかして昨日寝れなかった?

「おはよう」

「遅いよ、駿」

「そうですよ、駿さん!早く行きましょう!」

尻尾を振りながら抗議するミルヒさん。どうやら俺の所為でお預けをくらっていたらしい。悪いこと・・・・・・したのか?

寝不足のことを美保に訊きたかったが、このままミルヒさんにお預けしておくのもいけないので早速出発。

今回は俺もセルクルで行くことになっていた。また過去形、原因は美保である。何故か美保1人で近づくとセルクルがやたらと鳴くのだ。あの温厚なセルクルが何故か。よってセルクルに美保だけ乗れないのでサンダーバードで俺と2人乗りになった。ノーヘル、2人乗りは駄目だって?そんな法律はフロニャルドにないと何度言ったら分かるんだ。

ということで出発、前も思ったのだが、セルクルに合わせているとすごく遅い。だってサンダーバード、本気出せば音おいていけるから。でもやらない、だって死んでしまうから。

「駿君、どこでバイクの操縦覚えたの?」

のろのろと進んでいる間暇だったのか、美保は俺の胴体に手を回しながら訊いてきた。漫画とかではこういう場面で胸が当たってるとか思うのだが、生憎美保にはそういうのがない。美保の尊厳の為に具体的には言わないでおく。

「実践だな。元々偶々本を読んでたのもあるが・・・・・・」

「・・・・・・それってかなり危なくない?」

「そういえば、そうだな。1回目なんて普通のバイクと一緒だと思ってゆっくりハンドル回したら思った数倍スピード出て木にぶつかったんだよ」
あの時は大変だったなぁ。木にぶつかってかなり派手な音を出した所為でみんな何事だって集まって来たっけ・・・・・・。そしてノワに激しく怒られたんだよなぁ。怖かった、あの時のノワは怖かった。

「駿君ってかなり体はるよね・・・・・・」

美保はすっごい呆れた声で言った。見えないから分からないけど呆れ顔なのだろう。そう思っていると美保の回す手が強くなった。

「・・・・・・・・・・・・駿君が本当に死んじゃったら私、堪えれないよ」

「・・・・・・・・・・・・ああ」

なんで美保は時々こんなにど直球に言えるんだ。その所為で俺の顔が赤くなってしまう。気を紛らわす為に横を見ると暖かい眼差しのシンクがいた。

「なんだよ?」

「ううん。なんでもない」

なんでもない訳がない。なんでもない人間がそんな暖かい眼差しで人を見る訳がない。

てか周りをよく見たらレベッカもミルヒさんも同じような目でこっちを見ていた。七海は何かそれとは違う気がする。

「そういえば美保さん、駿君に変わってますね、呼び方」

どうしたのだろうか、七海は。じっとこっちを見ているのだけど・・・・・・・・・・・・。

「ああ実はね・・・・・・・・・・・・」

俺なんかしたっけな?昨日は少し話したけど、そんな怒らせるようなこと言った覚えないんだけど。

「え!駿と美保さん付き合ってるの!?」

突然シンクの驚く声が聞こえた。おいちょっと待て、なんでそれを・・・・・・・・・・・・。

「美保何話したの?」

どう考えても原因は1つで犯人は1人なので美保に訊いてみる。するとあたかも当然のように「昨日のことまるっと全部」と帰ってきた。いや、当然っちゃあ当然なんだけど、なんか照れるし止めてほしい。

「すごいですね、天理さん」

「レベッカ、その言葉はシンクに言ってやれ」

あっちの方がすごいだろ。1国のお姫様に好かれてその国の人たちからも好かれて。ん?なんか今ため息が聞こえたような・・・・・・・・・・・・気のせいか。

「そうなんだよ、レベッカちゃん。そしてこれからも増やしていくよ、駿君は。天理ハーレムを作り上げるよ」

「美保、折角シンクに流そうと思ったのに標的俺に戻さないで。てか天理ハーレムなんて変なもの作んなよ」

何度も言うがこっちの住人はシンク又はガウルだから俺はないって。増えないって。あれ?ドルチェが「やれやれ・・・・・・」て言った気がする。
こうしてずっと俺が標的となった話題で盛り上がり、目的の場所にたどり着いた。その間、七海があんまし喋らなかった気がするが、気のせいか?

目的の場所は綺麗な花畑だった。そしてセルクルを停めた(でいいのだろうか?)後、シンクは神剣パラディオンをフリスビーディスクにしてミルヒさんと遊び始めた。どうやら前来たときの日課だったようだ。

神剣の扱い方やミルヒさんの扱い方とか、つっこみたい部分がいっぱいあるのだが、その前にさっきからこそこそ話している女性組が気になる。
何やら偶に俺の名前が出ているような気もするのだが、しっかりと聞こえない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ!止めだ止め。なんか盗み聞きみたいで気分が悪い。

俺は花畑で横になって空を仰ぎ見る。

朝だからか、夏だというのに優しい太陽、木々の隙間から吹く心地よい風、花のいい香り、そして寝不足。

ああ、ベストコンディションだ。これはやばい、すぐにでも夢の世界へ旅、だ・・・・・・て、r「寝るなぁあ!」

「ごふぅ!」

ポップコーンも買って、いい席に座って、夢を見る準備が完了していたのに美保のフライングアタックによって引き戻された。あぁ、ポップコーンが無駄に・・・・・・なってないな、例え話だな。

「いってぇ・・・・・・なんだよ、美保」

「こんな素晴らしいとこに来て何寝ようとしてんだぁ!遊ぶよ?」

「はいはい。それで何して?」

訊くと美保はシンクたちの方を指さした。フリスビーやろうということだろう。

「いいけど、フリスビーは?」

「あるよ」

そう言う七海の手には既に青いフリスビーがあった。さすがシンクの師匠とでも言ったらいいのだろうか。

「ルールは?」

「4人で投げ合って落とした人から脱落。勝者は敗者1人に命令が出来る」

「投げるときは名前を呼ぶこと」

七海とレベッカがすらすらとルールを説明した。まるで決めていたかのように、いやさっきのひそひそ話はこれか。

「まぁ、それでいいよ」

ということでゲーム開始。一応無茶過ぎるものは無効というルールを付け加えといた。無かったら後ろとかに投げそうだから、主に俺と美保が。
最初は七海から始める。七海は軽く受け取りやすいようにレベッカの名前を呼んで投げた。フリスビーは一切のブレなくレベッカの元へ、まるで吸い込まれるかのように飛んだ。さすがとしか言えないな。

次にレベッカか美保の名前を呼んで投げた。七海に教わったのか、その軌道は少し曲りながらも楽に取れる場所に飛んだ。

俺をはめる為に何かしてくるかと思ったけど検討違いだったらしい。このまま順番的に次は俺か。

フリスビーに集中してどんとこいと思うと、予想通り美保は「駿君!」と叫びながらフリスビーを、思いっきりぶん投げた。それはもう思いっきり。こっちに来ていることが奇跡と思えるくらい。

しかも山なりなら走らずにいけるかも知れなかったのだが、美保のそれは超低空、いつ地面についてもおかしくない。

無茶だと言えなくもないのだが、こっちに来ている以上、多数決とかで負けるだろう。だから走る。そして全速力で走った結果、何とか間に合った。日頃の訓練の成果がこんなところで出るとはまったく思わなかった。

「美保、お前な!」

「ごめ〜ん。ミスっちゃった、てへ」

べろを出しながら自分の頭をこてっとする美保。

仕草は可愛いがやっていることがえげつない。前言撤回だ、これは4人の戦いではなく3対1のいじめだ。

反撃に出たいがここで無茶なことをするのは不利になりそうだし男としても年上としても避けたい。俺は無難にレベッカの名前を言って取りやすいように投げた。

その後はランダムに投げ合ってフリスビーを楽しんだ。俺をはめる気はあるみたいだが、普通に楽しみたい気持ちもあったのだろう。七海とレベッカを普通に投げてくれる。もしかしたら美保はただ下手なだけだとも思ったのだが、七海とレベッカのときは寧ろ上手いと言えるくらいだったのでやはりわざとだった。

そうして投げ合ってレベッカ、美保と脱落していき俺と七海だけが残った。結構無茶に投げているのだけど七海は難なくそれと取ってしまう。正直俺はさっきから右へ左へと七海に遊ばれている感が否めない。これは帰ったらお風呂直行だなってくらいこっちは運動している。だが、ここで負けてしまうとどうなるか分かったものじゃないのでぎりぎりまで頑張る。

「駿君〜諦めたら〜?」

「嫌、だね!」

美保の叫びに答えながら右へ飛んだフリスビーをなんとかキャッチする。そして七海へ投げ返す。七海はまた難なく取る。

「まだまだ!」

俄然やる気の七海さん。ここは俺が勝つことを考えるより俺の安全が保障される未来を勝ち取る方法を考えなければいけない。せめてシンクとミルヒさんが帰ろうと言ってくれればこの勝負は流れるのだが、2人ともこっちを見てどっちが勝つか話している。この方法は無理だろう。それ以外、この勝負を続けるか続けないか・・・・・・・・・。

続ける場合、このまま七海に弄ばれてこの後の三国合同の打ち合わせに欠席もしくは死にそうな状態で出席して後でレオ様に色々言われて償いをさせられる。

続けない場合、七海と後2人(勝者だけの筈だが、些細な問題だろう)の無茶な命令によって心身ともにボロボロになる。何を命令されるか分からないが、嫌な予感しかしない。

考えた結果、俺は女子3人かレオ様の(言い方悪いが)下僕になる。どっちを選んでもいい気がしない。

だが、どっちか選ばなければいけない。どうする?悩んでいる間にもフリスビーはこっちに来る。俺はそれを取ろうと全速力で走った。

「あっ」

しかし神様は残酷だった。答えが決まる前に足が縺れて俺はこけてしまった。その所為でフリスビーはふわりと地面に着いた。

そして俺は負けてしまった。




「で俺は何をしたらいいのでしょうか?」

勝敗が着いた後、俺は花畑で倒れながら七海に訊いた。すると七海は人差し指を頬に当ててう〜んと唸った。あれ?決まっていたんじゃないのか?てっきりそれ目当てでこのゲーム始めたんだと思っていたんだが。

「う〜ん・・・・・・じゃ、じゃあ今日部屋に行っていい?」

「え?そんなんでいいのか?」

美保がもっとえげつないことを吹き込んでいるかと思っていたけど、どうやらあてが外れたらしい。

「レベッカちゃん、もしかして七海ちゃんってそういうの苦手?」

「みたいですね・・・・・・・・・・・・」

後ろにいる2人の言っていることが気になったが、聞き返しても答えてくれないに違いない。

「というか、駿君大丈夫?」

「大丈夫だったなら倒れてないぞ」

七海からのいじめとも取れるフリスビーによって俺の足はボロボロだ。もう立てない。いや、立てるかもしれないが、立ちたくない。

「それじゃあ、置いていく?」

「いや、それは駄目でしょう」

シンクの言うとおりだ。本当に美保は俺のこと好きなのか?

「てか、お前サンダーバードじゃなけりゃあ帰れないじゃねえか。俺が帰れないとお前も帰れねえよ」

「あ、本当だ!ちょっと駿君起きてよ〜」

「揺らすな・・・・・・・・・・・・」

たく、しょうがない。ドルチェ、聞えるか?「なんだい?」動けないので手を貸してくれ。「貸し1だね」・・・・・・・・・・・・だから嫌だったんだ。

『こんにちは、美保』

「あ、あれ?ドルチェ?」

いきなりのドルチェの登場に驚く美保。何をお願いしようか・・・・・・・・・・・・ここに入ってこないで、ドルチェ。

「帰りはドルチェに任せるよ。じゃあ、少し寝るから」

そうしてすぐに俺の意識は途絶えた。



「体は駿君のでしょ?どうして動けるの?」

「動かしているのは私だけど感覚は駿と繋がっているから全部駿の方に行くんだよ。今は麻痺しているから大丈夫だけど戻ったら一気に痛みがくるよ」

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