俺は今、三国協同の会議に出ている。体ばてばてでもうベッドから動きたくないので今回は欠席でってレオ様に言ったのだが、大丈夫だと言われて無理くり引きずり出された。
「レオ様、自分で歩きますんで引きずるには…………」
「ん?そうか?」
俺の襟元から手を離すレオ様、軽く息が出来なかったので助かった。そのまま立ち上がって、歩き始めたレオ様の後に続く。そうして目的の場所に着くとクー様が既に座っていた。1人で待っているのが暇だったのか自分の尻尾に抱き着いている。あの尻尾ふわふわなんだよなぁ。
「おぉ、駿。やっと来たか」
「おはようございます。クー様」
挨拶を済ました後、俺は丸テーブルの4人席、クー様と向き合うように座る。俺の右側にはレオ様、左側は空席だ。どうやらミルヒさんはまだ来ていないらしい。それならばもう少し寝かしていおいてくれても良かったのでは?とレオ様に訊いたら1国の姫を待たせることは駄目だと言われた。2国はいいのかと訊きたかったが、怒られるので自重しよう。
「というか、なんで俺は呼ばれたんですか?」
「それはミルヒが来てから話す」
さいですか。
「それにしてもうちもレベッカを勇者に迎えられて、めでたしめでたしなのじゃ」
満面の笑みで言うクー様。確かフロニャルドって同性愛OKだった筈、そうか、クー様はレベッカが好きなのか………………駄目だろ!?いや、法律的には駄目じゃないけど……………………。
「これで3国に3勇者、戦興業も盛り上がりそうじゃな」
「うむ、レベッカの実力も予想以上じゃったし、その上、思ったよりずっと優しくてかわいくて、うちはハッピーなのじゃ〜」
自分の尻尾を抱きしめて悶えるクー様。その後に尻尾に顔を沈めて小さく「レベッカが男だったら、速攻でプロポーズしていたところじゃ…………」と呟いた。あれ?フロニャルドって同性同士の結婚OKだったんじゃ…………ドルチェの記憶違いだろうか?
「レオ様、フロニャルドって同性の結婚OKだって聞いたんですけど?」
「ん?ああ……確か昔は良かったと聞いたが、子孫の問題で駄目になった筈じゃ」
そうだったのか。やっぱりドルチェは古人なんだな。“何か言ったかな?”お前の知識が古いということを言ったんだ。“言うようになったじゃないか”そりゃ、どうも。
そんな話“痴話喧嘩とも言う”をしているとクー様がこっちを見て頬を膨らましていた。ますますリスみたいだ。
「駿よ。うちじゃって乙女じゃ!普通に男の人と付き合いたいに決まっておろう!」
「へぇ……クー様好きな人いるんですね」
まぁ確かにクー様も女の子だからな。そう思って言うとクー様とレオ様に睨まれてため息を吐かれた。
「え?なんですか?俺何か変なこと言いました?」
「いや、それでこそ駿じゃな」
「そうじゃな、レオ姉」
一体何なんだ。“はぁ…………”お前もか、ドルチェ。何気に一番深いし。
「すいませ〜ん。遅れました〜」
何か文句を言おうとした矢先、ミルヒさんが来た。それによりレオ様もクー様も真面目なムードになってしまい、俺は何も言えなくなってしまった。
「では、始めるか」
「何をしでかす気ですか?」
今回の会議、俺は詳細どころが概要を一切聞いていない。
「今回の3国合同の戦、あれを行って思いついたのじゃが、ビスコッティ、ガレット、パスティヤージュによる歌あり、踊りありの大型興業を行いたいと思うのじゃ」
レオ様の説明は決めたばかりで大雑把だが、言いたいことは大体分かった。
「わぁ!楽しそうですね!」
「おぉ!さすがレオ姉じゃ!」
瞬間で2人は賛成、本当にフロニャルドの人たちは楽しいことが大好きなんだな。まぁそういう俺も賛成なんだが。
「それで、俺はなんで呼ばれたんですか?」
「駿よ、お主には魔神をやって欲しいのじゃ」
既に魔神をやっちゃっている俺は夏から魔神始めましたの広告を張り出すことは出来ない。そもそも俺が魔神をやるのと大型興業がどう関係するというのだ。
「実は催し物として勇者対魔神をやろうと思うのじゃ」
顔に出ていたのかレオ様は人差し指をピンと立てて説明してくれた。
「なるほど、確かにそれは面白そうだが、俺は最終的に負けたらいいのか?」
魔神が勝ってしまったら縁起が悪いことこの上ない。
「ふむ、そこは気にせんでいい。本気でやってくれてかまわん」
「そっか。まぁ、勇者三人はさすがにきついけど…………」
あいつらは絶対に手加減しないからな、特に七海。別にして欲しくもないが…………。
「とりあえず、引き受けるのじゃな?」
「俺もその祭り事は楽しみたいですし。一応領主様の頼みってことで」
「そうか。よろしく頼むぞ」
こうして俺は魔神として大型興業(名称考え中)に参加することにした。そしてその後も4人で色んな案を出し合ったり、大まかな日程を決めたり、お喋りした。
美保Side
朝の散歩の後、汗をかいたのでお風呂へ向かった。昨日も入ったけどあんなに大きなお風呂何回入ってもいいものだ。たぶんしずかちゃんは分単位で入るね、賭けてもいい。
そんな訳でお風呂の後、リコちゃんとエクレちゃんがここフィリアンノ城を案内してくれると言ってくれたのでシンク君、七海ちゃん、レベッカちゃんと一緒にお城を見て回っていた。お風呂シーンがあると思った?ないない!
「ここが書斎であります。自分はここでよく駿様と一緒に研究しているであります」
「おぉ、本がいっぱいだ〜」
ということで現在は書斎、どんな本があるか気になって読んでみたけどフロニャ文字という文字で書かれていた所為でどれも読めなかった。
「リコちゃんが駿君に文字教えたの?」
「いえ、何故か最初から知っていたであります」
「え?なんで?」
もしかしてお父さんが元勇者だったの?いきなりそんな設定持ってこられても…………まぁ、受け入れるけどさぁ。
「リコ、たぶんそれは違うよ」
「どういうこと、シンク?」
「たぶん駿は本から読みとったんだと思うよ」
…………………………………………………。
「いや、シンク君、そっちの方が驚きだよ!?」
「そうだよ、シンク」
「だって駿頭いいし、それくらい出来るかな〜て」
それくらいという表現は絶対に間違っている。一から翻訳するなんて難しいなんてものじゃない…………ないよね?私が馬鹿なだけじゃないよね?確かに私は駿君がここに来た後、つまりは2年生の前期中間と前期期末のテストは後ろから数えた方が早かったけど。
「そういえば駿って頭良かったんだっけ」
「うん。その筈」
七海ちゃん、レベッカちゃん、いくら最近駿君がその頭脳を披露する場面がないからってそれは無いと思うよ…………。きっと描写されていないだけで裏ではすごい筈だよ。
「駿様はとても賢いでありますよ!自分も学ばせてもらったであります」
「リコは駿のこと大好きなんだね」
「はいであります!」
うわぁ、元気いっぱいに肯定しちゃった。満面の笑みだよ〜。天理ハーレム一応冗談で言ったんだけど強ち間違いでもないよ。とりあえずこの好きはラブじゃないことを祈っておこう。
続いて来たのは訓練所、ビスコッティの人たちが次の戦に向けて訓練に励んでいた。
「さて、勇者、1本やるか」
「うん。やるやる!」
「お前が留守の間に鍛え続けた…………」
そう言って背中のベルトにあった2本の剣の柄をそれぞれ抜いて、上空に投げた。そして後ろにある練習用の障害物を使って上空へ飛んだ。回転する2本の剣、エクレちゃんは冷静にそれを掴んで見事に着地、シンク君に向かい構えた。
『おぉ〜』
全員がそんな声を出した。
「へぇ、エクレちゃんもエクストリームキャッチするんだね」
「勇者様の影響であります」
「七海ちゃん、エクストリームキャッチって何?」と聞くと七海ちゃんは当然の様に答えた。ようするにまさに先ほどエクレちゃんがやったことだった。物を使って如何にアクロバティックするか、そんな競技らしい。普通知らないよね?私が知識不足な訳じゃないよね?
「レベルアップした、私の剣術受けてみろ!」
エクレちゃんのその言葉で訓練開始、ビスコッティの兵士の1人がシンク君に剣を投げ渡す。真剣で戦ってるけど、シンク君怖くないのかな?
「それにエクレちゃんがしてるのシンクが前に持ってたリストバンドだよね」
「うん」
「シンクのお気に入りだったやつ」
へぇ、地球に帰る方法を聞いてたけど、エクレちゃんはリストバンド貰ったのか。それを付けているということはこれはもう決まりかな。
「リコちゃん、エクレちゃんもシンクと仲良いの?」
「いいコンビでありますよ。見てて飽きないであります」
「そっか、エクレちゃんはシンク派なんだ。お姫様にツンデレ剣士ってライバル多いね、レベッカちゃん」
「あはは…………お互い様ですね」
その後も続いた二人の訓練はシンク君の勝利で終わった。さすが勇者だね。それにしても戦っているエクレちゃんの顔は楽しそうだったし、負けて本気で悔しがってたなぁ………………シンク君を好きって自覚無いのかな?
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1週間投稿しようとした結果がこれだよ!誠に申し訳ございませんでした。
こうさん、いつも感想ありがとうございます!maguroは皆さんの優しさで成り立っております。自分の作品が他者に楽しんでもらえるというのは何時になっても良いものですね。ご意見ご感想待ってます。