小説『真剣で僕に命じなさい!〜S〜』
作者:時雨葵()

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〜第十四話 球技大会 終〜


「凪…ここからは我に頼む!」

「任せるね…しっかり取るから」


〜球技大会から5日前〜

「凪よ!放課後我に時間をくれないか?」

「まー何も無いからいいけど…」

凪が英雄の指定した所そこは九鬼の特別室内グラウンドであった
英雄が野球のマウンドに仁王立ちしていた…ふんどし一丁で

「よく来てくれた!凪!感謝する!!」

「何となく察するが…今年は球技大会だっけ?それで?」

「川神ボールがあるのだが…久方ぶりにマウンドに立ち投げたくてな!!」

「でも、英雄は肩壊したんじゃ…」

「ああ・・・フルでは投げれないが少しは投げれるだろう…
そこで凪に捕手として捕って貰いたいのだ」

「御意…でも無理はさせないからね」

「わかっている!これで一子殿に我の勇姿を少しでも見せれよう」

その日から放課後は凪と英雄の肩慣らしの時間になった


〜時は戻し今〜


サドンデスに入りS組からなのだが
やはりホームランは取られ
ピッチャーのキレもよくなっていた
話によると大和が京の頭を撫でたそうだ
恋する乙女と言うより
恋する京恐るべしである

『守備位置交換をお知らせします。三上君がキャッチャーに九鬼君がピッチャーに』

バッターはクリスからである

「自分も義経のようにフェンシングの構えで!!」

だが、英雄の剛球は凄まじいものがあり
簡単には打てず
お互い点は取れず

7回裏
一子の打席になった
カウントはフルで何とか一子が粘りファールを出してる状態であった
F組ベンチも祈るしか出来なかった

「一子殿!流石だ!だが、我も負けはしませんぞ!」

「アタシも負けないわ!!」

(英雄の肩も限界だろうに…もう難しいかな)

英雄は全身全霊で投げた!!
野球少年だった英雄にとって
野球で手を抜くことなど絶対にしない
しかも、相手が一子なら尚更だ
惚れてる相手に侮辱にあたる

だが英雄の肩は疲れていた
ど真ん中にストレートを投げてしまった
一子もそれを見抜き
勢いよく振った

こうも簡単に勝敗が決まることがあるだろうか

一子が打ったボールは天高く飛びフェンスを越えた
審判の声が響いた

「ホームランじゃ!そして、試合終了!!F組の勝利じゃ!!」

『ホームランだ!!最後は見事ワン子が決めた!!』

『よかったねモモちゃん!』

F組は歓喜し一子をホームで迎え胴上げをしていた

S組の選手はマウンドに集まっていた

「あら〜見事に打たれたな!まー良い試合だったじゃないか」

「たのしかった〜♪」

「義経も楽しんだぞ!」

「僕の采配ミスかな…」

「我も最後にすまぬな…凪」

「英雄のせいじゃないよ…」

互いに礼をしてベンチに戻ろうとした時であった


「なんだよ!九鬼打たれてやんのダセーw」

「いつも頂点とか言っといてよーwww」

「プレミアムに不甲斐ないです先輩方」

「何が九鬼だ!偉そうにしてたくせに」

「S組の恥さらしだよな〜」

どこからか負けたS組にたいする蔑みが聞こえた
英雄は聞こえても気にしないでいた
あずみも後で消そうとしていた
だが・・・

暴言が聞こえた方に殺気が飛んだ
何人かは気絶をするぐらい

周りにいた
力ある者は皆構えたぐらいの
大きい殺気を放った者…それは

「誰?今英雄に対して侮辱したのは…」

ゆっくりとその暴言が聞こえた方に凪が歩いていた

「前に出テ来イ…出て来なイナらコっちカラ行ク…」

「おい!ナギ!抑えろ!!」

「三上君!?だめだ暴力は!!」

皆凪がさっき心に怒鳴った時とはまた違う凪になっているので
押さえるのに必死だった
凪だって怒ることもあるだろう
だが…今の凪は人を殺しかねない
そんな感じがしたのである

「放セ!!英雄ヲ侮辱しタやつを許セない!!」

「そうよ!!九鬼君は真剣勝負をしてくれたのに!謝りなさいよ!」

一子も良い気分にはなれなかった
全力で戦った相手には感謝するものと
教えられている
色々やり過ぎな事もあったが
それを抜きにしても真剣勝負をした相手なのだ
一子も腹が立っていた

だが、その険悪な空気を一人の男がかき消した

「もう良い!!凪に一子殿。我は気にしていない
我は王なるぞ。こんな些細な事で止まらぬわ!!
一度や二度負けることもあるだろう…
だが、それを糧とし上に上がる者。逆に重石とし落ちていく者
我は前者だ!!糧として更なる高みに足を進める者よ!!」

いつも自分は王と言っているだけはあり
英雄はHEROなのだ
民のための王
それが英雄の目指す王の姿なのだ
そんな王がいつまでも下を向いていては
その国は落ちるのみである
英雄はそう思っていた

「F組よ良い戦いだっだ!!また機会があれば戦おうではないか!!
フハハハ!!先に教室に戻っているぞS組諸君!!」

「お待ちください!英雄様☆」

英雄とあずみは笑いながら校舎に入っていった

準と義経に捕まっていた凪も落ち着いていた

「大丈夫だよ…ごめん…具合悪くなってきたから保健室行って来るね…」

そう言うと凪も校舎の方に向かった


球技大会も終わり皆が帰路についた頃
凪も保健室から帰宅しようとしていた
カバンなどはどうやら誰かが持ってきてくれていたようで
置いてあった

帰ろうとするとあずみさんが玄関にいた

「おぅ。凪…英雄様がグラウンドで待ってる…」

「はい・・・」

マウンドの上で仁王立ちした英雄が夕日を見ていた
凪が来た事に気がついたがこっちを見なかった

「凪…最後の最後にやられてしまった」

「ワン子に打たれたね…」

「野球は…我にとって大切なものだ!野球が無ければ
今の我が居ないと言っても過言ではない」

「だろうね・・・」

「他の事では気にならないのだが
野球で負けるとやはり悔しいものだな…」

「無理しなくていいんじゃない?」

「王は泣かぬわ!!」

「親友の前ぐらい王は王でも泣いていいと思うよ・・・」

「我のために怒ってくれてありがとうな…凪・・・」

「いいって・・・親友なんだから・・・」

「やはり…野球で負けるのは悔しいな・・・」

そう言いながら英雄は夕日を見ながら
拳を強く握り締めた…
そして、頬には一粒の雫が落ちた



〜おまけ 秘密基地〜

「F組勝利!かんぱーい!!」

「「「かんぱーい!!」」」

秘密基地には
凪を除く風間ファミリーが揃っていた

「おい!凪は呼ばなくて良かったのか?」

「さっきメールしたけど楽しみなって」

「敵だったんだ…気が引けるだろ」

「でも、最後のホームランは凄かったな」

「九鬼君は強敵だったわ!」

「俺は凪の作戦に嵌められたな・・・」

「凪が…大和に…ハメた!!これはいいモノだ…ハァハァ」

「京〜帰って来い!」

祝勝ムードの中・・・大和は爆弾を投下した

「球技大会も終わったし…残すも夏休み前の期末考査か…」

「「グハッ!!」」

一子と岳人が倒れた…

「あれ?姉さん大丈夫なの?」

いつもなら百代も一子達の様に
ダメージを受けるか寝るかなのだが
鼻歌まで歌っている

「今回は燕が教えてくれるんだ〜その後に稽古も一緒にな〜」

百代は勉強を教えてもらうより後の稽古のほうが嬉しいのである

「ああ!私も伊予ちゃんと勉強会しようと思ってます。」
「そうだぜ!!伊予ちゃんと一緒にStudyだぜ!」

由紀江もどうやら友達とするみたいである

「凪も居るし…何とかなるだろ・・・・」

夏休みまでまだ遠い…

-15-
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