小説『真剣で僕に命じなさい!〜S〜』
作者:時雨葵()

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〜第二十話 夏休み前夜〜


大会告知があった週の金曜集会
秘密基地には皆集まっていた
話題はもちろん大会の事である

「モモ先輩と戦うのは優勝後だからな〜」

「でも、賞品も良い物ばかりだったよ」

「俺様は高級プロテイン一年分を貰いたいぜ!」

男子は物欲の方が勝っていた
女子はというと・・・

「強者が集まりそうだな」

「どんな相手でも勝ってみせるわ!!早速トレーニング!」

「私はどうしましょう…」
『出て!目立って!友達作るんだ!!まゆっち!』

「まゆまゆが出るなら楽しそうだな〜ははは」

そして、冷静な人たちも居た

「しょーもない・・・・言ってる事が逆な気がするよ」

「京は出ないのか?」

「出たとしても勝ち目が無い…大和が出て欲しいなら出るけど…」

「凪は?…って、聞こえてないか…」

凪は基地に来てからずっと考えていた
出るべきか…出ないべきか…
若虎サバイバルは出る事は決めている
だが若獅子トーナメントは考えているのだ
ヒュームの事だろう
出ないと串刺しにされる
それは目に見えている
すると…百代は

「モロと京に大和は出ないんだよな…確か」

「俺達は出ないけど…急にどうしたの?姉さん」

「な〜に…どっかのバカは若獅子を出ない気でいるからな…」

「え?」

「お前だよ!凪…私はお前とも戦ってみたいんだ!
あの頃からどのくらい強くなったのか」

「いやいや〜モモ先輩に勝てるわけないよ・・・」

凪は首を横に振っていた
出ない事に決めたのだ
そんな簡単に百代は食い下がらない

「何だ…どうすれば戦ってくれる?」

「いや…どうすればと言われても…」

「あ〜私は最強の名を手にしてしまったのかも知れないな〜」

百代の眼はもうこの世界は面白くないと言わんばかりだった
実際百代を倒せるのはもう数少ない
そんな時、凪はヒュームが以前自分に言っていたことを思い出した


「百代はもう限界だな…周りに自分を超える者がいない事で
自分の可能性を潰している…所詮…赤子よりも弱い…」


その言葉を聞いた時凪は怒りが込み上げて来た
自分の仲間への侮辱
自分の主が慕ってる人物
そして、自分の…
その場は怒りを抑えた

凪は思い出し考えを反した

「出るよ…」

『え?』

皆凪のその言葉に驚いた

「僕も出るよ…モモ先輩と戦う為に」

「フン…そうこなくてはな!私のもう一人の弟分!
私の勝手にだがな…勝ち上がって来れるか?今のままじゃ無理だぞ」

「まだ大会まで時間あるし…それに…」

「それに?」

「なんでもないよ〜」

「まーその一言は他の奴にも火を点けたな」

百代は笑って周りを見た
凪もその事はわかっている
凪が百代と戦うという事は優勝すると宣言しているような事
参加する翔一・岳人・一子・クリス・由紀江に勝つと言っているのだから

「面白い…自分も戦ってみたかったんだ…凪と」

「凪さんでも容赦はしません」

「燃えて来たわ!!」

「俺様の筋肉の鎧は簡単にやられねー!」

「おお!凪も戦うのか〜こりゃ〜面白くなるぜ!」

皆の中に闘志が芽生えた
で、翔一は思い出したように・・・

「大会の事は置いといて〜夏休みなんだが〜なにして遊ぶ?」

大会では敵だが
皆で遊ぶのは別!
それが風間ファミリーなのである

そして夏休みの遊びに皆が考えていると
百代が胸を張りこう告げた

「皆で沖縄に行こう!!」

ドヤ顔の百代に大和が聞いた
すると今度は一子が嬉そうに説明した

「あのね!川神院で鍛えていたお弟子さんが
故郷の沖縄でペンションを継ぐ事になったんだって」

「いつでも遊びに来てくださいって言われてな」

「突っ込んだ話、お金も結構楽かな・・・?」

卓也が質問をしたが
やはり百代はドヤ顔で

「宿泊費と食費はな。交通費と雑費は自分持ちだが」

それなら大丈夫なようで卓也はホッとしていた

「日程は8/6〜8/8を予定してる」

「そういう事だから皆空けといてね」

「沖縄と言っても広いけど…」

「宮古島ってあるよな」

「あるね〜確か…」

凪と大和が言ってると…

「私だらけなんだ。京島」

「大和が行ったら神になれるじゃん」

「神様からの子種争奪戦が凄惨に幕をあける…」

「漢字違うし…恐いよその島」

その後、百代は詳しく場所を教えてくれた
どうやら久米島だそうだ
ただ…
分かっている者と分かってない者がいるのが少し不安だ…

「先生!久米島とはどんな所ですか!」

岳人が聞いてきたがそれにクリスと一子も乗ってきた
何故だろう…
クリスは良いとして
話を持ってきた一子も聞くのか?
と先生こと、凪は思った

「え〜っと…沖縄本島〜 省略 〜で5番目に大きな島だね」

「先生がイキイキしてたわ…」

「ネットで調べたけどほぼ書いてる事が一緒だった…」

「途中から睡眠魔法だったな…」

「「Zzzz」」

「モモ先輩とキャップがやられたな…」

「人の役に立つのが好きな凪であった・・・」

「京がまとめた…」

風間ファミリーの夏休み
そして、長い夏休みの始まりであった



場所が変わり
川神学園屋上に四人
そこは異様な空気だった

「ん〜…紫陽花(あじさい)の匂いがするな…梅雨の季節だ」

「雨は降りそうかい?」

「水不足にはならん程度にな」

「度々すまんのう二人とも」

「なに、川神院の古酒を飲ませてもらえると聞けば…」

「会議とかも後回しにしてでも来るぜ」

「潜在能力が引き出されるって聞くぜ」

「相当オヒレがついとるのぅ。まぁ飲んでみ」

「…ゴクっ…味わい深くて苦味がクセになりそうだ」

「くあ〜〜〜こいつはうめぇや。」

「極上の味はするが普通の酒じゃねーか」

「ま〜楽に強くなれるわけがねぇわな」

「酒がまわって体を熱くなっただけで強くはなってはいないな」

「酔拳はある意味そうだがな」

「お前も飲むか?ヒューム」

「いらん。職務中だ」

「で?師よ今さら俺達弟子にそれを教えようというのか?」

この場に
鉄心にヒューム
そして、鉄心の弟子で元・武道四天王
鍋島正と総理である

「まさか。酒やるから相談に乗ってほしいのじゃよ」

「爺さんにも悩みがあったんだな」

「武道四天王、メンバーをモモ以外、一新せにゃならんのじゃ」

「他の三人はどうしたんだ?」

「三人とも引退を表明している。
揚羽様は財閥を継ぎ、鉄乙女は教師に…
そして橘天衣は軍に入った」

「で…彼女らの代わりとなるとそうそうおらんじゃろ?
一人は剣聖黛十一段の娘で良いと思っておるが」

「九鬼で調べてみると天衣を倒している事がわかった」

鉄心とヒュームである程度は搾っているが
どうも困っているのは明白であった
残りの二人が問題なのである
鉄心は義経を入れようとしたが
ヒュームがストップした
偉人なので同格に扱うことは出来ない
すると、鍋島が一人挙げた

「松永燕はどうだ?」

総理は知らないらしく
鉄心とヒュームは考えていたらしい

「…昔の言葉を借りて例えるなら」

総理は黙って聞いていた

「川神百代が雄武を以って傑出しているとしたら…
松永燕は軍法戦術に妙を得ているといえよう」

「ほう・・・そんな人材がいるのか…って、
前に師が俺を呼びつけて観せてくれた娘か?」

思い出した総理は感心していた
そこにヒュームも情報を足した

「公式戦は無敗だ…まだ赤子だがな」

「お前さんにとって皆赤子じゃろうて」

「じゃあ…俺からも一人推薦しよう…」

その言葉は珍しく
皆はヒュームの方を見た
皆赤子同然と言ってる人物が推薦する人物
鉄心は薄々気づいてはいるが四天王はどうかと思っていた

「三上凪を推そう」

「ん?そいつは何なんだ?」

二人は分からずにいた
鉄心はやはりと思っていた

「お前は見てるじゃろ…松永と戦ってたじゃろ」

「ああ〜あの女の子みたいな坊主か」

「さっぱり分からんが強いのか?」

鍋島は先日の戦いを観ていないので分からなかった

「その松永に負けてはいたが良い動きだった…
がそれまでだったぜ?ヒュームさんよ」

「本人次第じゃな…」

「衛の子とだけ言っておこう」

「衛って言うとあの俺らの後に四天王になった御守衛か?」

「だが、その家の者だからと言って強いとは限らんわな」

「そうじゃのう…」

「おりょ?衛の子ってことは…」

総理の疑問の言葉を遮る様に
ヒュームが喋った

「来週に大会が行われる…そこでわかる」

川神の夜が過ぎていく…

-21-
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