小説『真剣で僕に命じなさい!〜S〜』
作者:時雨葵()

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〜第六話 凪の啖呵〜


凪は教室に入るのを戸惑った
何故かと言うと扉の向こうから
ものすごい殺気を感じるからである
凪はもう一方の扉から入る事にした


マルギッテは扉の前で武器であるトンファーを構え殺気を出していた
クラスメイトの気はわかっている
なので自分の知らない気が扉を開ければ攻撃をしようと考えていた
扉の前にクラスメイトではない気が来たが
その気の持ち主は殺気に気づいたのかもう一方の扉に向かった

「殺気を察知しましたか・・・心の言う通り出来るようですね」

だがマルギッテは少し気になることがあった

(今の気・・・昔に感じた事があるような・・・まさか・・・な・・・)


心は考えていた
自分に恥をかかせた凪にどうにか仕返しをできないか
なので、マルギッテに自分の仇をとらせようと思いついたのだ
自分だと応じはしない…だからクリスの名を出したのだ
マルギッテはクリスの事だと扱いやすい


マルギッテ・エーベルバッハ
通称:ドイツの猟犬
クリスの父フランク中将の懐刀で猟犬部隊は
ドイツ軍の最強部隊である
そこで隊長をしてる位なのだから実力は強い
左に眼帯をしていているが眼帯を外すと強くなる
クリスとは姉妹のようなのでクリスを溺愛している


もう一方の扉は開き教室に恐る恐る凪が入ってきた
「おはよう・・・」

凪は扉の前で殺気を出していた本人の方をみた
マルギッテも殺気を察知して違う扉から入ってきた者をみた

赤髪の軍人と藍色の髪の忍が今対峙した


「ナ・・・ギ・・・・?」

「マル・・・さん・・・?」

マルギッテはすぐに武器を片付け、凪に抱きつき
頭を撫でていた

「ちょ・・・マルさん?何でいるの?」

「それはこっちの台詞です!元気そうで何よりです!凪!」

教室内は有り得ない光景を目にしているので唖然としていた
普段はどちらかと言うと恐いマルギッテが
にこやかにかつ、男子生徒を抱いて頭を撫でているのだから
まるで姉が弟に会ったかのように弟より妹の方が合っている

「え〜っと・・・お取り込み中〜申し訳ないんだが・・・お知り合い?」

準は流石に気になってしまった
先ほどまで扉の前で殺気を放ってた人間が一人の少年にデレているのだから

「小さい時にあった事があって・・・」

「知り合いだと知りなさい!」

「マルさん・・・ちょっと良い?こっち来て!!」

「何です?凪」

凪はマルギッテをつれて廊下に出た
何やらゴニョゴニョと話し合い
最後にマルギッテが凪に頭を撫でていた・・・
教室に戻ってくると

「ゴホン・・・凪は幼少期に父君と一緒に私の軍に来ていたことがありまして
その時に私は知り合い凪を本当の弟のように可愛がっていました」

「そう言う事です・・・・はい・・・」

これ以上深く追求したかったがマルギッテが恐かったので
準はこれ以上は踏み込まなかった

「もう少ししたら先生が来るでしょう!凪後ほど詳しく・・・」

そう言うとマルギッテは凪の制服の着崩しを直し微笑み自分の席に戻っていった

「ナギ・・・お前・・・顔見知り多いな・・・」

準は呆れるしかできなかった


休み時間

冬馬達が凪の席に集まってきた

「今日は眼鏡ですか?似合ってますよ赤フレーム」

「若・・・口説くな・・・・って、本当に女子みたいだな・・・だが!悪くない!!
これで〜幼女が赤フレームの眼鏡かけて
『ここの問題がわからないですの』なんて言われた日には」

「気にしないでね〜♪これ準の病気だから〜」

「うん・・・気にしない・・・」

次の授業準備をしていると

「お前は目が悪いのか?昨日はしてなかったが」
準は妄想から帰ってきたらしく眼鏡について聞いてきた

「僕は忍の家系だからね・・・眼が極端に良いから逆に下げてるんだ・・・」

ほらと準に自分の眼鏡を渡した

「うお!?何も見えねー!」

「見せて〜〜!」
小雪も見てみたがやはり見えない

「見えすぎると眼が疲れて大変なんだよ」

「苦労もあるんだな〜お!義経達も来たか」

義経達が凪の所に来た

「みんなして何の話をしているんだ?」

「主が可愛いって話でしょ〜・・・ゴクゴク」

「う〜・・・本当だと義経は恥ずかしい・・・」

義経は本当に恥ずかしいそうにして俯いている
家来の弁慶は川神水を飲んでいる

「義経とか眼鏡似合そうだよね?」

「そうですね〜かけてみては?」

「義経は遠慮しておく・・・弁慶が暴走しそうだから」
凪と冬馬の誘いを断る義経に
弁慶は酔ってるのも極まってか残念そうだった

「次は〜ああ麻呂か・・・」

「麻呂?」

「歴史の先生だ・・・面倒な」

「義経たちは嫌われてるみたいだ」

麻呂とは綾小路麻呂とは
平安時代をこよなく愛する日本史の先生である
家柄のいい不死川を贔屓する


「おっと・・・来たみたいだな・・・自分の席に戻っとけ!」

準の号令で皆は自分の席に戻った
程無くして先生が来た
授業が始まったが本当に平安時代のことしかしない・・・

(う〜ん・・・眠くなる・・・・流石に・・・)

「三上凪!聞いていたでおじゃるか!六歌仙全員あげてみや!」

「え〜っと僧正遍昭(そうじょうへんじょう)・喜撰法師(きせんほうし)・文屋康秀(ふんやのやすひで)
大友黒主(おおとものくろぬし)・在原業平(ありわらのなりひら)・小野小町(おののこまち)です」

凪は難なく回答した。そして

「因みに六歌仙は、『古今和歌集』の序文のひとつ「仮名序」において、
紀貫之が「近き世にその名きこえたる人」として挙げた6人の歌人の総称で
だけど「六歌仙」という名称そのものは後になって付けられたものですよね?」

「う〜む・・・そうでおじゃる・・・・」

周りからオォオ〜〜と歓声が上がった
麻呂は面白くないようで直ぐに授業に戻った

(平安の事こんなにやって他はいいのかな・・・)

「この〜・・・三上凪!!おぬしマロをバカにしてるのか!!
梁塵秘抄(りょうじんひしょう)の編集者を述べい!」

「後白河法皇です!」

「うぬ〜・・・正解じゃ・・・」

凪はいとも簡単に答えたのでやはり麻呂にとって面白くない
周りは麻呂が凪に眼を付けた決定的瞬間であるとハラハラしていた
案の定麻呂は凪の所に来ていつもの口調で挑発してきた

「三上凪・・・おぬし・・・最近調子に乗ってるのではないか?
不死川に勝ち・・・マロからの問題も簡単に解き自分が優位だと思っとらんか…の!
三上・・・綾小路も不死川も日本三大名家でおじゃ
一族など簡単に消せるのでおじゃ!今なら謝れば何もない!
ほれ!【私は調子に乗っていました。すいませんでした。】これだけですむのじゃ!!」

凪はただ聞いているだけだった
実際麻呂に反発した家は見なくなったという
周りはまた始まったとか、もしかすると退学じゃないかなど
様々な小言が聞こえた

「どうぞ・・・消してみてください」

周りはその返しにビックリして何を言ってるのかと思った
凪は麻呂の眼を真っ直ぐ見て動じずゆっくりと言葉を続けた

「一族を消せるなら消してみてください。でもあまり忍の一族を甘く見ない方がいいですよ
表にはなってませんが昔は日本五大名家だったそうです
だが・・・何故今は三大なんでしょうね・・・・」

凪は淡々と話していた

「それは歴史から消されたからだそうですよ先生・・・忍によって
忍は未だに実在しています。もしかすると綾小路家の中にいるかもしれません
様々な事や表に出せないような情報まで知っている可能性があります。
忍は独自のコネクションが繋がってるので簡単に暴露できますよ
明日から名家が歴史から消えてるかもしれませんから・・・お気をつけて」

すると丁度チャイムが鳴り
麻呂はそそくさと教室を出て行った
その光景に皆は歓喜をしていた
周りから

「スゲーぞ!」

「カッコいいぜ!!」

など歓声を浴びていた凪だが
本人は疲れきっていた・・・
準は直ぐに凪の所に向かった

「おい!ナギ大丈夫か?と言うより凄い啖呵だった!!」

「半分本当で半分嘘だけどね・・・・あ〜恐かった・・・・」

「流石に効いたと思いますよ!今の啖呵は」

冬馬もスカッとした顔をしていた

実際麻呂も静かになったと言う

-7-
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