小説『リリカル世界にお気楽転生者が転生《完結》』
作者:こいし()

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 それからしばらく経ち、ジュエルシード事件と名の付くこの事態もかなり進行してきたようだ。そろそろここらで俺の持ち得る情報をまとめておくとしようか。

 まず第一に、ジュエルシードに付いて。
 高町なのはの家には盗聴機を仕掛けても父親達にバレてしまうので現在は高町なのは本人の部屋にしか仕掛けられていない。が、かなり有益な情報を得られている。
 どうやらジュエルシードは願いを捻くれた形で実現する危険な魔法アイテムらしい。その総数21個。高町陣営は現在3つ持っているようだが、最近バックに管理局と名の付く組織が付いたようで、そこにあるジュエルシードと合わせると、高町陣営のジュエルシード数は全部で12個。
 更にジュエルシードを求める陣営は他にもいるようだ。おそらくこの前出会った金髪少女、フェイトがそうだろう。そして、高町なのはの部屋の盗聴でなのはとおそらくあの時のフェレットが会話しているのを聞いた所、フェイト陣営は現在9個だ。つまり、既にジュエルシード自体は全て回収できたと言える。

 第二に、高町陣営とフェイト陣営の関係に付いて
 高町なのははどうやらフェイトと一度じっくり話し合いがしたいようで、なんとか出来ない物かと画策しているようだ。だが、管理局側はそうでは無いらしく、あちらは事態の解決に徹底する様だ。また、フェイト陣営は高町なのはの話を聞く気はないようで、話し合いでの解決はとうに捨てているようだ。

 第三に、転生者の動向。
 まず、神崎零だが、彼はかなり直線的な行動を取っている。まず、高町なのはに積極的に関わり、好意を寄せて貰える様に色々と動いているようだ。他二人の転生者とは関わりを持たず、かなり敵対心を抱いているらしい。まぁそれでも他二人の特典能力の情報は積極的に集めているらしい。
 次に火喰隼人。彼は冷静沈着、クールな思考で理性的な行動を取っている。神崎と同様高町なのはに協力してはいるが、本命はフェイト狙い。なんとかフェイトに取り入ろうと画策しているらしい。尚、同転生者である會田蓮とは協力関係にあり、フェイトに取り入るのと同時に神崎零の排除を企んでいるようだ。
 次に會田蓮。彼はかなり大胆かつ大雑把な行動を取る。なのは、フェイト共に恋愛の対象と言う訳ではなく、何か目的があって協力関係にある様に見える。管理局とは険悪な関係であり、どちらかというとなのはの好きなようにやらせたいという意思が見える。更に言えば、最近では日常生活で図書館に本を読む訳でないのに足繁く通うようになっている。おそらくは家のはやて狙いなのだと思う。ということはやはりはやても主要人物なのだと思う。

 最後に、現在の事件状況
 これまで、俺はこの事件を放置という形で無干渉だったが、それもとある事情によるものだ。それは、魔法の体得。最近はやてに隠れてちょいちょい練習を重ね、最近ではかなり使いこなせる様になった。そしてそれはつまり、俺がこの事件に干渉する事を意味する。
 放置してきた事件は多く、あの動物病院でのやりとりから、結界が度々張られるようになり、その度に事件が起きている。まずはジュエルシードの暴走、これはフェイトによってなんとか収集が付いたようだ。次に、植物が街を破壊する事件。これは高町なのはの砲撃魔法でなんとかなった。さらに、巨大な木の怪物がジュエルシードで生みだされた事件。これは転生者が己の特典能力を惜しみなく使い、圧倒的火力で圧倒したようだ。更に、フェイトによる海上ジュエルシード暴走事件。フェイトによって海の中にあった6つのジュエルシードが一斉に暴走。かなり危険な状況だったが、転生者達の協力によりあっさりと解決した。
 そんなこんなで、色々とジュエルシードを暴走させたり回収したりが起きていた訳だ。

「こんなところか……さて、それじゃあ行くとしようか」

 そう言って、情報のまとめがついた俺はまだはやてが寝ている中、家を出る。一応書き置きは置いてあるので、心配させるだろうがいつもの事だから大丈夫だろう。
 そうして俺が向かったのは、この世界に来て主人公に初めて出会ったあの場所。つまり、海鳴臨海公園。早朝の公園はかなり気温も低く、人気もないのでかなり静かだ。

 だが、そんな中公園に佇む数名の人影。俺は木の陰に隠れて気配を消す。そっと見てみると、そこには俺が担当するクラスの生徒であり、魔法に関わる人物達。
 中央には高町なのはが立っており、その斜め後ろにフェレットの元の姿であるだろう少年。名前はユーノだったか。なのはが一度だけ学校に連れて来たことがあるから間違いはないだろう。魔力を感じ取っても同一の物だ。そして、なのはの右隣には見慣れないオレンジ色の髪の女性。犬耳がある所を見ると、ユーノ同様獣形態になれると見た。反対の左隣には転生者3名が並ぶ様に立っていた。

「さて……どうしたものかな」



◇ ◇ ◇



 三者side


 早朝の海鳴臨海公園の中で、高町なのは一行はフェイト陣営であるフェイトの使い魔、アルフを連れて佇んでいた。目的は唯一つ、フェイトと話し合いをする事。その為ならばなのはは全力全開の決闘をしても構わないという考えだ。
 傍にいる転生者一向も今回の勝負には手を出す事はしないと決めていた。

「此処なら良いよね……出て来て! フェイトちゃん!」

 なのはが大きな声でフェイトを呼ぶ。すると、周囲の木々の中に隠れていたフェイトが宙に浮かぶ形で現れた。その瞳には戦う意思が宿っており、その姿は既に変身を終えた魔法少女服。その手にはバルディッシュ
と名の付いた彼女の相棒であるインテリジェンスデバイスが握られていた。

「………」

「自分で決めたことを曲げられない気持ち、逃げたくない気持ち……少しだけど分かるよ」

「っ……」

「きっかけはジュエルシード……私達はまた始まってもいない。だから賭けて、お互いのジュエルシードを全部! 最初で最後の本気の勝負! 自分の魔法の全てを掛けて!」

 そう言うと、なのはは光に包まれて次の瞬間には白い魔導服に変身を遂げる。その手には彼女の相棒であるインテリジェンスデバイス、レイジングハートが握られており、その瞳には本気の闘志が宿っていた。

 そして、お互いは飛びあがり高く上空で衝突した―――

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