小説『リリカル世界にお気楽転生者が転生《完結》』
作者:こいし()

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「さて……他の転生者は……こいつらか」

 霧咲俊也はそう呟いて、王の財宝を展開。3本の刀剣を発射してアリシアのバインドで動けない火喰、神崎、會田の心臓部を刺し貫いた。
 不意打ち。俺にとっても神崎達にとっても完全に意表を突かれた攻撃だった。誰もが俺と霧咲の勝負になるだろうと予想していたのだが、彼自身は自身の女と評した高町なのは達に近づいた転生者達が許せなかったのだ。

「がぁあああああ!!?」

「がぶっ……ごっ……!?」

「ぐああああっ!!」

 悲鳴を上げる神崎達。バインドで拘束されていたことが仇となった。何故なら、それによって躱せた筈の攻撃にその心臓を喰い破られ、その命を喰い破られる。

「……お前、そこまでするか」

「ハッ……俺の女に手を出したんだ、死んで当然だろ。元々一回死んでる奴なんだしよ」

 彼は悪びれも無くそう言い放つ。アリシアは咄嗟にバインドを解き、血を溢れさせて倒れる神崎達をアースラへと転移させた。全ての魔法技術を持つ俺の見立てでは、管理局の持つ治癒魔法を迅速かつ的確に施せた場合においても彼らの生存率は4割に満たないだろう。人間の心臓は、脳の次に重要な生命機関だ。喰い破られて無事に済む筈がない。

 尚、運が悪かったのか狙ったのかは知らないが、彼が用いたのは宝具だ。その一つ一つに様々な能力を持った強力な武器だ。
 今回火喰に使われた宝具は、その効果が今回に限って最悪の物だった。これによって火喰の生存率は皆無になってしまった。

 火喰の心臓を穿った宝具は、金色の短い槍。その名を『必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)

 その輝く刃で傷付けた怪我はその能力により、生涯治る事は無い。文字通り、必滅。攻撃を受けたが最後、致命的な傷となる最悪の宝具だ。

「随分とまぁ自分勝手な理屈だな……転生者ってのは皆そうか?」

「お前もアイツらみたいに殺してやるよ。前に俺に与えた屈辱、この場で晴らしてやる」

 そう言った彼の背後の空間がぐにゃりと歪み、かつての英雄王が手にした全ての財宝がその姿を現す。一つ一つが必殺の火力を持った至高の刃。その全てが俺へと牙を剥く。

「ワンパターンだな」

 俺は依然やったように大量の魔法陣を背後に同時展開。そして以前の戦闘を踏まえて構築した、対英雄王魔法。対軍戦法にも出来る圧倒的な魔法をゆらりと垂らした両手の内で構築する。俺の魔力色である青黒い魔法陣が光を放ち、全ての宝具に対してその爪を向けた。

「散れ、雑種!」

 かの英雄王と同じ言葉を用いて掃射される宝具と、俺の笑みと共に展開された大量の魔法。ぶつかり合い、打ち消し合い、拮抗する。以前と同じ光景が出来上がり、依然と同じ様な展開で勝敗が付くと思われた。
 俺は駆け出す。背後の魔法陣は揺らぎ無く、その魔法を全力で吐きだし続ける。そんな中、その両手を手刀の形に変え、先程作りあげた魔法陣をその手で貫いた。

 結果、俺の魔法は俺自身の手刀にある種の効果を付与する。英雄王の王の財宝(ゲートオブバビロン)に対して天敵同様の効果を齎すその効果。

「――――喰い破る己が刃(オブデレイトスペース)

 俺が突き出すその手刀。身構えた俊也の背後に存在する空間に罅を入れ、縦に切り裂いた。

「チッ……この野郎ぉおお!!」

 背後の王の財宝は、俺の手刀によってその姿を消し去り、同時に俺の展開していた魔法陣も消えた。その事に憤慨した俊也が新たに王の財宝を展開、一つの武器を取り出す。剣と言うには明らかに歪なその形。円筒の様な刃を持ったその乖離剣。

「起きろ! エア!!」

 森羅万象全てを破壊する対界宝具。その剣先は向けた相手を確実に葬り去る威力を誇る。

「無駄だな」

 王の財宝を切り裂いた右手とは逆の左手刀。その刃が乖離剣を真っ二つに切り裂いて、俊也の右手にまで傷を入れた。

「なっ……!?」

「だから面白くないんだ。お前ら転生者はどいつもこいつも―――戦いを知らなすぎる」

 そう言って、俺は俊也の驚愕に満ちたその顔に一回転して跳び蹴りを叩き込んだ。一瞬でその鼻っ面を砕く蹴りの威力は、以前に手加減して与えた蹴りとは違って今回は一切手加減なし。俊也の顔をザクロの如く吹き飛ばした。人体のどの器官よりも重要な脳を頭ごと吹き飛ばしたという事実は、俊也の絶対的死亡を意味する。
 身体が吹き飛ぶ暇もなく頭だけ吹き飛ばした事で、残った身体は首を失ったまま立ち尽くし、傷口からは血を噴き出した。

「っ………!……!」

「おしまい」

 その言葉と同時にぐちゃっと地面に倒れる俊也の身体。しばらく痙攣した後、彼の身体は完全に動かなくなった。

「さて……と」

 くるりと振り返ると、そこにはバインドに脱力して気絶した高町なのはとフェイト・テスタロッサ。青褪めた表情のクロノがいた。守護騎士達は見慣れた光景という風に少し顔を歪めた程度だったが、やはり顔をそむけていた。

 ああ、こういう光景を見ると俺がそれだけ死体を見慣れているかが分かるな。ちょっとやっちまったぜ。

「執務官さんよ」

「あ……な、なんだ」

「アースラに行くぞ。俺の生徒がどうなったか知りたい」

「あ、ああ……分かった」

 終始青褪めた表情のまま、クロノは転移魔法を発動。俺と守護騎士と気絶したなのは達をアースラへと飛ばした。



 こうして、4人の転生者の内1人がその命を散らしたのだった。

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