小説『リリカル世界にお気楽転生者が転生《完結》』
作者:こいし()

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 霧咲俊也がその命を散らした後の事。アースラに向かった俺達は火喰隼人と會田蓮の死亡知らせを受けた。必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)を使われた時点で火喰の死は覚悟していたが、會田蓮の方は予想外だった。
 一応、管理局は手を施していた。が、火喰は回復魔法が一切通じず、傷は一向にふさがらずに死亡。會田蓮は傷自体は塞いだものの、魔力吸収の特典が邪魔して回復魔法が中々効果を現さなかった事で手遅れになってしまったのだ。

 そして、助かったのは神崎零。バインドで拘束されていた間、彼は俺の殺気の中逃げようとした者。どうにか逃げようと無限の剣製(アンリミテッドブレードワークス)を使ってバインドの破壊を試みていたのだ。
 中々どうして、流石は正義の味方の力と言った所か。彼の力はアリシアのバインドに罅を入れていたのだ。そして、俊也の剣がバインドを破壊して神崎の身体を突き刺そうとしたその一瞬の間、その間に彼は身体を無意識に闘争本能に従って動かした。

 結果、彼の動かしたほんの数センチが彼の心臓を守った。俊也の剣は彼の心臓横数ミリを通って彼の身体を貫通していた。それでも損傷は激しかったのだが、内臓器官にダメージは無く、なんとか一名を取りとめたらしい。
 だがそれでも、なんの後遺症も残らなかったわけではない。心臓の代わりに失った物が有ったのだ。それが、リンカーコア。魔力ランクEXの魔力を秘めたその魔力器官が消し飛んだのだ。それというのも、俊也が神崎使った宝具が原因。その法具は、火喰に使われた黄金の槍の対になる真紅の長槍―――破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)

 魔力で構成された物を例外なく打ち砕く魔力無効化の槍。この槍は心臓を穿つ代わりにその近くにあったリンカ―コアを目聡く察知し、破壊した。
 闇の書の様な蒐集ではない。器の中身を奪うのではなく、器とその中身を全て破壊したのだ。それはつまり、フェイトの様にリンカ―コアが回復する事は無いという事だ。壊れたモノは壊れたまま直る事は無い。

「なるほど……転生者全員共倒れか」

 結果だけ見れば、転生者の俊也が自分を除く転生者全員を殺害及び再起不能にし、俊也自身は俺によって殺された訳だ。神崎はどうなるかは分からないが、特典自体は彼の身体にまだ宿っている訳だから、魔力自体が戻ればまた使えるようになる。
 だが、それは難しいだろう。リンカ―コア自体無くなってしまったのだから。

「だが、死んでしまった者は蘇らない……彼らは責任もって弔うよ」

「そうだね」

 クロノがそう言うと、アリシア(生き返った奴)がそう返した。空気を天然で読まない奴だ。

「さて、それじゃあ闇の書事件の詳細をまとめよう」

 クロノはそう切り替えて、まずは当初の目的である闇の書に関するまとめに入った。

 そこから俺達を含めて話し合いになってまとまった事は以下の通り。


 ・俺は以前からあった闇の書が覚醒して、八神はやての身体を蝕んでいたから治す為に必要な魔力を集める目的で蒐集を行なっていた。アリシアも同様に手伝うと申し出たので俺が鍛えて手伝ってもらった。

 ・守護騎士も俺とはやてによる話し合いで人を襲う事はしないと約束させ、破ってはいない。フェイト・テスタロッサのリンカ―コアを蒐集した事に関しては不慮の事故だった。

 ・仮面の男と俺達には一切関わりが無いという事。尚、仮面の男は複数存在し、大きな組織という訳ではない。おそらく管理局の人間だろうという推測。

 ・闇の書は元々夜天の書であり、今は俺によって夜天の書に修復され、八神はやての手の中にあるという事。

 ・俺が今回提出した闇の書はダミーと言う事


 等々、大まかに言えばこんな感じだ。俺が転生者である事や、都合の悪い事は全て話す事はしなかった。闇の書は既に正常な魔導書に戻っている事は重要なので話したけど。
 管理局も闇の書が元々夜天の書という事は調べが付いていたらしいので、そこには疑問を持たれなかった。ただ、俺の持つ魔法の特殊性は目を見張るものがあるようだ。

「こんな所だな。闇の書、いや夜天の書自体はどうにかなったが……問題は仮面の男達だ。闇の書が夜天の書に修復され、正常な魔導書に戻ったのならもう心配はいらないが……未だに夜天の書は八神はやての手の内にある。となれば仮面の男は八神はやてを襲撃するかもしれない……」

「あ、それは問題ないと思うぜ?」

 クロノの漏らした呟きには俺が否定で返す。はやてを襲撃、そんな事出来る筈がないのだ。

 まず簡単な要素から挙げると、はやての傍に付いているユニゾンデバイス。あの銀髪の女性だ。彼女も正式には違うが守護騎士達同様大きな実力を秘めた者だ。
 次に、正常に動作し始めた夜天の書がはやての手にある事。そして、夜天の書には製作当初から現在まで蒐集されてきた全ての知識と魔法がサルベージによって詰め込まれている。それはつまり、古代ベルカから現代までの魔法が一通りそろっている上に、おおよそ500年間代々蒐集されてきた魔力が内包されている事になる。

 これが、原作とは違う八神はやても知らぬ間に持った最大最強の武器。500年間分の蒐集魔力となれば、八神はやては魔力切れなど起こす事はなく、魔力ランクSSなどという枠にも収まりきらない。それこそ、以前の神崎零と同様の魔力ランクEXという規格外な称号を与えられるだろう。
 また、俺には及ばないがそれでも俺の持つ3分の1の魔法を会得した事にもなるのだ。そして、その中には使い手が危険にさらされた時自動で発動する無意識発動型魔法という物がある。古代ベルカで生み出された自己防衛手段だ。

 これだけの要素が揃っているのだ。実質、八神はやてを襲撃するなど自殺行為にも等しい位なのだ。


『あの、珱嗄……様』

『ん? なんだ、管制人格』

『あ、私の名前はリインフォースです。主はやてが名付けてくれました』

『お、良い名前を貰ったな。で、リインフォース……どうした?』

『えーと、主はやてを襲撃してきた仮面の男がいたのですが……今主の病室で伸びているのです。どうすればよろしいでしょうか?』

『はやてはどうしてる?』

『あの……就寝中です。眠ったまま襲撃者を捻り潰してしまったので……』



 ―――ほら、こうなった。


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